金(きん)をはじめとする貴金属めっき薬剤大手の日本高純度化学<4973>は、成長戦略を転換した。
これまではオーガニック成長(内部の経営資源を活用した成長)戦略を採ってきたが、M&Aを通じてニッチトップ企業を束ね、めっき工程を一貫して提供できる体制への変革を目指すことにした。
企業買収が実現すれば同社にとっては初めてとなる。
貴金属めっき薬品に特化
日本高純度化学は1971年、東京都内で貴金属めっき用薬品の開発、製造、販売を目的に設立された。
エレクトロニクス分野を中心に、半導体パッケージやコネクター向けの金めっき薬品、銀めっき薬品、パラジウムめっき薬品の開発、製造、販売を手がけ、専門分野を絞り込みながら業容を拡大してきた。
M&Aの手法に依存せず、技術力を軸に同分野でトップクラスの地位を築いた。
現在の事業構成は、プリント基板・半導体搭載基板用とリードフレーム用がそれぞれ40%前後を占め、このほかにコネクター・マイクロスイッチ用が約15%となっている。
めっき工程を一貫して提供へ
日本高純度化学は、デジタル社会の進展を背景に電子部品や最終製品市場の拡大が続くと見ており、10年後には電子部品の総数が現在の1兆個から100兆個に、電⼦部品接点総数は100兆個から500京個に拡大すると予測する。
同時に業界の現状について、需要先である半導体市場の成長が見込まれる一方、金価格の高騰で金を使う用途が絞られつつある。さらに、ニッチ分野に強みを持つ小規模企業が多数存在する構造にあると分析する。
この分析を踏まえ、同社は半導体分野での顧客開拓を進めるとともに、金めっき前後工程や金以外の技術の獲得、電池事業の加速、国内外での拠点獲得などに取り組む方針だ。
こうした目標の実現に向け、同社はM&Aを重要な手段と位置付ける。
めっき分野では、M&Aを通じてニッチトップ企業を束ね、めっき工程を一貫して提供できる体制(トータルプロセスカンパニー)への変革を目指す考えで、進行中の協議を加速するとともに、新たなパートナーの探索を進める。
このほかの目標についても、複数社との協業を通じた事業領域の拡大などに取り組む。
これらのM&Aに、2026年3月期から2028年3月期までの3年間で50億~60億円を投じる計画だ。
同社はこれまでに適時開示したM&Aはなく、同社が公表している沿革でも企業買収の実績はない。
生成AI需要が追い風に
2025年3月期は売上高126億1100万円(前年度比10.4%増)、営業利益5億200万円(同41.8%増)となり、2ケタの増収営業増益を達成した。
生成AI(人工知能)関連の半導体パッケージやモジュール、スマートフォン、パソコン向け製品などが堅調に推移し、3期ぶりに減収営業減益から脱した。
2026年3月期は売上高で11.0%の増加、営業利益で1.5%の増加を見込んでおり、実現すれば2期連続の増収営業増益となる。
また、同社は政策保有株式の削減を目標に掲げており、2026年3月期は株式の売却に伴う投資有価証券売却益が発生するため、当期純利益は当初の5億円から14億5000万円に増加する。
文:M&A Online記者 松本亮一
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