酒類販売の「カクヤス」ネギや豚肉も配達 M&Aで配達の新商材獲得へ

酒類販売店を展開するカクヤスグループ<7686>は、従来の酒類の配達だけでなく、酒類と合わせてネギや豚肉などの食材などの商品を家庭や飲食店に配達するサービスに乗り出す。

合わせて酒類以外の商品を取り扱う販売会社をM&Aで取得し、配達商品を拡充することで食事がメインの飲食店やカフェなどの新規顧客の獲得や顧客満足度の向上につなげる。

酒類以外の商品は2021年買収の明和物産が担当

カクヤスは「なんでも酒やカクヤス」の旗艦ブランドを中心に、首都圏、大阪、九州で、250 を超える拠点から家庭と飲食店に酒類の自社配達を行っている。

今後、事業規模を拡大し、収益力を高めるためには酒類販売以外に事業領域を拡大することが不可欠と判断。同社の強みである顧客の要望に細かく対応できる物流体制を活かして、食材などの商品の配達を行うことにした。

酒類はこれまで通りカクヤスが行い、酒類以外の商品は2021年に買収(発表は2020年)した乳製品の宅配業務などを手がける明和物産(東京都練馬区)が担当し、既存顧客向けに食材や調味料などをはじめとする新たな配達商品の拡充に取り組む。

さらに取り扱い商品を拡大するためにM&Aを積極的に進める計画で、食材販売会社などを傘下に収めるとともに、きめ細かい配達網を活用して多品種を届ける地域特化型のビジネスを目指す。

物流は2024年買収の大和急送が担当

物流は2024年に買収した生鮮食品の配送に実績のある大和急送(埼玉県和光市)が担当する。

これまでは酒類問屋などからカクヤスの物流センターに入った商品を、カクヤスの小型出荷倉庫に一旦運び、ここから家庭や飲食店に配達していた。

今後は酒類問屋のほかに食材メーカーや食材問屋などから、大和急送の物流センターに入った商品を、カクヤスの小型出荷倉庫を経由して家庭や飲食店に配達する。

また合わせて他社の荷物を飲食店やオフィス、家庭に配達する他人物配送(貨物自動車運送業)事業にも参入する予定で、荷主企業から大和急送の物流センターに入った商品を直接顧客に届ける。

荷主企業には受注、配達、請求決済までの一連のサービスのほかマーケティング機能も備えた販売プラットフォーム(基盤)として提供する。

酒類販売の「カクヤス」ネギや豚肉も配達 M&Aで配達の新商材獲得へ
カクヤスグループが2020年以降に適時開示したM&A

物流で残存社利益を獲得

カクヤスは酒類販売の中堅企業で、成人人口の減少や成人一人当たりの酒類消費量が減少する中、厳しい事業環境が続くと見ており、持続的な成長のためには、同社の強みをさらに強固にするための再編が必要との認識を持つ。

こうした情勢を踏まえ、今回の事業再編による成長戦略に踏み切ったもので、販売プラットフォームを構築することで、M&Aによる商材の拡大や他社商材の配達による収益力強化が可能になる。

また同社では物流の2024年問題(トラックドライバーの時間外労働時間の上限規制によって生じるドライバー不足などの問題)によって、同業他社の配達力が低下すると見ており、物流機能を強化することで残存社利益の獲得を狙うとしている。

ただ、2026年3月期は5.6%の増収(1420億円)となるものの、プラットフォーム化に伴うシステム改修などの投資がかさむため19.2%の営業減益(14億4000万円)を見込む。

その後は拡大路線に乗り、2028年3月期には売上高1700億円、営業利益40億円を予想しており、2030年3月期は売上高2300億円を目指す計画だ。

また、事業再編に伴って2025年7月1日には社名をカクヤスグループから「ひとまいる」に変更し、事業を支える明和物産と大和急送についても社名変更を予定している。

文:M&A Online記者 松本亮一

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