大和ハウス工業が「進撃」を続けている。人口減などで新設住宅着工戸数が記録的な低水準に落ち込む逆風に立ち向かい、ハウスメーカーの枠を超えた多角的な事業ポートフォリオの構築にまい進しているのだ。
5兆円を超える売上高の半分は今やデータセンター、物流センター、工場、店舗・ショッピングセンター、環境エネルギーなどの非住宅事業が占める。プレハブ住宅(工業化住宅)のパイオニアとして戦後の産業史にその名を刻む同社だが、時代の移り変わりとともに、どう変貌を遂げてきたのか。
住友電設を買収、DC・半導体関連を強化
大和ハウスは昨年12月、住友電気工業の上場子会社で電気・通信設備工事を手がける住友電設へのTOB(株式公開買い付け)を完了した。買収総額は約2900億円で、3月24付で完全子会社化した。買収規模は大和ハウスとしてはもちろん、建設業界全体としても過去最大だ。
狙いはどこに。大和ハウスは成長戦略の重点の一つとして需要が拡大するデータセンターや半導体関連工場の開発・受注を掲げており、専門的な技術・ノウハウや人材を持つ住友電設を取り込み、安定的な施工体制を確立することにある。
大和ハウスは人口減に伴う国内戸建住宅事業の頭打ちを受け、物流センターや先端工場、病院・介護施設など事業施設の業容拡大に力を入れてきた。
2012年に準大手ゼネコン(総合建設会社)のフジタを約500億円で買収したのも、大型建築工事に対応できる強固な施工体制を確保することを目的とした。
中期計画、1年前倒しで目標を達成
大和ハウスは2024年3月期に売上高5兆円を突破した。足元の2026年3月期業績は売上高3%増の5兆6000億円、営業利益6.6%減の5100億円を見込む。
現行の第7次中期経営計画(2023年3月期~27年3月期の5カ年)では最終年度に5兆5000億円、営業利益5000億円を掲げているが、1年前倒しでの目標達成に伴い、次年度から第8次中計(5月に公表予定)に移行することになっている。
実は戸建住宅事業、10年でほぼ倍に
セグメント(部門)別の売上構成をどうなっているのか。2025年3月期実績(5兆円4348億円)をみると、戸建住宅20.6%、賃貸住宅24.7%、マンション4.8%、商業施設22%、事業施設24.6%、環境エネルギー2.3%、その他0.9%。
では売上高が3兆円を突破した2016年3月期と比べるとどうか。
米国戸建事業が今や国内を上回る
その理由は米国事業が大きく花開いたことにある。2017年に東海岸を中心に展開するスタンレー・マーチン(バージニア州)、2020年に西海岸を主体とするトゥルーマーク(カリフォルニア州)、2021年に南部を地盤とするキャッスルロック(テキサス州)の戸建住宅会社3社を矢継ぎ早に買収した。
さらに、これら中核3社を通じて全米各地で中小規模の戸建住宅会社のグループ化を進めてきた。
戸建住宅事業における売上戸数(2025年3月期)は国内5067戸、米国7095戸と、米国が国内をすでに大きく上回り、牽引役となっている。
国内の住宅市場は縮小が続いている。国土交通省が1月末に発表した2025年の新設住宅着工は前年比6.5%減の74万667戸。3年連続の減少で、1964年以降の最低を記録した。こうした中、海外に活路を求めた成果が着実に実を結びつつある。
実際、海外売上高9050億円(同)のうち、米国の戸建住宅事業は6078億円と7割近く占める。米国では年間1万戸が当面の目標だ。
海外の戸建住宅事業についてはオーストラリアでも現地企業の買収をテコに本格展開にアクセルを踏み込んでいる。
プレハブ住宅の先駆者
大和ハウスは会社設立から4年後の1959年、「3時間で建てられる」をキャッチフレーズとした軽量鉄骨住宅「ミゼットハウス」を売り出し、離れの勉強部屋として大人気を博した。ほとんどの部材を工場生産し、現場で組み立てるプレハブ住宅の先駆けとなった商品だ。
1961年にはプレハブ住宅の普及促進を目的に大和団地(後に上場。2001年に大和ハウスが吸収合併)を設立し、自ら大規模団地の開発に乗り出した。またその頃、銀行と提携して業界初の住宅ローンを導入した。
プレハブによる戸建住宅を起点に、賃貸住宅、マンション、商業施設、事業施設などに事業を多角化し、今日にいたる。
身近なところでは、ビジネスホテル「ダイワロイネットホテル」、駐車場「D‐Parking」、スポーツクラブ「NAS」などがおなじみだ。
創業100周年に売上高10兆円へ
大和ハウスはハウスメーカーの枠を超え、「人・街・暮らしの価値共創グループ」を旗印とする。売上規模ではゼネコン最大手の鹿島、不動産トップの三井不動産をいずれも2兆5000億円以上引き離し、住宅・建設・不動産トータルで業界ナンバーワンに立つ。
創業者の石橋信夫氏(1921~2003)は晩年、「創業100周年(2055年)で売上高10兆円」の夢を後継者に託したという。中間地点を過ぎたところで道のりはまだ長いが、その実現を見据えつつ、世界を舞台として多面的・重層的な事業展開が一層勢いづくことになりそうだ。
文:M&A Online
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