【1月のM&Aサマリー】99件で出足好調、クロスボーダー案件も活発で取引総額1兆円超え

2024年1月のM&A件数(適時開示ベース)は99件で前年同月を6件上回る好調な滑り出しとなった。年明け1月として過去10年で最多。

1000億円超のクロスボーダ―案件が複数出たことで、取引総額も1兆円を超えた。

100件に迫る勢いでM&Aは活発

上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Onlineが集計した。

1月の総件数99件は、M&Aが活発に行われたことを示唆している。月間100件を超える月は少なく、16年ぶりの1000件超えとなった2023年は3回、2022年は1回、それ以前は2008年3月まで遡らなければ該当月がない。この好調な流れは2023年11月から始まっており、11月、12月は100件超えを連発、年明け1月も続いた格好だ。

1月の内訳は、国内が82件、クロスボーダー案件が17件。件数は圧倒的に国内案件が多いが、取引金額を見ると印象が変わる。1月の取引総額(公表分を集計)は1兆274億円だが、このうちクロスボーダーが9650億円と全体の9割超を占めている。取引総額トップ3も、クロスボーダー案件であり、すべて米国事業の拡大を目的にしたものだった。

【1月のM&Aサマリー】99件で出足好調、クロスボーダー案件も活発で取引総額1兆円超え

取引金額トップ3の案件は?

取引金額トップは、積水ハウスの案件。約7324億円を投じて米国で戸建住宅事業を展開するM.D.C. Holdings, Inc.(コロラド州)の全株式を取得する。積水ハウスは2017年にWoodside Homes Company, LLC(ユタ州)を傘下に収め、本格進出を開始しており、今回の案件が完了すると全米5位の規模のホームビルダーグループとなる見込み。

2位はセブン&アイ・ホールディングスが米国でコンビニエンスストア事業を手がけるスノコ(テキサス州)からコンビニやガソリンスタンド204店舗を取得する案件。約1370億円を投じる。

2021年に約2兆3200億円で買収したコンビニ併設型ガソリンスタンド「スピードウェイ」(オハイオ州)との店舗統合を進め、北米市場の成長を加速させるのが狙い。

3位はカゴメの案件。約360億円を投じて、トマト加工品大手の米国インゴマー・パッキング(カリフォルニア州)の持ち分を70%まで引き上げて子会社化することを決めた。カゴメは米国トマト加工事業で種子開発・販売、二次加工を手がけてきたが、加工用トマト米国2位、世界4位の生産量と一次加工の機能を持つインゴマーを取り込み、米国トマト加工事業のバリューチェーンの強化を図る。

国内はスーパーマーケットのM&A案件が頻発

一方、国内ではスーパーマーケットをめぐってM&Aが頻発した。1月5日、アオキスーパーがMBO(経営陣による買収)で株式を非公開化すると発表。食品の取り扱い比率を高めているドラッグストアをはじめ競合他社間での競争激化、物流費や人件費の上昇など、経営環境は厳しさを増しており、中長期的な取り組み視点で事業改革に取り組むことが最良と判断された。こうした中、トーホーも傘下のトーホーストア(神戸市)が展開する食品スーパー4店舗を同業の三杉屋(神戸市)に譲渡することを1月31日に発表した。

他方、攻勢に回ったのがイズミ。同社は中国、四国、九州地方を中心に、エリアを絞って経営資源を集中投下するドミナント戦略を推進している。その一環として、1月9日に大分県内で食品スーパーを展開するサンライフ(大分市)を子会社化することを発表した。また同日、クスリのアオキホールディングスはヒバリヤ(静岡市)とその子会社のスーパーよどばし(静岡県富士宮市)から静岡県富士宮市のスーパー3店舗を取得すると発表、業界内での再編が活発化した月となった。

◎1月M&A:金額上位(10億円以上)

1 積水ハウス 戸建住宅事業を展開する米国M.D.C. Holdingsを子会社化 7324億円 2 セブン&アイ・ホールディングス 米スノコからコンビニ・ガソリン204店舗を取得 1374億円 3 カゴメ トマト加工品大手の米インゴマーに追加出資して子会社化 360億円 4 オリエントコーポレーション イオンフィナンシャルサービス傘下で個品割賦事業のイオンプロダクトファイナンスを子会社化 250億円 5 ペイロール 米投資ファンドのTAアソシエイツと組んでMBOで株式を非公開化 240億円 6 サワイグループホールディングス 米国子会社Sawai America Holdingsを売却 227億円 7 アオキスーパー MBOで株式を非公開化 107億円 8 メドレー グッピーズにTOBを実施し子会社化 54.5億円 9 NEW ART HOLDINGS 食肉輸入・卸売会社の香港Wah Full Groupを子会社化 37.2億円 10 岡部 米国とイタリアでの自動車用バッテリー端子製造事業を譲渡 35.1億円 11 MS-Japan 豪人材派遣のFourQuarters Recruitmentを子会社化 34.6億円 12 太陽鉱工 東邦金属<5781>をTOBで子会社化 29.9億円 13 エフ・コード デジタルマーケティング展開のBINKSを子会社化 25.5億円 14 メンタルヘルステクノロジーズ 医療機関向け人材サービスのタスクフォースを子会社化 24.3億円 15 ポート 楽天グループ<4755>から口コミ就職情報サイト「楽天みん就」を取得 22.5億円 16 GA technologies 賃貸管理や投資不動産マーケットプレイス事業の米RW OpCoを子会社化 16.6億円

文:M&A Online

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