三菱電機だけではない、パナソニック・日産・JDIなど大手企業で人員削減が続々

三菱電機が希望退職者を募集すると発表した。業績が好調なうちに次代を見据え、組織の若返りを図る狙い。

同社に限らず、大手企業では今年も大がかりな人員削減が続いている。目的は各社各様だが、ここまでの主な動きを再点検する。

三菱電機、好業績が追い風に

三菱電機は9月8日、53歳以上で勤続3年以上の正社員と定年後再雇用者を対象に希望退職者を募る「ネクストステージ支援制度特別措置」を実施すると発表した。募集期間は12月15日~2026年1月9日。

対象者は1万人程度在籍するが、募集人数は定めていない。応募者には通常の退職金に特別加算金を支給し、再就職も支援する。

同社は2025年3月期に売上高(5%増の5兆5217億円)と営業利益(19.3%増の3918億円)で過去最高を更新。足元の26年3月期は売上高2%減ながら、10%の営業増益を見込む。好調な業績を背景に、人員構成の最適化を進めるチャンスと判断した。

希望退職募集に続く翌9日には、顧客企業をサイバー攻撃から守るセキュリティーソリューションを提供する米国ノゾミ・ワークス(サンフランシスコ)を約1300億円で買収すると発表。三菱電機としてこれまでで最も大きい買収で、リストラ、M&Aの両面で攻めの姿勢を鮮明にした格好だ。

背水の陣のJDI、国内社員の半数が応募

液晶パネル製造のジャパンディスプレイ(JDI)では6月から8月に行った希望退職に1483人が応募した。国内従業員(3月末で2639人)の半数以上にあたり、これに自己都合退職などを含めると国内の人員は最終的に1000人程度になるとしている。

JDIは2012年、日立製作所、東芝、ソニーの中小型液晶パネル事業を統合して発足。

しかし、2025年3月期まで11年連続の最終赤字という経営危機にある。

年内に茂原工場(千葉県茂原市)の生産を終了し、石川工場(石川県川北町)に集約するなど、背水の陣でコスト構造の抜本的改善を進めており、大幅な人員合理化もこの一環。2027年3月期の黒字転換を確実にするという。

肌着大手のグンゼは、インナーウエアを生産する国内4工場を2026年中に閉鎖するのに伴い、これを統括する事業部「アパレルカンパニー」に在籍する間接部門(総務など)と営業部門の40歳以上の従業員を対象に希望退職を実施する。募集期間は10月10日~10月24日。募集人数は未定。

インナーウエアの国内生産は宮津工場(京都府宮津市)に集約し、一部機能はタイとベトナムの海外工場に移管する。閉鎖する工場で働く従業員には宮津工場を含むグループ他拠点へ異動や再就職支援を予定している。

パナソニック、国内外で1万人規模を削減へ

人員削減のスケールが最も大きいのがパナソニックホールディングスと日産自動車だ。いずれも1万人規模に上る。

三菱電機だけではない、パナソニック・日産・JDIなど大手企業で人員削減が続々
パナソニックの東京本社ビル(東京・東新橋)

パナソニックHDがグループ経営改革の一環として国内外で全従業員の約5%にあたる1万人規模の削減を発表したのは5月。内訳は国内、海外各5000人で、主に2025年度に実施予定としている。国内ではグループの中核子会社パナソニックでの希望退職者の募集が主体になるが、詳細は公表していない。

併せて、本社・本部、家電事業の集約・効率化、赤字事業の撤退や拠点統廃合などを進め、1500億円以上の収益改善(うち人員適正化で700億円)を見込む。

日産は5月、2027年度までに国内外で7つの車両生産工場の閉鎖と2万人の人員削減を発表した。同社は昨年11月に9000人の削減を明らかにしていたが、新たに1万人超を追加した形で、削減規模はグループ全体の約15%に達する。

同社は北米や中国での販売不振が響き、2025年3月期に6708億円の最終赤字に転落。経営立て直しが急務となる中、より踏み込んだ合理化策に取り組む。

マツダは間接部門で500人を募集

同じ自動車業界ではマツダが「セカンドキャリア支援制度」と銘打ち、50歳~61歳の間接部門の正社員を対象に希望退職を実施中。募集人数は500人で、2025~26年の6月と12月の計4回、応募を受け付ける。

日清紡ホールディングスは近く、傘下の日本無線(その国内子会社を含む)で400人の早期退職を実施する。グループの最重要課題と位置付ける無線・通信事業の構造改革に基づくもので、募集期間は10月10日~10月31日。日清紡は2010年に日本無線をTOB(株式公開買い付け)で子会社化した。

◎2025年発表:希望退職などによる主な人員削減の動き ※HDはホールディングスの略

発表 社名 募集人数・期間など 9月 三菱電機 定めず(12月15日~2026年1月9日 8月 グンゼ 未定(アパレルカンパニー部門で10月10日~24日) 7月 NIPPON EXPRESS HD 300人程度(傘下の日本通運で8月18~29日) 〃 JUKI 定めず(8月1日~8日) 6月 日清紡HD 400人(傘下の日本無線で10月10日~31日) 5月 パナソニックHD 国内外で1万人規模(主に2025年度実施) 〃 日産自動車 1万人超を追加し、国内外2万規模に(2027年度中) 〃 ジャパンディスプレイ 国内1500人程度(6月16日~8月25日)→1483人応募 〃 協和キリン 定めず(5月22日~6月24日)→432人応募 4月 マツダ 500人(2025年~26年の6月と12月の計4回) 3月 SMK 100人程度(4月15日~30日)→118人応募 2月 ウシオ電機 定めず(3月3日~6月30日)→238人応募

文:M&A Online

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