「企業の新陳代謝にM&Aは必要」神田眞人元財務省財務官

日本経済の低迷が止まらない。その最大の原因が、国内企業の競争力低下なのは間違いない。

企業の国際競争力を向上し、日本経済を再浮上させるために、M&Aは有効なのか?日本記者クラブ(東京都千代田区)で会見した神田眞人元財務省財務官(現・アジア開発銀行総裁)に聞いた。

健全な市場経済にM&Aは必要

神田氏はM&Aの役割について「健全な市場経済においては、企業の新陳代謝は自然な過程であり、M&Aや事業承継を通じて競争力を強化することが重要。M&Aによるオープンイノベーションや新技術の導入で、企業の変革を促進することが日本経済の活性化に必要だ」との見方を示す。

とりわけ中小企業においては「M&Aの結果、バイイングパワー(購買力)の向上やシナジー(相乗効果)が向上し、売り手・買い手ともにWin-Winとなることが期待できる。M&A関連の法制や税制もよくなり、M&Aを実施する環境は整備されてきた」(神田氏)と見ている。

「日本のマーケットはスタティック(静的)で、徐々に弱っている。賃金は低い上に低金利政策が続いてきたため、企業の淘汰が進まなかった。M&Aで企業が新たなスタートを切るなどの変革が進むことで、賃金の上昇と労働力の移動が起こり、人を採れないゾンビ的な企業が退場するだろう。これは普通のマーケットになるということだ」(同)と、M&Aによる企業の新陳代謝に期待をかけた。

通貨安競争は起こらない

米トランプ政権が自国の製造業に不利なドル高に不満を示していることから、通貨安競争が再燃する可能性もある。

これについて神田氏は「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)と過度に違う方向に動いた場合、当局が調整することはある。ただ、基本的に為替はマーケットが決めることだ。為替に関するポジショントーク(自分たちの有利な方向に相場を動かすため、市場心理を操作する発言)はあるかもしれないが、その方向は変わらないと思う」と、政策的な通貨安競争は起こりにくいとの考えを示している。

文・写真:糸永正行編集委員

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