
ドラッグストア業界2位(直近決算)のマツキヨココカラ&カンパニー<3088>は、2031年3月期に中・小型の企業買収を含めた事業成長で売上高1兆3000億円を達成し、これにM&Aなどによって実現を目指す連合体構想分を上乗せする事業拡大計画を策定した。
同社は、今後6年間(2026年3月期~2031年3月期)に、出店や改装、人材、IT、中・小型企業買収などに最大2200億円を投じる計画だが、連合体構想の実現については、負債を活用した資金調達も視野に入れて検討を進めていく方針だ。
売上高は1兆3000億円+α
マツキヨココカラ&カンパニーは2021年に、当時ドラッグストア業界6位のマツモトキヨシホールディングスと7位のココカラファインが経営統合して誕生した。
経営統合時に2026年3月期を最終年とする中期経営計画を策定していたが、少子高齢化の進行やコロナ禍による社会環境の変化、生成AI(人工知能)の急速な進化など経営環境が大きく変化しているため、従来の中期経営計画の最終年を待たずに、新たに2026年3月期から2031年3月期までの6カ年の中期経営計画を策定した。
旧中期経営計画の中では、連合体構想実現に向けたM&Aや業務提携の推進などの中長期的な成長を実現していくための投資を行うことを明記していた。
ただ経営統合後に適時開示したM&Aは2024年12月の粧品メディア「LIPS」運営のAppBrew(東京都文京区)の子会社化、2025年5月のドラッグストア・調剤薬局経営のティー・エム・シー(東京都多摩市)の子会社化の2件に留まっており、連合体構想は実現していない。
また前中期経営計画では連合体構想分を含んだ売り上げ目標として、2026年3月期に1兆5000億円を計画していたが、新中期経営計画では、2031年3月期に既存事業の売上高(1兆3000億円)とは別に、連合体構想分をαとして表記し、総売上高については目標数値を示さなかった。
日本最大のドラッグストア連合体が誕生
マツキヨココカラ&カンパニーの連合体構想は、中・小型の企業買収とは別扱いにしているため、大手のドラッグストアの買収などを意図していることがうかがえる。
ドラッグストア業界では2025年12月に、イオン<8267>子会社で業界最大手のウエルシアホールディングス<3141>と、業界3位のツルハホールディングス<3391>が経営統合するといった大きな動きがある。
ウエルシアHDとツルハHDの合わせた売上高は2兆3124億円、営業利益835億円、国内店舗数 5654店で、日本最大のドラッグストアの連合体が誕生することなる。

両社は、地方の過疎化が進むにつれて、ドラッグストアで生鮮食品や雑貨を含むワンストップの買い物需要が増加するとともに、医療、介護、行政などの機能の付加がさらに求められるようになるとの認識を持つ。
経営統合後はスケールメリットを生かした仕入れや物流面での効率化を進めるほか、両社の店舗網やノウハウ、調達網、物流システム、顧客データ基盤などを活用して、ワンストップの買い物や多機能化などの需要に応えるための、新たな業態の開発や出店を目指す計画だ。
さらにイオングループが持つ中国やASEAN(東南アジア諸国連合)の店舗網や人的資源、調達網などを活用し、ウエルシア、ツルハの海外事業展開を一気に加速し、アジアナンバーワンのグローバル企業への成長を目指すという。
業界地図はどう変わる
M&A Onlineが構築したM&Aデータベースで、2010年以降に適時開示されたドラッグストア・調剤薬局のM&Aを見ると、2010年代は年平均17.6件だったのが、2020年代は2020年から2024年までの5年間の年平均は18.8件と増加傾向にある。

その背景には、ウエルシア、ツルハ連合や、マツキヨココカラ&カンパニーのように規模を拡大することで、スケールメリットを求める動きや、調剤薬局をはじめとする規模の小さな企業体で後継者不在や人手不足などが問題化している状況がある。
さらにクスリのアオキホールディングス<3549>が2025年5月に香川県の食品スーパー「PiCASO」運営のミワ商店を子会社化するなど、ドラッグストアによる食料品などの非医薬品事業拡大のためのM&Aも件数を押し上げている。
こうした状況の中、マツキヨココカラ&カンパニーは今後どのような連合体を作るのか。売上高が2兆円を超える日本最大のドラッグストア連合体となるウエルシア、ツルハ連合との差は埋まるのか。
マツキヨココカラ&カンパニーの今後の動きによっては、業界地図が塗り替えられる可能性もありそうだ。
文:M&A Online記者 松本亮一
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