
歯科分野のプラットフォーム(商品などの提供者と利用者をつなぐ基盤)事業を展開するメディカルネット<3645>は、2028年5月期までに売上高120億円、営業利益15億円を達成するとしていた目標を1年先送りにし、2029年5月期までの達成を目指すことにした。
今後の成長戦略の一つの柱としていた「未病・予防プラットフォーム事業」の収益化が困難になったことから、事業の柱となる受託臨床検査サービスを手がけるミルテル(広島市)の株式を2025年3月に譲渡し連結対象から外したため計画を修正した。
⼤⼿IT企業でも模倣は困難
ミルテルは、患者の唾液代謝物を解析し、乳がんの早期発見をサポートするなどの未病予防分野で高い技術力を持っており、メディカルネットが2024年に子会社化していた。
メディカルネットはミルテルを核に「未病・予防プラットフォーム事業」を拡充する計画だったが、想定していた成果が得られなかったことから、2025年5月期の業績は当初の予想(売上高64億円)を下回り、売上高は60億7700万円(前年度比15.7%増)にとどまった。
そのため当初の計画では2027年5月期から2028年5月期に、売上高120億円、営業利益15億円を計画していたが、この達成時期を2028年5月から2029年5月期に1年遅らせることにした。

メディカルネットは、インターネットを活⽤した、⽣活者への⻭科医療情報サービスの提供や、⻭科医療従事者への情報サービスの提供、⻭科医療機関の経営⽀援事業、⻭科関連企業のマーケティング⽀援事業などの⻭科医療の総合ビジネス(プラットフォーム)を展開している。
5万6000人の⻭科医療関係者の会員基盤を保有しており、これを活用した事業展開が強みで、同社では「⼤⼿IT企業や⼀般医療に強いIT企業でも容易に模倣することはできない」としている。
主力はWebマーケティングやホームページ作成、歯科医院運営、不動産事業などを手がける「医療機関経営支援事業」で、総売上高の70%強を占める。
その他に生活者に有益な歯科情報や美容情報、ヘルスケア情報を提供する「メディア・プラットフォーム事業」が同20%弱、タイ国内で小売業、製造業や病院向けにPOSシステムの開発、導入、メンテナンスサービスなどを行う「クラウドインテグレーション事業」と、歯科医療従事者のための総合情報サイト「Dentwave」での広告ソリューションを提供する「医療BtoB事業」がそれぞれ数%といった構成になっている。
これまでに15件のM&Aを実施
日本歯科医師会によると、日本は人口減少の影響で、歯科を受診する所患者数は2045年に、現在より10.8%減少すると推測されるとする一方で「2045年ごろまでは65歳以上の患者数については増加していくと予測される」としている。
こうした状況の中、メディカルネットはM&Aを重要な成⻑戦略と位置づけており、これまでに15件のM&Aを実施し事業を拡大してきた。
直近では2025年3月に歯科医療用品・歯科用機器材卸売りの吉見歯科器械店(宮崎市)を子会社化しており、2018年に子会社化したオカムラ(東京都福生市)を通じて展開している歯科器械材料・医薬品の販売事業と連携することで、歯科商社事業を拡大するという。
こうしたM&AとPMI(M&A後の統合作業)の経験を活かし、2028年5月期~2029年5月期の目標達成に向け、歯科商社事業をはじめ、歯科医院の経営支援事業や、タイで展開しているクラウドインテグレーション事業など幅広い分野で積極的にM&Aを実施する方針だ。
売上高が当初の計画に届かなった2025年5月期は利益も厳しく、ミルテルの収益化が実現しなかったことなどにより、営業利益は9800万円(同66.9%減)と3期連続の減少を余儀なくされた。
2026年5月期の売上高は64億円(同5.3%増)、営業利益は2億7000万円(同2.73倍)を見込んでおり、営業利益は4期ぶりに増加に転じる見込みだ。
1年先送りした業績目標の達成は、ミルテルの穴を埋めることのできるM&Aを実現できるのかが、ポイントとなりそうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一
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