中小企業向けバックオフィス業務(経理・人事労務・法務など)の管理ソフト「マネーフォワード クラウド」を主力とするSaaS企業のマネーフォワード<3994>は、M&A戦略を推進する。
M&Aを通じて、中堅・大企業向けのバックオフィスSaaSサービスを拡充し、開発期間の短縮と顧客獲得の加速につなげる。
あわせて同社は「ナンバーワンバックオフィスAIカンパニーへの進化」を目標に掲げ、AI(人工知能)による自律型バックオフィスの実現を目指している。
M&AとAI(人工知能)が、今後の成長の両輪となりそうだ。
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・成長モデルの転換に迫られるSaaS企業 AIの進展が契機に
M&Aを成長戦略の一つに
マネーフォワードは2026年1月に公表した決算説明資料で、M&Aにより競争力を高め、既存顧客へのアップセル(追加販売)やクロスセル(関連サービスの販売)を拡大するとともに、顧客当たりの売上高を引き上げ、成長を加速するとした。
2025年11月に子会社化したミチビクは、その具体例といえる。
同社は取締役会の準備、進行、議事録作成などの業務を管理するクラウドツール「michibiku」を提供する。
マネーフォワードの会計・財務管理、人事・労務管理などのサービスとの親和性が高く、中堅企業を対象に新規顧客の獲得や既存顧客へのクロスセル拡大につながる。
マネーフォワードは2025年4月に公表したビジョンレポート「Forward Map 2025」でも、M&Aについて言及し、三つの重点領域を示した。
一つはミチビクの事例のように、ソフトウエアやサービスの種類を増やす取り組みで、これに加え、東南アジアや北米などで展開地域を広げることや、新たな分野への参入を進めることで、市場規模の拡大を見込む。
さらに同レポートでは、M&Aを成長戦略の一つに位置付け、マイノリティ出資や事業提携も含めた非連続的な成長に積極的に取り組む方針を示した。
今後は、こうした方針に沿ってM&Aが進む見通しだ。
ナンバーワンバックオフィスAIカンパニーに
一方、目標とする「ナンバーワンバックオフィスAIカンパニーへの進化」については、AIエージェントの提供、AIを前提に設計したサービスの開発、AIを活用した業務代行サービスの提供の三つの戦略で実現を目指す。
AIエージェントの提供では、さまざまな機能を提供して使いやすさを高め、手間がかかる業務や処理量の多い業務の効率化を進める。
すでに請求書ダウンロード代行や交際費精算エージェントなどを投入しており、今後は機能の拡充を進める。
AIを前提としたサービスの開発では、初のサービス「マネーフォワード AI確定申告」(β版)の提供を開始した。
同サービスを用いると、AIが利用者に代わって確定申告の作業を行い、手続きの負担を軽減できる。
AIを活用した業務代行サービスでは、すでに「マネーフォワード おまかせ請求回収」の提供を始めており、請求書の発行や入金処理、口座振替の手続き、督促などの請求業務を一括して担う体制を構築した。
ビジョンレポートでは、金融分野に特化した大規模言語モデル(LLM)や、AIを活用した自動与信の研究開発に注力しているとしたうえで、両者を組み合わせることで「マネーフォワードならではの経営支援を目指す」としている。
設立以来の初の黒字化へ
マネーフォワードは2012年に東京都内でマネーブックとして設立された。
家計・資産管理に特化したサービス「マネーフォワード ME」や、企業向けの「マネーフォワード クラウド会計・確定申告」などを投入し、事業を拡大してきた。
現在は(2025年11月期)は、企業向けに「マネーフォワード クラウド」などのバックオフィス業務の効率化ソフトを提供するBusinessが売上高の約71.3%を占める。
次いでSaaS企業の営業・マーケティング支援サービスを提供するSaaS Marketingが同約9.9%、個人向けに資産管理サービス「マネーフォワード ME」を提供するHomeが同約9.5%と続く。
このほか金融機関向けの業務DX(デジタルトランスフォーメーション)サービスなどを提供するXが同約6.4%、スタートアップへの出資・支援を行うFinanceが同約3.1%といった構成で事業を展開する。
2025年11月期は売上高503億4900万円(前年度比24.7%増)となったものの、営業損失は26億5300万円(前年度は47億3500万円の赤字)となった。
2026年11月期は、売上高534億円(同6.1%増)~575億5000万円(同14.3%増)と幅を持たせた増収を見込む。
営業損益についても25億円の赤字から5億円の黒字まで幅を持たせている。
広告宣伝費や人件費、外注費の抑制などにより、黒字化を目指しており、実現すれば2012年の設立以来、通期で初の営業黒字となる。
SaaS事業は開発費や顧客獲得費が先行するため赤字になりやすい傾向がある。
事業成長と黒字化を実現する新たな段階では、M&AとAIの二つの戦略が重要な役割を果たすとみられる。
文:M&A Online記者 松本亮一
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