2026年新年のご挨拶 激変の時代における、私たちの原点と使命

新年あけましておめでとうございます。

M&A Onlineの読者の皆様におかれましては、健やかに新年をお迎えのことと、心よりお慶び申し上げます。

旧年中は、本メディアをご愛読いただき、誠にありがとうございました。

2025年を振り返りますと、私たちメディアを取り巻く環境は、まさに「激変」の一言に尽きます。2000年代初頭から続く紙媒体・マスメディアの構造的な変化に加え、近年における生成AIの爆発的な進化と普及は、ウェブメディアの在り方そのものを根底から揺るがすものとなりました。

これまでウェブメディアの多くは、検索エンジン最適化(SEO)を前提としたマーケティング手法、すなわち「いかにして検索結果の上位に表示されるか」を至上命題としてきました。しかし、ユーザーが検索エンジンを介さず、生成AIとの対話によって直接答えを得る時代が、すでに到来しています。

ウェブ業界の関係者の多くは、「SEOはなくならない。これからはAI検索に最適化したSEOが必要になる」と強気な姿勢を崩していません。しかし、私たちはその言葉を楽観視することはできません。もしAIとの対話で情報収集が完結するならば、ウェブサイトへの流入は起こり得ないからです。実際、これだけAIが普及した現在でも、AI経由のウェブサイトへの流入は全体の1%にも満たないというデータも存在します。

かつて一世を風靡した「ググる」という言葉が死語になろうとしているように、「検索」という行為そのものが過去のものとなりつつあります。Google自身が「Gemini」によって検索中心の文化を終わらせようとしている今、私たちウェブメディアに携わる人間は、その思考を根底から変える必要があります。

検索を前提としたビジネスモデルは、もはや通用しないのです。

誤解を恐れずに言えば、これまでのウェブメディアでは、読者にとって真に有用で読みやすい文章であるかは二の次にされてきました。検索エンジンのアルゴリズムを研究し、その好みを先回りして書くことが「正解」とされてきたのです。その結果、中身のない「釣り見出し」、他サイトからの安易なコピー&ペースト、複数記事の「まとめ」といった手法が横行し、現場での一次情報の取材はなおざりにされていきました。

SEOの時代が四半世紀も続いたことで、現在文章を書くことを生業としている書き手の多くが、その影響から逃れられません。まとめサイト全盛期にSEO記事の執筆を経験した世代が、今や現場の中核を担っています。そのような状況で「一次情報が大事だ」と叫ばれても、何をすべきか分からず、体が動かないというのが現実ではないでしょうか。

さらに深刻なのは、文章を書くという行為そのものの価値が大きく揺らいでいることです。SEOが文章の「書き方」を画一的にしたとすれば、生成AIは文章そのものを一瞬で作り出してしまいます。編集者やライターが時間と労力をかけて紡いできた文章がAIに代替されるという事実は、私たちコンテンツ制作者にとって、自らの存在意義を問われる深刻な事態です。

このような激動の時代において、私たちM&A Online編集部は、どのようにして読者の皆様に価値を提供し、存続していくことができるのか。その答えを、私たちは「原点に立ち返る」ことに求めたいと考えています。

私たちの原点、それはM&Aという専門領域において、他では得られない「一次情報」と「深い洞察」を、熱意をもって読者の皆様にお届けすることです。

生成AIは、既存の情報を整理・要約することに長けています。しかし、まだ世に出ていない独自の情報を足で稼ぎ、当事者の生の声に耳を傾け、その背景にある人間ドラマや戦略の機微を深く読み解くことはできません。また、数々のM&A案件の裏側を取材してきたからこそ得られる、相場観や未来への示唆といった「暗黙知」を提示することも困難です。

私たちが提供すべき価値は、まさにそこにあります。AIには書けない、人間だからこそ書けるコンテンツ。長年の経験に裏打ちされた専門的な解説であり、M&Aという経済活動のダイナミズムを伝える熱量のあるストーリーです。

2026年、M&A Onlineは、改めてこの原点を強く意識し、編集部一丸となってコンテンツ制作に邁進してまいります。M&Aの最前線で何が起きているのか。キーパーソンは何を考えているのか。そのM&Aは日本経済にどのような影響を与えるのか。表面的な情報の羅列ではない、一歩も二歩も踏み込んだ「本質」を、読者の皆様にお届けすることをお約束します。

かくいう私たちM&A Online編集部も、データの解析や速報記事の作成といった場面で、積極的にAIを活用しています。インタビューやイベントの文字起こしにAIツールを導入したことで、作業時間は劇的に短縮されました。原点に立ち返るとは、決してテクノロジーに背を向けることではありません。使える技術は賢く使い、それによって生まれた時間を、より本質的な取材活動に充てていきたいと考えています。

メディア環境がいかに変化しようとも、信頼できる情報と、心を動かす物語を求める人々の欲求がなくなることはありません。激変の時代だからこそ、私たちの使命はより一層重要になると確信しています。

本年も、M&A Onlineにご期待ください。皆様にとって、2026年が実り多き一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。

2026年1月1日

M&A Online 編集長 大畑滋生



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