水産業界の老舗商社「ニチモウ」海外企業と加工会社を取り込む その戦略の狙いは

水産食品や漁業資材などを取り扱う老舗商社のニチモウ<8091>は、食品加工機械事業の海外展開、フィルムやシートなどの素材事業の拡充に向けM&Aを活用する。

課題である海外事業展開の遅れを取り戻すとともに、新たな素材の市場を開拓するのが狙いだ。

2026年3月期から2028年3月期までの3年間で60億円を投じ、企業買収を進める。

海外比率20%に再挑戦

ニチモウは、日本では人口減少が進む一方、世界の人口は増加基調にあり、安定的なたんぱく源として水産物の需要は今後も増えると見る。

こうした認識のもと、国内にとどまらず、海外事業の強化を経営計画に盛り込み、海外売上比率を20%に引き上げる目標を掲げてきた。

しかし、これまでのところ目標の達成には至っていない。

現在の海外売上比率は公表していないが、2028年3月期までに20%の目標達成を引き続き目指す方針だ。

そのための成長施策として位置付けているのがM&Aだ。

海外拠点と品ぞろえを拡充

機械事業ではM&Aを通じて、現地での保守・メンテナンス体制の整備や、営業拠点の確立を進め、品ぞろえと事業規模の拡大につなげる。

食品加工機械は、世界的に拡大する水産物需要に効率的に応えるうえで不可欠な設備で、同社は、加熱調理機、冷却・凍結設備、水産加工機、魚体処理機などを手がけている。

今後、北米やオセアニア、中国、東南アジアの食品加工メーカー向けに販売を強化する計画で、こうした海外展開を支える手段としてM&Aを活用する。

一方、素材事業では、顧客用途に応じて加工を行うコンバーティング会社を傘下に収め、フィルムやシートなどの品ぞろえを充実させる。

同社は食品包装資材をはじめ、衛生資材、農畜資材、住宅・家具向けなど幅広い用途でフィルム・シートを展開している。

中国や東南アジアなど海外で、M&Aを含めた委託加工先の拡充や拠点の整備を進めることで、自動車の外装フィルムや建装材向けといった新たな市場の開拓を狙う。

同社は過去3年間(2023年3月期~2025年3月期)に、既存事業強化を目的にM&A投資枠として20億円を計上していたが、実行には至っていない。

適時開示情報によると、直近の企業買収は辛子明太子・たらこの製造販売を手がけるマルキュー食品を子会社化した2017年にまでさかのぼる。

水産で築いた技術力を軸に多角化

ニチモウは1910年に、同社の礎となる高津商店漁業部を山口県下関市で創業した。その後、同部門は漁網部として分離・独立。

1919年に高津商会を設立し、高津商店漁網部の事業を継承した。1972年には現在のニチモウに社名を変更する。

現在の売上構成は、食品事業(すり身、カニ、ホタテなど)が約62.8%と過半を占め、これに、海洋事業(漁網・漁具、船舶・機械、養殖用資材など)の約16.7%、機械事業(食品加工機械)の約11.7%、資材事業の約6.8%(包装資材、農畜資材など)と続き、この4事業が収益の柱となっている。

このほか、物流事業(物流・配送サービス)が約1.8%、バイオティックス事業(発酵大豆製品、健康食品)が約0.2%、その他事業(不動産賃貸や人材派遣業など)が約0.08%を占める。

水産業界の老舗商社「ニチモウ」海外企業と加工会社を取り込む その戦略の狙いは
ニチモウの売上高構成比

同社は漁業、水産業に関して蓄積された技術・ノウハウを強みとし、2025年3月期は売上高1339億円(前年度比4.8%増)、営業利益は30億200万円(同48.6%増)の増収営業増益を達成した。

2026年3月期も0.8%の増収、9.9%の営業増益と、2期連続の増収増益を見込む。

さらに中長期では2028年3月期に売上高1550億円(2025年3月期比15.7%増)、営業利益43億円(同43.2%増)を計画。

その先の成長シナリオとして2035年3月期には売上高2300億円(同71.7%増)、営業利益77億円(同2.56倍)と持続的な成長を描いている。

海外比率20%という未達の目標に再挑戦するなかで、ニチモウがM&Aを実行段階に移せるかどうかが、次の成長局面への試金石となる。

水産業界の老舗商社「ニチモウ」海外企業と加工会社を取り込む その戦略の狙いは
ニチモウの業績推移

文:M&A Online記者 松本亮一

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