
モーター大手のニデック<6594>は2025年1月23日に、事前の協議や打診を行わずに買収の意向を表明している、工作機械メーカー・牧野フライス製作所<6135>に関し、同社から同意が得られない場合でも、予定通り買収を進める方針を示した。
2024年度第3四半期決算説明会後に実施した「牧野フライス製作所へのTOB開始予定に関する記者会見」で明らかにした。
事前の協議や打診を行わないままTOB(株式公開買い付け)を発表したことについて「非常に透明なプロセスである」とし、今後のM&Aでもこの手法を採用するとした。
1月17日に、牧野フライスの特別委員会の4人の委員と面談し、ニデックの考えや計画を説明しており、ニデックの岸田光哉代表取締役社長執行役員(CEO)は「あらゆる手段で理解を求める」と買収に強い意欲を示した。
経産省の指針に沿って実施
事前の協議や打診を行わない買収の手法について、日本の場合M&Aがどのように提案され、どのように議論され、最終的にどのような結論に至ったのかが、ほとんど公表されないと不透明さを指摘したうえで、今回のTOBの提案は経済産業省が2023年8月に発表した三つの原則からなる「企業買収における行動指針」に沿って実施したと説明。
特に第3原則である「透明性の原則」に関して、買収の提案を公開することによって、株主や従業員、取引先、地域社会などのステークホルダーが、どのように判断するのか、意見を言える場を与えることは非常に透明なプロセスであるとした。
加えて米国ではこうした手法の事例は多いとし、2022年のイーロン・マスク氏によるツイッター(現X)の買収や、2008年のマイクロソフトによるヤフーの買収などの事例を挙げた。
すでに牧野フライスとは接触し、今回のM&Aによって両社にさまざまなメリットがあることを説明しており、岸田社長は「あらゆる手段を持って、理解をいただけるように、誠意を持って尽くしていきたい」としたうえで、経営陣の同意が得られない場合でも「予定通り進めたい」とした。
M&A戦略を転換
また岸田社長は今回のM&Aで新しい買収手法を採用したことに加え、従来のM&Aとは異なる点について言及。これまでは経営を立て直すM&Aが中心だったが「今回は適切な経営状態にある企業と一緒になることで、さらなる企業価値の創造を目指す方向に舵を切った」とM&A戦略の転換を説明した。
ニデックはこれまでに70を超えるM&Aを実施しており、同社ではいずれのM&Aも成功しているとしている。その理由として経営陣をはじめ社内の部署や体制をそのまま残すことを挙げ、牧野フライスについても同様の対応を取るとした。
すでに米国競争法の手続きは完了
ニデックは2021年に歯車機械を手がける三菱重工工作機械(現 ニデックマシンツール)を、2022年にマシニングセンターを手がけるOKK(現 ニデックオーケーケー)を、2023年に旋盤を手がけるTAKISAWAなどを子会社化しており、工作機械事業を強化している。
牧野フライスは、削りや穴あけなど多種類の金属加工が可能なマシニングセンターを主力としており、ニデックは2024年12月27日に牧野フライスをTOBで子会社化する意向を表明し、2025年4月4日から買い付けを始めるとしている。
これに対し牧野フライス側は2025年1月10日に特別委員会を設置し、1月15日に同委員会が「通常のプラクティスを逸脱した不誠実な手法といわざるを得ない」と批判したうえで、買付開始時期の延期や買付予定数の引き上げなどを求める要望書を提出、1月22日にも再度、同様の要請を行った。
ニデックは1月22日に、牧野フライスのTOBに必要な許認可の一つである米国競争法の手続きが完了し、日本や中国、EUなどでも2025年4月初旬には同様の手続きが完了する見込みであると発表している。
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文:M&A Online記者 松本亮一
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