調剤薬局大手のクオールホールディングス<3034>は、今後5年間(2027年3月期~2031年3月期)に大型M&Aなどに大規模な投資を実施する。
これにより、2031年3月期に2026年3月期予想を2200億円上回る売上高5000億円(2026年3月期予想比約1.8倍)、同195億円増の営業利益350億円(同約2.3倍)の達成を目指す。
増収分2200億円のうち1780億円を、営業増益195億円のうち130億円をM&Aなどで確保する計画だ。
先進的な技術を獲得
クオールホールディングスは、薬局事業(売上高構成比約65%)のほかに、製薬事業(同30%)と、BPO事業(同5%、業務受託事業)を展開しており、今後5年間のM&Aについては、薬局事業とBPO事業を中心に取り組む。
薬局事業ではM&Aなどで店舗数を増やす計画で、1000店舗体制(2025年3月期は948店舗)の構築を目指す。
M&Aによる店舗数の増加には以前から取り組んでおり、2025年3月期は新規出店19店舗、子会社化による店舗取得26店舗の合計45店舗が増加した一方、閉店15店舗、事業譲渡2店舗の合計17店舗が減少し、28店舗の純増となった。
2025年は、すでに10月1日に神奈川県で調剤薬局1店舗を運営する横浜薬業サービスを子会社化したほか、同月29日には横浜駅前エリアやメディカルセンター内に店舗を展開する、ひかりから調剤薬局8店舗を取得した。
また同社は、子会社のアポプラスキャリアと協力して、地域の薬局向けに薬剤師や医療従事者の人材紹介や派遣などを行っており、こうしたサービスや機能を強化するためのM&Aも検討する。
この分野では医療従事者の派遣事業などを手がける企業が対象になる見込みだ。
一方、BPO事業では、MR(医薬情報担当者)の派遣などを行う「CSO事業(医薬品販売業務受託)」や、医薬品や食品などの開発業務を受託する「CRO事業(医薬品開発支援)」、薬剤師らを紹介、派遣する「紹介派遣事業」、薬局や医療機関向けのパンフレット、医薬品情報誌などを制作する「出版関連事業」の四つの事業を展開している。
このうち、製薬会社などから新薬などの開発を請け負うCRO事業では、他社との差別化を進めるため、先進的技術の獲得を目指しており、この技術獲得手段の一つとして企業買収を進める。
これらM&Aに投資する資金や時期などの詳細は明らかにしていない。
製薬事業が急拡大
クオールホールディングスは、これまでもM&Aを積極的に展開してきた。調剤薬局の取得に留まらず、2019年に医療用医薬品を製造販売する藤永製薬を子会社化し、製薬事業に参入したあと、2024年に第一三共傘下でジェネリック医薬品製造の第一三共エスファを子会社化(発表は2023年)した。
この結果、2025年3月期の製薬事業の売上高は787億2600万円(前年度は16億2100万円)と急拡大した。
また2012年には医療・医薬専門の職業紹介、派遣事業を手がけるアポプラスステーションを子会社化し、BPO事業を拡大した事例などがある。
こうして構築した薬局事業、製薬事業、BPO事業の3本柱が同社の強みで、2025年3月期は売上高2639億7200万円(前年度比46.6%増)、営業利益134億6500万円(同61.8%増)と製薬事業の急拡大に伴い、大幅な増収営業増益となった。
2026年3月期も6.1%の増収、15.1%の営業増益を見込んでおり、2期連続の増収営業増益を目指す。
利益は製薬とBPOで
調剤薬局業界は、薬価、調剤報酬の引き下げや、電子処方箋などDX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル技術で生活やビジネスを変革する取り組み)化への対応、競争の激化などに加え、将来は人口減少の影響も見込まれるなど、経営環境が厳しくなっている。
こうした状況の中、業界再編の動きが活発化しており、最大手のアインホールディングス<9627>は2025年8月に、調剤薬局「さくら薬局」など約800店舗を展開するクラフトの持ち株会社NSSK-WWを子会社化。店舗網を拡充し、競争力を強化した。
業界2位の日本調剤は2025年9月に投資ファンドアドバンテッジパートナーズが実施するTOB(株式公開買い付け)を受け入れ、株式を非公開化。経営基盤の強化と企業価値の向上を狙う。
クオールホールディングスの業績は好調に推移しているものの、主力の薬局事業は厳しい環境にある。
2025年3月期の薬局事業の売上高はM&Aや新規出店などで4.0%の増収を確保したものの、仕入や人件費などの運営コストの増加により、営業利益は6.5%の減益を余儀なくされた。
同社では薬局事業で安定的な売上高を確保しつつ、製薬事業とBPO事業で利益を上げる構想を掲げており、M&Aは、この構想を促進するための重要な成長ドライバーとなる。
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文:M&A Online記者 松本亮一
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