米国のM.D.C買収効果で大幅増益となった「積水ハウス」が一転、2ケタ減益に

大手住宅メーカーの積水ハウス<1928>は、戸建住宅事業を手がける米国のM.D.C. Holdings(コロラド州)の子会社化効果で2025年1月期に大幅な営業増益となったものの、2026年1月期第1四半期は一転、15%を超える営業減益を余儀なくされた。

米国の住宅ローン金利が高止まりしていることや、米国経済の先行き不透明感が高まったことなどから、顧客の様子見姿勢が強まったのを受けインセンティブ(値引きや特典など)を増加させたことに加え、のれん(純資産と買収価格との差額)の償却額などの計上により、国際事業の利益率が低下したのが要因だ。

今後の見通しはどうなのか。

通期では増収営業増益を予想

積水ハウスは2024年4月に、約49億9200万ドル(2024年4月時の為替レートで約7718億円)を投じてM.D.C.を子会社化した。M.D.C.の2022年12月期の売上高は57億1798万ドル(2024年1月発表時の為替レートで約8450億円)、営業利益は7億7401万ドル(同約1140億円)だった。

このM.D.C.の業績が期の途中からではあるが、積水ハウスの業績に加わったこともあり、2025年1月期は売上高4兆585億8300万円(前年度比30.6%増)、営業利益3313億6600万円(同22.3%増)と大幅な増収、営業増益となった。

同社は2026年1月期を最終年とする3カ年の中期経営計画に取り組んでおり、2026年1月期は売上高3兆6760億円、営業利益3180億円の目標を掲げていたが、M&Aによって1年前倒しで、目標を大きく上回る数値に達した。

ところが、2026年1月期第1四半期は15.1%の増収を達成したものの、営業利益は15.9%の減益となった。

M.D.C. を含む国際事業で、M.D.C.の業績が期初から加わったことで売上高は2.18倍と大きく伸びたものの、のれんの償却額の計上などで営業利益が53.8%の減益となったのが一因だ。

積水ハウスではM.D.C. の買収価格が中期経営計画で設定した3カ年合計で2000億円の新規事業・M&A投資枠を大きく超えたことで「一時的に財務健全性にストレスがかかる状況となっている」としたうえで、今後はM.D.C.の買収によって強化されたキャッシュ・フロー創出力を活用することなどで、財務基盤を強化するとしている。

2026年1月期は売上高4兆5000億円(前年度比10.9%増)、営業利益3620億円(同9.2%増)を予想しており、2ケタの営業減益となった第1 四半期時点では、この業績予想を据え置いている。

次に打ち出す目標は

米国の住宅市場は、住宅ローン金利が高水準で推移していることから、建設業者の慎重姿勢が強まり、住宅着工件数は停滞している。

直近では、米国国勢調査局と米国住宅都市開発省が共同で発表した2025年4月の民間住宅着工戸数は、前年同月を3.2%下回った。

住宅着工件数は2008年のリーマンショックの影響で大きく落ち込み、その後増加に転じているもののリーマンショック以前の水準には回復していない。

一方で、住宅ローン金利の高止まりの影響で、低金利で住宅ローンを借りた既存の住宅所有者が、高い金利下での住み替えを避けることによる中古住宅の供給が減少する現象が発生しており、さらに移民などによる人口増加などもあり、住宅に対する潜在需要は強い状況にある。

積水ハウスは米国で、2017年に住宅建設会社のWoodside Homes Company(ユタ州)を子会社化し、米国の戸建住宅事業に本格進出した。

2021年に⼾建住宅分譲事業と⼟地開発分譲事業を手がけるHolt Homes Group(ワシントン州)を、2022 年に戸建て注文住宅事業を展開するChesmar Homes(テキサス州)を、2023年にHubble Homes(アイダホ州)の住宅販売事業、宅地開発事業、関連する土地資産を取得した。

M.D.C.の2022年12月期の引渡し戸数は9710戸で、同時期の積水ハウスと合わせると引渡し戸数は年間約1万5000戸となり、同社が掲げていた2026年1月期に米国をはじめオーストラリアや英国などの海外市場で年間1万戸の戸建住宅を供給する目標を上回った。

積水ハウスは2025年1月期に戸建住宅ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)比率が過去最高の96%に達するなど環境対応が進んでいるほか、技術力や施工力などに強みを持つ。

中期経営計画の目標数値を前倒しで達成した同社が、次に打ち出す目標はどのようなものになるだろか。

米国のM.D.C買収効果で大幅増益となった「積水ハウス」が一転、2ケタ減益に

文:M&A Online記者 松本亮一

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