【静岡中央銀行】信金勢に押され気味の第二地銀|ご当地銀行のM&A

約7780㎡と国内13位の面積を持つ静岡県は、県庁所在地の静岡や産業集積都市の浜松のほかにも伊豆、沼津、富士、焼津、清水、磐田など、県域の広さ以上に個性あふれる中規模都市を擁している。それだけに、多くの私立銀行・金融機関が群雄割拠していた。

ただ、その多くは静岡銀行に集約されてきたが、県東部の沼津市には2つの地方銀行が存立している。1つはスルガ銀行<8358>。そしてもう1行が第二地銀の静岡中央銀行である。

両行とも広い静岡県でも神奈川・首都圏にも近い沼津市に本店を置き、スルガ銀行は上場、静岡中央銀行は非上場など、それぞれ別の個性を持って経営してきた。

このうち比較的ニュースなどに登場することも多くはない静岡中央銀行のM&Aを見ていこう。

1957年9月に静神相互銀行と合併

静岡中央銀行は1923(大正15)年11月、伊豆無尽として創立した。創立直後の12月に時代は昭和になり、第二次大戦後の1948年4月、太洋無尽に改称する。そして1951年10月、相互銀行法の施行に伴い、商号を太洋相互銀行と改称した。なお、紛らわしいが太洋相互銀行はのちに大洋相互銀行と称号を変えている。

相銀時代のM&Aでは、1957年9月に静神相互銀行と合併し、商号を静岡相互銀行と改称した。その後、大きなM&Aはなく、1989年に普通銀行へ転換し、商号を静岡中央銀行と改称した。

県東部に本店を置くのに「中央」という名称は、静岡県と神奈川県をエリアとして、その中心に本店を置いて事業を展開する、ということだろうか。静岡中央銀行は現在でも、静岡県内26店舗に対して神奈川県内に16店舗(支店・出張所)を設けている。

なお、地方銀行で「中央」の名を冠する銀行には、福岡中央銀行と山梨中央銀行がある。全国に3行しかない“民間中央銀行”のうちの1行だ。

中部銀行破綻の際に営業を譲受ける

静岡中央銀行と改称して以降は、2003年3月に静岡市に本店を置いていた中部銀行の破綻に伴い、11店舗の営業を譲受けした。この際は静岡中央銀行のほか清水銀行(静岡市清水区)、東京スター銀行(東京都港区)も受け皿銀行になっている。

なお、M&Aではないが、2021年11月には神奈川銀行との金融仲介機能等に関わる包括業務提携を開始した。また、2019年12月、中堅・中小企業の事業承継コンサルティング業務、M&A仲介・助言業務を行う経営承継支援と業務提携し、法人顧客の事業承継に関する事業も手掛けている。

“二都”を追う信金を、追う立場

帝国データバンクが2025年1月に発表した「静岡県内企業メインバンク動向調査(2024年)」によると、トップバンクである静岡銀行のシェアは36.20%と揺るぎない。

そして2位以下は浜松磐田信金、しずおか焼津信金、島田掛川信金、静清信金、三島信金などの信金勢が並ぶ。地銀では、清水銀行が4位、スルガ銀行が8位、静岡中央銀行が13位である。

県内地銀にとっては信金勢に“押され気味”なことが大きな特徴だ。特に「浜松磐田信金、しずおか焼津信金、島田掛川信金、静清信金」は県内の2都市名を合わせた金庫名である。2都市を地場として地域に密着した営業戦略をとっていこうという姿勢がうかがえる。

「中央」を冠した地方銀行としては、どのような戦略をとるか。

2015年1月には浜松や磐田など県西部の遠州エリアについて、母店である浜松支店に法人営業部門・融資部門を集約するなど営業体制の強化(見直し)を打ち出している。

文・菱田秀則(ライター)

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