「場所」はもはや制約ではない‐スタートアップ起業・全国展開への道筋

ストライク<6196>は2025年11月5日、長野県長野市のFEAT.Spaceにて「第49回 Conference of S venture Lab.」を開催した。長野県初開催となる今回は「地方から全国へ オープンイノベーション成功の勝ち筋」をテーマに掲げ、地方創生や事業承継の最前線で活躍するキーパーソンが集結。

地方から全国へとビジネスを拡大するための戦略に耳を傾けた。

第一部のトークセッションでは、シード期に特化したベンチャーキャピタルであるEast Ventures パートナーの金子剛士 氏、株式会社ライトライト 事業推進チーム 事業開発の藤島紫織 氏が登壇。モデレーターを株式会社ストライク アドバイザーの舩津朗が務め、地方における事業環境の変化や、他者との連携を通じて事業を拡大していくための具体的なアプローチについて議論が交わされた。

起業に場所は重要か

金子氏は「起業のハードルは年々下がっている」と指摘。同社が投資する新規企業の3~4割が学生起業家である現状を明かした。

地方と都市部での起業しやすさとその違いについては「ベンチャーキャピタルから出資を受けてスタートアップをはじめようとする方は、知り合いや同級生などで起業して資金調達に成功した人の話を聞いてはじめることが多い。その点では、そのサイクルが1・2周早く回っているのは大都市、特に東京が多いのではないか。その反面、慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)を中心に起業家コミュニティの拡大が見られこともあり、東京に限らず起業しやすい環境を整えることが可能とも考えられる」 と分析。起業において重要なのは場所ではなく、コミュニティの醸成や成功事例を知ることがきっかけの一つになるという見解を述べた。

「場所」はもはや制約ではない‐スタートアップ起業・全国展開への道筋
East Ventures パートナー 金子 剛士 氏

スタートアップの全国展開戦略とは

地方から全国展開を成功させている事例として、宮崎県に本社を置きながら全国各地の社員がフルリモートで働くライトライトの藤島氏は、自社のバーチャルオフィスの活用事例を挙げ、「社員間のコミュニケーションに問題はなく、地域による差は感じない」と自身の所感を語る。また、多様な地域のメンバーが集まることで「それぞれの地域の良さを知り、地域に貢献したいという共通のビジョンが生まれている」と述べた。

ライトライトは、後継者を探す事業者と事業を譲り受けたい人を繋ぐマッチングプラットフォーム「relay(リレイ)」を運営。本来は全国に営業網を拡大しなければ獲得できない事業者の売り・買いニーズを、金融機関や自治体と提携することで吸い上げ、マッチングを行っている。この成功の秘訣について、藤島氏は「当社と金融機関や自治体が、『地域事業者を支援する』『移住者を増やす』といった共通の目的を持っていることが大きい」と説明。

営業というより「一緒に地域を盛り上げましょう」というスタンスで連携を図ることで、Win-Winの関係を築いていると語った。

「場所」はもはや制約ではない‐スタートアップ起業・全国展開への道筋
株式会社ライトライト 事業推進チーム 事業開発 藤島 紫織 氏

金子氏は、スタートアップと伝統産業の連携について言及。豊富な資金力を持つスタートアップが後継者不足に悩む企業を買収するケースが増えているとし、「買いたい人は非常に多い状況」だと市場の動向を伝えた。

地域課題の解決をめざすスタートアップの事業モデル

第二部では、長野県にゆかりのあるスタートアップ3社がピッチを行った。各社は、それぞれの事業領域における課題に対し、テクノロジーや独自のプラットフォームを活用した解決策を提示した。

事業承継で地域の食文化を守り、育てる

「場所」はもはや制約ではない‐スタートアップ起業・全国展開への道筋
株式会社地元カンパニー 代表取締役 児玉 光史 氏

長野県上田市出身の児玉氏は「地域の食を支える」をミッションに掲げ、ご当地グルメのカタログギフト事業を展開。近年は食品加工業者の事業承継問題に着目し、自らが譲り受け手となりロールアップ型の成長を目指す「食品加工のライフモデル」を提唱した。2025年8月には鶏肉の焼き鳥用串刺し加工をする会社を譲り受けた実績を報告し、今後は今後は食肉加工事業者とも連携し、グループ全体での成長を図る計画を語った。

食品業界のハブとなり、食資源のロスをなくす

「場所」はもはや制約ではない‐スタートアップ起業・全国展開への道筋
ICS-net株式会社 代表取締役 小池 祥悟 氏

「食品製造業のハブを目指す」というビジョンのもと、食品業界に特化したBtoBプラットフォーム「シェアシマ」を運営。食品メーカーで20年間勤務した経験から、食品ロスの多さに課題を感じ起業したという。シェアシマは、メーカーが抱える余剰原料などを必要とする企業へと繋ぐことで、食品ロスの削減とサプライチェーンの最適化をめざす。現在、会員数は5000人、参加企業は3000社を超えていると述べ、協業パートナーを広く募集した。

3Dデータ活用で「使い続ける文化」を創造する

「場所」はもはや制約ではない‐スタートアップ起業・全国展開への道筋
株式会社プロノハーツ 代表取締役 藤森 匡康 氏

「プロフェッショナルの心」を社名に冠し、3次元データを活用した製造業支援やVR/ARシステム開発を手掛ける。特に注力しているのが、3Dモデルデータの共有サイト「モデラボ」である。ユーザーが作成した3Dデータをアップロードし、他のユーザーがダウンロードして3Dプリンターで造形できるこのサイトには、市販されていない特殊な部品のデータも集まるという。

藤森氏は「壊れたら捨てるのではなく、データを活用して使い続ける文化を創造したい」と語り、4万人の会員を抱えるプラットフォームの今後の展望を示した

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