ストライク<6196>は11月20日、東京・港区南青山のソーシャルインテリア「THE MUSEUM」でスタートアップと事業会社の提携促進を目的としたイベント「第50回 Conference of S venture Lab.」を開いた。今回は「リバースピッチ特集」として、スタートアップとの連携を目指す6社が協業を呼びかけた。
コミュニティ型CVCを目指すキャナルベンチャーズ
キャナルベンチャーズからは、シニアアソシエイトの丸尾和弘氏が登壇した。同社は2017年に組成され、システム開発大手のBIPROGYの100%子会社として主にシード・アーリーステージのスタートアップへの出資を行っている。1号・2号ファンド合計100億円を運用し、これまで51社に出資している。
「我々がカタリストとなり、優れた技術やビジネスモデルを持つスタートアップと、顧客企業や業界の課題を抱える事業会社をつなぎ、デジタルトランスフォーメーションされた世界を共に目指していきたい」と丸尾氏は語る。
同社の特徴は「コミュニティ型CVC」を目指していることだ。BIPROGYグループのアセット(エンタープライズ営業チャネル、システムエンジニアのノウハウ、新規事業企画力)を活用するとともに、経団連のスタートアップ委員会での活動や事業共創プログラムを通じて、事業会社とスタートアップをつなぐ活動を積極的に行っている。
投資においては「片思いではなく、双方の思いが重なる度合いを高めることが重要」と強調し、持続的なオープンイノベーションの実現を重視している。
楽天エコシステムを活用した協業支援を展開する楽天キャピタル
楽天キャピタルからは、シニア・インベストメント・マネージャーの宗正岳志氏が登壇した。同社は2013年に設立され、これまで累計1300億円以上の投資を行ってきた。今年に入って人員体制を増強し、積極的に投資する方針に舵を切っている。
「楽天グループでは70以上のサービスを展開しており、このサービスの多様性が、CVCの文脈においても非常に大きな意味を持っている」と宗正氏は説明する。
同社の特徴は、グループのエコシステムや事業アセットを活用した支援に注力している点だ。この強みを活かした多様な協業モデルが、投資先企業の成長を後押ししている。
「『アントレプレナーだけが世の中を変える』という社内標語がある。我々自身もアントレプレナーシップを持って、スタートアップ企業との協業を推進していきたい」と宗正氏は語った。
事業開発とグロース支援を両輪とする電通ベンチャーズ
電通ベンチャーズからは、ベンチャーパートナーの若松征剛氏が登壇した。同社は2015年から活動を開始し、当初は海外、特にアメリカのスタートアップ投資が中心だったが、直近は国内のスタートアップ投資も徐々に増えている。
「電通グループは、いわゆる広告マーケティング以外のところのビジネスも幅広くやっているというのがグループの特徴」と若松氏は説明する。
同社は現在、2つのファンドを通じて新規投資を行っている。電通ベンチャーズ2号ファンドは、共同事業開発を見据えた戦略リターンを重視し、電通グループの新規事業開発部門である電通イノベーション・イニシアティブと連携。一方、SGPファンドは投資先のグロース支援に軸足を置き、スタートアップ専門のビジネスプロデュース組織である電通のスタートアップグロースパートナーズと連携している。
グロース支援の事例として、ディープテック企業への支援を紹介。「非常に面白い技術を持っているが、なかなかそれが世の中に伝わらず、広がらないという課題があった」として、事業コンセプト策定やビジュアル化、コミュニケーション戦略の立案・実行などのブランディング支援、さらにはアプリ開発や空間デザインといったユーザーエクスペリエンス設計を中心とした事業開発支援を行った。
圧倒的な強みで世界課題を解決する起業家を応援する日本郵政キャピタル
日本郵政キャピタルからは、代表取締役社長の足立崇彰氏が登壇した。同社は200億円のファンドを運用し、オールステージでの出資を行っている。これまで約400億円で90社程度に投資している。
「圧倒的な強みを持って世界の課題を解決し、1000億円でも1兆円でも大きく成長する起業家を応援したい」と足立氏は語る。
同社の特徴は、日本郵政グループのリソースを活用したバリューアップ支援だ。事例として、越境ECサービス「SAZO」を紹介。韓国のローカルECサイトのURLを貼り付けると日本語で翻訳され、日本のカードでも買い物ができるサービスで、関税や送料を95%以上の精度で事前算定し、オーバーしても追加請求しないという特徴がある。
また、LINEで完結するECサービスAtouch(アタッチ)を展開している「IRISデータラボ」も支援している。
常時稼働型オープンイノベーションで街づくりを推進する東急
東急からは、フューチャー・デザイン・ラボ主事の満田遼一郎氏が登壇した。同社は鉄道事業に加え、不動産開発、生活サービス、ホテル・リゾートなど幅広い事業を展開している。
「東急アクセラレートプログラムを2015年に業界初で開始し、現在は東急アライアンスプラットフォームという、より協業に特化したオープンイノベーションプログラムを運営している」と満田氏は説明する。
同プログラムの特徴は常時受付を行っていることだ。年1回のアクセラレーターではなく、常に問い合わせ窓口を開き、東急グループの31事業者と随時スタートアップの提案をつなぎ、協業や資本業務提携につなげている。
また、JR東日本スタートアップ、小田急電鉄、西武ホールディングスとの鉄道横断型社会実装コンソーシアム「JTOS」も運営。「鉄道会社の共通の課題やテーマが近いため、4社一緒にスタートアップと取り組むことで、より効率的に社会実装を推進できる」として、生物多様性データの収集などで成果を上げている。
「三つの道」で新規事業を体系化する三井不動産
三井不動産からは、ベンチャー共創事業部主任の田逸平氏が登壇した。同社は2015年からCVC活動を開始し、これまで3つのファンドで約435億円を運用、約70社に出資している。
「2030年に向けた中期経営計画で『三つの道』を掲げている」と田氏は説明する。第1の道はコア事業(不動産アセット)の成長と進化、第2の道は新しいアセットクラス(スポーツエンターテイメント、ライフサイエンス、データセンター)、第3の道は飛び地領域への挑戦だ。
10月には新たに2つのファンドを立ち上げた。
「核融合炉の開発を行っている米国企業への出資も実行した。一見不動産屋と関係なさそうな領域と思われるかもしれないが、出資意義を持って幅広く投資している」として、50年後のまちづくりを見据えた長期的な視点での投資を重視している。

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