SMBC日興証券、相場操縦で一部業務停止命令 買収情報も授受

SMBC日興証券に一部業務停止3カ月 三井住友FGにも改善措置命令 金融庁

相場操縦事件でBO取引業務を停止

金融庁は10月7日、金融商品取引法違反の相場操縦事件で起訴されたSMBC日興証券(東京都千代田区)に対し、関連する業務について3カ月の一部業務停止を命じた。経営責任の明確化などを伴う業務改善命令も出し、親会社の三井フィナンシャルグループ(FG)には監督責任の強化を求める改善措置命令を出した。

日興は上場株式10銘柄の株価を維持するため大量の買い注文を入れるなどの不正取引を行い、幹部ら6人と法人が相場操縦の罪で起訴された。

証券取引等監視委員会は同社の売買審査や業務運営の態勢に不備があったと認定し、「自己の業務推進を優先させ、市場のゲートキーパー(門番)としての自覚に欠けていた」などと指摘していた。

業務停止の対象となったのは、取引時間外に大株主から買い取った株を投資家に転売して差益を得る「ブロックオファー(BO)」取引。相場操縦はBO取引の際、長期にわたり行われた。

三井住友銀行と顧客企業の非公開情報を授受

また、相場操縦とは別に、日興は同じグループ内の三井住友銀行との間で顧客企業の株式売り出しや企業買収、株式公開買い付けに関する非公開情報を複数回授受。いずれも顧客企業の事前承諾は得ていなかった。

これらに対しても、金融庁は銀行・証券ファイアーウォール規制違反と認め、相場操縦と併せて11月7日までに業務改善計画を書面で報告するよう指示。当面の実施状況についても四半期経過後15日以内の書面報告を求めた。

三井住友銀行と三井住友FGにも、発生原因の分析や改善対応策などに関する報告徴求命令を出した。三井住友FGは一連の事件・事案に直接関与していなかったが、行政処分を科すことで日興の監督責任を明らかにした。

SMBC日興の行政処分は4回目

子会社の法令違反で親会社に金融庁の改善措置命令が出たのは初めて。大手証券への業務停止命令も異例だが、市場の公正性を守るべき証券会社による株価操作は悪質と判断された。2009年に三井住友FGの一員となった日興に対する金融庁の行政処分は4回目で、再発防止の徹底を求められながら不祥事を繰り返す事態が続いている。

今回の行政処分を受け、三井住友FGと日興は「事態を厳粛に受け止め、全社を挙げて改善・再発防止に取り組み、お客さまをはじめ関係者の方々からの信頼回復に努めてまいる」と連名でコメント。

金融庁に改善対応策と業務改善計画を提出した際は、いずれも公表するとしている。

文:M&A Online編集部

関連リンク:
SMBC日興証券株式会社及び株式会社三井住友フィナンシャルグループに対する行政処分等について:金融庁
金融庁による行政処分について(1/2): 三井住友フィナンシャルグループ
金融庁による行政処分について(2/2): 三井住友フィナンシャルグループ

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