「リバースピッチ」で大手企業など6社が登壇、スタートアップとの協業チャンスを提案

ストライク<6196>は12月18日、業種・業界・地域の壁を越えたイノベーションの創出を支援する「NEXs Tokyo」(東京・千代田区)でスタートアップと事業会社の提携促進を目的としたイベント「第33回Conference of S venture Lab.」を開いた。今回はリバースピッチ特集として、スタートアップとの連携を目指す6社が協業を呼びかけた。

松竹ベンチャーズ、Z Venture Capital、HIS、ロッテベンチャーズ・ジャパン、積水ハウス イノベーション&コミュニケーション、ヤマトホールディングスが登壇した。会場・オンライン合わせて200名が参加。現地は立ち見が出るほどの盛況だった。

エンタメ領域を超えた投資でイノベーションを加速

映像(映画制作・配給・興行等)、演劇(歌舞伎中心の公演制作・劇場運営等)、不動産(オフィスビルの管理・運営等)の3つの主要事業を展開する松竹<9601>傘下の松竹ベンチャーズからは、取締役 常務執行役員の森川 朋彦氏が登壇した。「新たなIPコンテンツを生み出していくことに非常に興味がある。また最新技術を活用して新たな映像・演劇制作や顧客のデジタル体験作りなども興味があり、主に劇場や映画館などリアルな場所があるため、そちらを活用した取り組みも更に進めていきたい」(森川氏)と語る。

松竹ベンチャーズは2022年7月に設立され、共創事業と投資事業を主軸とし、主にアーリーステージのスタートアップに投資を行っている。ポートフォリオにはエンターテインメント企業だけでなく、宇宙領域や自動運転など幅広い分野の企業が含まれている。アクセラレーター(スタートアップなどの事業を成長させるための支援)プログラムを2年にわたり開催し、これまで15社のパートナー企業を選定し、事業共創を推進している。

「リバースピッチ」で大手企業など6社が登壇、スタートアップとの協業チャンスを提案
松竹ベンチャーズ 取締役 常務執行役員の森川 朋彦氏

注力分野として、新たなIPコンテンツの創出、最新技術を活用したデジタル体験の創造、制作プロセスの改善、新しいエンターテインメント領域の開発を掲げる。「この国の娯楽を進める」というミッションのもと、エンターテインメント業界の発展に貢献することを目指している。

300億円規模のファンドで270社に投資

Z Venture Capitalからは、プリンシパルの湯田 将紀氏が登壇した。

Z Venture CapitalはLINEヤフー<4689>のCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)として活動しており、親会社グループにはヤフージャパン、LINE、PayPay、ZOZO、一休、アスクルなど、多様なインターネットサービス企業が存在する。さらに上位にはソフトバンク<9434>やネイバーといった企業があり、幅広いIT事業を展開している。

「リバースピッチ」で大手企業など6社が登壇、スタートアップとの協業チャンスを提案
Z Venture Capital プリンシパルの湯田 将紀氏

同社は投資リターンを主目的としながら、グループとのシナジー創出も重視している。グループ企業との協業機会の提供や、営業機会の創出、ノウハウの共有など、一般的なVCの提供価値の一歩先を行く支援を行っている。

現在300億円のファンドを運営。約270社への投資実績があり、平均投資額は2億円。投資分野はLINEヤフーの強みが活きるメディア、コマース、フィンテックを中心に、BtoB領域でのSaaSやサイバーセキュリティなども含まれる。協業機会の最大化を目指してオールステージでの投資を実施。出資した料理レシピ動画サービス「クラシル」運営のdelyは2024年12月19日にIPOを果たした。

グループ企業とスタートアップのマッチング機会として「ZVC Connect」というイベントを開催し、協業機会の創出にも注力している。「基本的には投資リターンをまず出すことを目指しているが、将来的にグループとのシナジーが期待できるようなスタートアップを増やしていきたい」(湯田氏)という。

将来的に非旅行事業の収益を半分まで高める

HIS<9603>からは、新規事業統括本部 本部長 海津 誠之氏が登壇した。

「2030年以降に非旅行事業の収益を半分まで高めることを目指している」と海津氏は述べ、その一環で2020年以降、飲食、人材派遣、物販などの新規事業の立ち上げとスタートアップ投資を実施しているという。

「リバースピッチ」で大手企業など6社が登壇、スタートアップとの協業チャンスを提案
HIS 新規事業統括本部 本部長 海津 誠之氏

現在ファンドは組成せず、10数社への出資を実施。観光分野を中心としつつも、成長が期待される幅広い領域に投資を行っている。

投資先企業に対しては、国内外の拠点網、ホテルやテーマパークなどの施設、約200社のグループ会社のネットワークと連携した支援を行っている。

プロ経営者主導で75億円ファンドを運用

ロッテベンチャーズ・ジャパンからは鈴木 一真氏が登壇した。

チョコレート菓子で知られるロッテ傘下のロッテベンチャーズ・ジャパンは、「プロ経営者が投資判断をして、投資後のサポートをするというのが特徴」(鈴木氏)。前ファミリーマート社長でユニクロ副社長経験者(澤田貴司氏)と、ローソン・ユニクロの社長経験者(玉塚元一氏)という二人の経営者が投資判断と投資後のサポートを行っている。

「リバースピッチ」で大手企業など6社が登壇、スタートアップとの協業チャンスを提案
ロッテベンチャーズ・ジャパン 鈴木 一真氏

2022年3月に設立された同社は、75億円の1号ファンドを運用している。基本的な投資対象は日本と韓国の企業で、投資額は1000万円から5億円と幅広い。直近ではシリーズA前後の1億円から3億円規模の投資が中心。これまで2年半で約20社への純投資を実施し、“プロ経営者”の経験を活かし消費者向けサービスへの投資が多い。

ロッテのアセット、日韓でのビジネスネットワークが活用できることも特徴だ。韓国を含めると売上高8兆円規模のロッテグループの遊園地や百貨店などのアセットを活用し、消費者との接点を通じた認知度拡大が可能。日韓のビジネスネットワークを活用し、相互の市場進出支援も行っている。例えば、韓国のギリシャヨーグルト製造企業の日本進出における人材採用や販路拡大支援などを実施している。

人材育成と事業創造の両輪で社会課題に挑む

積水ハウス イノベーション&コミュニケーションからは、プロジェクトマネージャーの橋本 侑樹氏が登壇した。

同社は2024年2月1日に設立された新しい企業。

設立目的は人材価値の向上と新たな事業価値の創造の2つ。「社会課題解決のため、住価値創造のためのデータ利活用、多様なアプローチによる活気に満ちた健康、インクルーシブな社会構築、持続的なつながり、気候変動時代の資源活用と循環、実験的で前向きな学びという6つのキーワードがあり」(橋本氏)、これらを軸に16の領域を定めている。

「リバースピッチ」で大手企業など6社が登壇、スタートアップとの協業チャンスを提案
積水ハウス イノベーション&コミュニケーション プロジェクトマネージャーの橋本 侑樹氏

事業創出の方法としては、オープンイノベーションの拠点である「イノコム・スクエア」でのリバースピッチの開催とCVC投資の2つがある。CVCファンドは2024年4月に設立し、住を基軸とした社会課題の解決に資するスタートアップに主に投資。10年間で50億円規模の運営をしている。ファンドのゼネラルパートナー(GP)には財務会計を担当するAGSコンサルティングが参画し、積水ハウスと同社が連携してスタートアップとのシナジー創出を目指している。

現在までに、京大発ベンチャーのディープテック企業、360度カメラによる施工管理を行う建設テック企業、ドコモの新規事業からスピンアウトした企業、生成AI分野で先進的な取り組みを行う企業、4社への出資を実行している。これらの投資先は全て同社が定める6つのキーワードに合致する領域で事業を展開している企業である。

2号ファンド80億円で環境分野にも本格参入

ヤマトホールディングス<9064>からは、イノベーション推進機能(KURONEKO Innovation Fund)マネージャー 森 憲司氏が登壇した。

同社は豊富な人的資源と施設を持つ企業であり、CVCファンド「KURONEKO Innovation Fund」などの投資業務と新規事業開発を13名体制で担当している。アメリカと北欧へのLP(有限責任組合員)出資などとともにグローバルなスタートアップネットワークを構築している。

「KURONEKO Innovation Fund」は、独立系ベンチャーキャピタルのGlobal Brainをパートナーとし、2020年4月に50億円で設立し、ビジネステクノロジー領域を軸にグローバルなポートフォリオを構築してきた。

2号ファンドは2024年5月に80億円で設立し、投資対象ステージを全ステージに拡大した。また、投資領域に環境分野も加えることで、社会課題への解決や同社事業と親和性が高くシナジーが見込める企業とのオープンイノベーションを推進し、「新たな物流」「新たな価値」の創造を目指している。

「リバースピッチ」で大手企業など6社が登壇、スタートアップとの協業チャンスを提案
ヤマトホールディングス イノベーション推進機能(KURONEKO Innovation Fund)マネージャー森 憲司氏


具体的な連携事例として、東南アジア域内のZ世代向けに展開しているECプラットフォームの国際物流ネットワーク構築支援や、AIテクノロジー企業と連携した空港での多言語案内サービスの実証実験の実施など、事業会社との連携を重視したファンド運営を行っている。「スタートアップの皆さまとヤマトグループで、相互のノウハウを活用した事業連携を考えていきたい。今後も、新しい技術やビジネスモデルを保有するスタートアップの皆さまとの接点を強化するために、国内だけでなくグローバルなネットワークを構築していく」(森氏)スタンスで臨んでいる。

『ダイヤモンドMOOK M&A年鑑2025』を100名様にプレゼント
発売にあたり、2025年2月28日までにご応募いただいた方を対象に抽選で100名様に『ダイヤモンドMOOK M&A年鑑2025』をプレゼント。下記のバナーをクリックすると応募できます。SNSキャンペーンからも応募可能ですので、ぜひ皆様、ご参加ください!

「リバースピッチ」で大手企業など6社が登壇、スタートアップとの協業チャンスを提案
編集部おすすめ