
投資ファンドのアドバンテッジパートナーズ(東京都港区)が出資するAP86が2025年9月24日に、調剤薬局大手の日本調剤の株式の89.12%を新規保有する大量保有報告書(報告義務発生日は2025年9月16日)を提出した。
同日に日本調剤創業者の三津原博氏と共同保有者らが同社株の18.04%を、創業者の長男である三津原庸介氏も同社株21.41%を手放し、保有割合をゼロとする変更報告書(同)を提出した。
日本調剤創業者は保有株を売却
M&A Onlineが大量保有データベースで2025年9月の大量保有報告書などの提出状況を調べた。
日本調剤によると、調剤薬局業界は政府の医療費適正化政策の推進や、薬価・調剤報酬改定による収益構造への影響が見込まれるほか、人口減少や高齢化の進行、電子処方箋やオンライン服薬指導など医療 DX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル技術で生活やビジネスを変革する取り組み)の広がりなどから事業環境の不確実性が高まっているという。
そうした中、持続的な成長を実現するためには、安定した財務基盤の確保や、デジタル化、DX化の推進、優秀な人材の確保、新規事業領域への展開など、従来以上に迅速で柔軟な経営判断や実行力が求められていると判断。
これら施策を実現するためには、同社の事業に関心を持つ複数の候補者を対象に、非公開化を前提とした入札を実施することが望ましいとの方針を決定。
その後2度の入札を経て選定したアドバンテッジパートナーズが、日本調剤に対し、2025年8月1日から同年9月16日までTOB(株式公開買い付け)を実施していた。
このTOB期間中には、野村証券が日本調剤株の5.07%を新規保有(報告義務発生日は2025年8月29日)している。
レノはフジ・メディア・ホールディングス株を買い増し
このほかに9月は、旧村上ファンド系のレノが、元タレントの女性トラブルに端を発した問題で経営が揺らいでいるフジ・メディア・ホールディングスの株式を1.01%買い増し、保有割合を17.33%(旧村上ファンド代表の村上世彰氏の長女の野村絢氏らが共同保有)に引き上げた。
レノは2025年4月にフジ・メディア・ホールディングス株式の5.19%を新規保有したあと、10回買い増しを行っており、今回の保有理由は「投資及び状況に応じて経営陣への助言、重要提案行為等を行うこと」としている。
そのフジ・メディア・ホールディングスは、東映アニメーションの株式を5.03%売却し、保有割合を5.04%に引き下げた。
また、日本郵便が2025年8月に10.02%を取得した、フードロスを削減するためのEC(電子商取引)サイト「kuradashi」を運営するクラダシの株式については、2023年7月に5.89%を新規保有したACTWELL合同会社の保有割合が6.18%に高まった。
京浜急行電鉄は、神奈川県の百貨店である、さいか屋の株式14.26%を売却し保有割合をゼロとした。京浜急行電鉄は2009年1月にさいか屋株式の14.26%を新規保有しており、保有目的を「政策投資」としていた。
2025年9月の大量保有報告などの提出件数は1672件で、このうち保有割合を増やしたのは568件、新規保有は190件、保有割合を減らしたのは818件、契約の変更などは96件だった。
文:M&A Online記者 松本亮一
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