「宝ホールディングス」のM&A戦略に変化の兆し 投資加速の先に見据える次の局面

酒造大手の宝ホールディングス<2531>のM&A戦略に変化の兆しが現れてきた。

現中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)では、M&Aを含む積極投資を進めてきたが、2025年12月19日に公表した統合報告書では「今の課題は、M&Aに伴う統合効果を最大化するため、PMI(M&A後の統合作業)プロセスの加速」と明記した。

M&Aなどにより成長に向けた種まきは一巡し、今後は、これまでに取り込んだ事業の収益力をどこまで高められるかが焦点となりそうだ。

積極投資から「統合・深化」の局面へ

宝ホールディングスは、現中期経営計画を「成長・強化領域への投資を加速させ、企業価値を高める3年間」と位置付け、877億円の投資を計画していた。

この方針の下、適時開示ベースでのM&Aは、2023年5月に発表したカナダの清酒製造会社2241559 Ontarioの子会社化から、2024年11月に発表したドイツの日本食材卸のカーゲラーの子会社化まで、5件に上る。

同社は、和酒・日本食を世界に拡大することをビジネスモデルとして掲げ、子会社の宝酒造インターナショナルグループを中心に、海外企業の買収を積極化してきた。

実際、5件のM&Aのうち4件は海外企業の買収であり、海外展開を軸とした成長戦略が鮮明となっている。

こうした積極的なM&Aの結果、総投資額は997億円と、当初計画を大きく上回る見通しとなった。

同社では、M&Aなどを通じて今後の成長に向けた種まきは一定程度実現したと分析する。

世界的な日本食需要拡大に向けた取り組み自体は変わらないものの、今後は傘下に収めた企業に対する監督機能を強化しつつ、経営支援を通じて統合効果を生み出していく方針だ。

これまでの投資加速局面を経て、宝ホールディングスは積み上げたM&A案件を実益へと変える「刈り取り」のフェーズへ歩みを進めつつある。

「宝ホールディングス」のM&A戦略に変化の兆し 投資加速の先に見据える次の局面
宝ホールディングスが 2023年4月以降に適時開示したM&A

業績予想を下方修正

宝ホールディングスは、創業事業である宝酒造(清酒、焼酎、みりんの製造・販売など)が全社売上高の約31.4%を占める。

M&Aによって事業を拡大してきた宝酒造インターナショナルグループ(酒類の輸出や海外各地での酒類の製造・販売、日本食材の海外販売など)は約48.7%に達し、両事業で全体の80%超を占める。

これに、バイオテクノロジー関連のタカラバイオグループ(医薬品の製法開発から製造までの工程の受託など)の約11.8%、その他(貨物運送事業、ワイン輸入販売、不動産賃貸事業など)の8.1%で構成する。

「宝ホールディングス」のM&A戦略に変化の兆し 投資加速の先に見据える次の局面
宝ホールディングスの売上高構成比

M&Aの影響は業績にも表れている。

2025年3月期は、ドイツのカーゲラーをはじめとするM&Aによる業績の上乗せや、円安の寄与などもあり、売上高は3626億9300万円(前年度比6.9%増)の増収を確保した。

一方、営業利益は人件費の上昇や、M&A関連費用の増加などが響き、205億9700万円(同7.4%減)の減益を余儀なくされた。

2026年3月期については、2025年11月に業績予想を下方修正し、売上高3920億円(同8.1%増)、営業利益は162億円(同21.3%減)を見込む。

M&Aによる売上高の押し上げ効果は見込めるものの、焼酎などの販売減少や、世界的なライフサイエンス研究市場の低迷が続くと想定し、売上高は当初予想から90億円引き下げた。

営業利益については、海外日本食材卸事業での競争激化や、販管費の増加、ライフサイエンス事業の赤字転落などを見込み、57億円引き下げた。

業績予想の下方修正や利益面での圧迫が続く中、今後は新規投資の積み増しよりも、これまでに実行してきたM&Aの成果をいかに収益として定着させられるかに焦点は移る。

M&Aを事業拡大の手段から、収益力を高める手段へとどう進化させられるか。宝ホールディングスのM&A戦略は、新たな局面に差しかかっている。

文:M&A Online記者 松本亮一

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