愛知県・名古屋市・浜松市のスタートアップ・エコシステム形成を目指す「Central Japan Startup Ecosystem Consortium」が主催するグローバルイベント「TechGALA Japan 2026」。DAY3となる1月29日、名古屋市昭和区鶴舞にある、延べ面積23,600㎡の日本最大のオープンイノベーション拠点「STATION Ai」(https://stationai.co.jp/)で、トークセッション「現場の仕事が、M&Aをつくる ― 日々の業務とその延長線上にある、経営戦略としてのM&A」が開かれた。
登壇したのは、株式会社ストライクグループ 代表取締役社長 荒井邦彦氏、株式会社コメ兵ホールディングス 常務取締役 執行役員 山内祐也氏、STATION Ai株式会社 取締役 投資企画室長 尾﨑裕樹氏。スタートアップと地域企業の双方にとって、M&Aを「現場発の成長戦略」としてどう位置づけるかが議論された。
TechGALA JapanとSTATION Aiがつくる「M&Aを語る場」
TechGALA Japanは、名古屋・浜松を中心とする中部地域から世界へ向けて、最先端テクノロジーとビジネスを発信する祭典として企画されている。モビリティやマテリアル、宇宙産業、ライフサイエンスなど、多様な領域のプロフェッショナルが集まり、新たな事業・連携の火種を生み出す場だ。
会場となったSTATION Aiは、愛知県名古屋市にある国内最大級のオープンイノベーション拠点。スタートアップ支援やパートナー企業との共創支援を通じて、日常的にM&Aや資本提携の相談が持ち込まれる。今回のセッションは、そのSTATION Aiを舞台に、成長戦略としてのM&Aについて議論が行われた。
IPO減少・M&A増加――環境変化が迫る“出口”の再設計
セッション冒頭では、東京証券取引所のデータをもとに、国内IPO件数がここ数年減少トレンドにある一方で、M&A件数やTOB・MBOが増加していることが共有された。とくにグロース市場では、時価総額が100億円に満たない上場企業が多数を占める状況が続く。上場維持基準が厳格化されるなかで、かつてのように「上場すれば安泰」という時代ではなくなっている。
この環境下では、スタートアップは出口戦略を、事業会社は成長シナリオを、それぞれ再設計せざるを得ない。スタートアップにとっては、IPO一本足打法ではなく、M&Aによる譲渡・グループイン、マイノリティ株式のセカンダリー、事業譲渡など、複線的な出口オプションを前提にする必要がある。一方、事業会社にとっては、企業価値の向上などを背景に、より高い成長を描くためにM&A戦略を検討する場面が増えている。
セッションでは、そうした潮流を背景に、「では、現場でどのようにM&Aに備えるのか」という論点に議論が移っていった。
荒井邦彦社長が語る「所有より成長」を選ぶM&A
ストライクグループ代表の荒井邦彦氏は、多数のM&Aを仲介する立場から、成長戦略としてM&Aをどう使うかを語り、従来中心だった中小企業の事業承継に加えて、近年は上場企業やスタートアップによる「成長のためのM&A」が増えていると説明した。
特にグロース市場の時価総額100億円未満の企業群では、「経営者はM&Aをすることで企業価値の向上を目指している」流れがあると指摘する。自前のリソースだけでは成長スピードに限界があり、外部の技術・人材・顧客基盤を取り込む必要があるからだ。
一方で、事業会社でもスタートアップでも、「所有にこだわり過ぎて成長機会を逃すケースが多い」と指摘する。M&Aは「会社を手放すかどうか」ではなく、「どこまで自分で握り、どこからパートナーに託すか」を決めるための設計図だという。スタートアップやオーナー企業にとっても、「所有」と「成長」のバランス設計こそが、中長期の経営判断の核心になる。
山内祐也氏が語る オーガニック成長を土台にM&Aを組み込む
コメ兵ホールディングス常務取締役の山内祐也氏は、自社の中期経営計画とM&Aの位置づけを説明した。コメ兵グループは売上2600億円規模を目指す中でM&Aの寄与も見込んでいるが、「年に何回M&Aを実行するかといった定量目標は掲げていない」と語る。基盤となるのは、新規出店や店舗改装など自社の強みを生かしたオーガニック成長であり、M&Aはあくまでその成長を加速させるための手段に過ぎない。そのため、年間件数などの目標設定はあえて行わず、無理にM&Aを検討することがないようにしているとの考えだ。
M&Aは、自力では届かない市場やケイパビリティに対して「土俵をずらす一手」として使う。米ライブコマース企業「iShopShops」への投資もその一例で、既存ECと同じ土俵ではなく、新しいライブコマースの土俵で勝つために、先行するスタートアップと組む道を選んだ。
山内氏は、こうした機会を捉えるには「来た球を打てる受け皿」を平時から整えておくことが重要だと強調する。財務・人材・ガバナンスを準備しておけば、良い案件が現れたときにオーガニック計画の一部をM&Aに置き換え、成長を一段引き上げることが可能になる。
中でも会場の関心を集めたのが、コメ兵ホールディングスによるブランドリユース企業「ブランドオフ」(現:K-ブランドオフ)の再生事例だ。5期連続赤字で債務超過寸前という難しいM&A案件だったと振り返る。
買収後は、約100人体制の組織に対してわずか5名のPMIチームで乗り込み、「会社の看板とコンプライアンスは変えるが、良いものは極力変えない」という方針で改革を進めた。
再生型PMIの考え方を象徴しているのが、「初月黒字」にこだわったことだ。山内氏は「まず1カ月で黒字を出し、『この会社はやればできる』という空気をつくる。その実績が、社内の説得にも、金融機関や社外の目線を変えるうえでも効いた」と語り、“最初の一勝”の重みを強調した。
想定外のトラブルも起きた。買収後に海外拠点で横領が発覚し、取締役会で厳しく問いただされる場面もあったという。それでも山内氏は「M&Aとは本来そういうものだと割り切り、ガバナンスを整えながら事業で取り返すしかない」と語り、リスクを織り込みつつ前に進むスタンスを示した。
尾﨑裕樹氏が語る STATION Aiが描く多様なエグジットの選択肢
尾﨑氏は、STATION Aiが見ているスタートアップの資金調達・エグジットの変化を紹介した。
「IPOまでの道のりが長くなるなかで、プライマリーとセカンダリーを組み合わせたラウンドや、事業会社との資本業務提携を視野に入れたシリーズ調達が増えている」と話す。
事業会社側も、まずベンチャークライアントとして取引・PoC(概念実証。技術やサービスの有効性を小規模に検証する取り組み)を行い、その後CVC投資や資本提携、最終的にはM&Aへと進む“段階的な関係構築”を志向する例が多い。
尾﨑氏は「M&Aをゴールとしてだけではなく、事業提携や出資と並ぶ一つのオプションとして早い段階から視野に入れておくことが、結果的に良い交渉材料にもなる」と述べ、スタートアップにも中堅企業にも“エグジットを前提にした経営”を勧めた。
「現場の仕事」が将来のM&Aを決める
セッションを通じてのメッセージは明快だ。M&Aの場面で評価されるのは、結局のところ日々の現場で積み上げてきた中身だ。たとえば、継続的な顧客との関係性、在庫や生産・販売プロセスがきちんと管理されているか、売上や利益などの数字をすぐに説明できる状態になっているか、といった点である。
荒井氏は「決算の精度や顧客情報の整理など、地味に見える仕事ほど、M&Aの局面では説得力になる」と語る。山内氏も「買収後に黒字化できるかどうかは、現場にどれだけ素直な数字と一次情報が残っているかで決まる」と強調した。
スタートアップにとっても、事業会社にとっても、M&Aは“特別な瞬間のイベント”ではなく、日々の意思決定と現場の積み重ねの延長線上にある。TechGALA名古屋で交わされた議論は、その現実と向き合いながら、成長のためにM&Aをどう使いこなすかを考えるヒントに満ちていた。

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