「東宝」アニメを第4の柱に コンテンツ・IP領域のM&Aに1000億円

映画大手の東宝<9602>は、今後3年間(2026年2月期~2028年2月期)に、コンテンツ・IP(知的財産)領域でM&Aなどに1000億円を投じる。

長期ビジョン2032で掲げた「アニメを成長ドライバーにし、デジタルの力で時間、空間、言語を超え、海外での飛躍的成長を実現する」との目標に沿ったもので、M&Aと合わせて海外拠点の拡充にも取り組む方針だ。

「IP・アニメ事業」部門として独立

東宝はアニメを、映画、演劇、不動産と並ぶ、第4の柱に育成する方針で、2026年2月期から、これまで映画事業に含まれていたIPとアニメ関連ビジネスを取り出し、新たに「IP・アニメ事業」部門として独立させる。

コンテンツ・IP分野では、アニメをはじめ映画や演劇、ゲームなどのコンテンツの企画、製作、IP創出に対し、今後3年間で約700億円を投じるほか、同社が保有する有力IPであるゴジラのコンテンツなどの開発、展開に対し、3年間で約150億円を投じ、ゴジラIPビジネスを本格的に強化する。

こうした取り組みと合わせてコンテンツ・IP領域のM&Aに1000億円を投じることなどで、今後3年間で約200タイトルの良質なエンタテインメントを世界中に提供する計画だ。

同社は過去3年間(2023年2月期~2025年2月期)に8件のM&Aを適時開示しており、映像制作会社やアニメスタジオ、コンサート用舞台装置メーカー、映画のデジタルプロモーション会社、広告プロモーション企画会社、コンテンツ制作会社、米国のアニメ配給会社などを取得した。

今後のコンテンツ・IP領域のM&Aに関しては、アニメスタジオやコンテンツ制作会社などの、すでにIPを保有する企業や、コンテンツを生み出せる企業などが候補となりそうだ。

海外でのコンテンツ・IP運用を内製化

M&Aと合わせて力を入れるのが海外事業で、欧州に新たな拠点を設けるほか、米国やアジアでも拠点を拡充し、ライセンス機能を強化することで、海外でのコンテンツ・IP運用を内製化する。

2025年に子会社化した米国のアニメ配給会社GKIDS(ニューヨーク州)とのシナジーの創出などを進め、現在10%ほどの海外売上高比率を2032年に30%まで引き上げる。

IPビジネスの強化、M&A、海外展開などによって、3年間でIP・アニメ事業の営業利益を2025年2月期に比べ一気に2倍以上に拡大する。

不動産関連事業にも400億円を投入

映画業界は、少子高齢化による人口減少に伴って、市場規模が縮小する懸念に加え、ネットでの視聴が増えることも予想されるため、海外展開をはじめ不動産などの他事業の強化に取り組む傾向が見られる。

東宝はゴジラや名探偵コナン、ドラえもんなどの映画のヒット作品を多く抱えているのが強みで、この強みを維持、増強するために、新たなコンテンツ・IP領域の拡充や海外展開の加速などに取り組む一方で、事業の多角化を狙いに不動産関連事業にも400億円程度を投じる。

同社は帝劇ビル(東京都千代田区)をはじめ、東宝日比谷ビル(東京都千代田区)などのオフィスビルや、シティコート広尾(東京都渋谷区)などのマンションなど、全国に120の不動産物件を保有している。

今後3年間は、帝劇ビルの再開発に取り組むほか既存物件の空室率の抑制とともに賃料アップに注力する。

2025年2月期は売上高3131億7100万円(前年度比10.5%増)、営業利益646億8400万円(同9.2%増)の増収営業増益となったものの、2026年2月期は再開発で帝国劇場が休館となるため演劇事業が大きく落ち込むほか、不動産事業でも前年実績を割り込むことなどから4.2%の減収、11.9%の営業減益を見込む。

M&Aは業績を反転することはできるだろうか。

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文:M&A Online記者 松本亮一

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