
リース大手の東京センチュリー<8439>は、米国子会社のCSI Leasing, Inc.(ミズーリ州)を通じて、航空機地上支援機材の整備やリニューアルなどを手がける米国のAeroservicios USA, Inc.(フロリダ州)を子会社化した。
航空機地上支援機材リース事業に、機器の整備やリニューアル機能を加えることで、今後は、航空機地上支援機材の導入から再販まで一貫したサービスを提供する。
リースから中古販売までをワンストップで提供
Aeroserviciosは、世界の500を超える空港関連企業を顧客とし、機器の整備やリニューアルを中心に、新品や中古品の販売やレンタルなどの事業を展開している。
航空機を牽引する車両や手荷物などを運ぶカートなど、空港で稼働するほぼ全ての航空機地上支援機材を扱っており、顧客のニーズに合わせた柔軟な対応と機器のカスタマイズに強みを持つという。
今後はAeroserviciosが、CSIのリース満了物件の整備やリニューアルなどを担うことで、航空会社などの顧客に対し、航空機地上支援機の販売、レンタル、リース、資産管理、整備、リニューアル、中古販売までをワンストップで提供できるようになる。
東京センチュリーでは、CSIの強みである欧米のネットワークと、東京センチュリーのアジアの顧客基盤を融合させることで「グローバルな事業展開を加速させる」としている。
海外展開や事業多角化で収益を確保
帝国データバンクが2024年8月にまとめた「リース業界の動向と展望」によると、国内リース取扱高は最盛期の半分ほどの水準にある。
2008年にリース会計基準が変更され、ファイナンス・リース(資金調達に近い性質を持つリース)が、オンバランス(リース資産とリース債務を貸借対照表に計上すること。これによって実質的な負債を隠すことができなくなる)化されたのをはじめ、低金利により企業による設備投資資金の調達が容易になったことなどが背景にあるという。
業界団体のリース事業協会の統計によると、リース取扱高は2001年に8兆434億円だったのが2024年は4兆9296億円にまで縮小している。
近年の動きを見ると、コロナ禍前の2019年は前年度⽐6.8%の増加となったものの、2020年から2022年までは3年連続で減少し、その後の2023年、2024年は前年度比プラスで推移している。
こうした情勢を踏まえ、帝国データバンクでは「リース会社各社は海外展開やリース以外の事業多角化などで収益を確保している」としている。
2020年以降に10件のM&Aを適時開示
東京センチュリーの過去のM&Aを見ると、直近では2024年に米国子会社のTC Global Investments Americas LLC(ニューヨーク州)を通じて、NTTデータグループ傘下で米国でデータセンター事業を展開するNTT Global Data Centers CH, LLC(デラウェア州)子会社化した案件がある。
データセンターの集積地であるシカゴで、データセンター事業をNTTデータグループと共同で運営するのが目的だ。
前年の2023年にはマレーシアでIT機器処分サービスを手がけるエクスポートエクセル(クアラルンプール)を子会社化したほか、フィリピンの大手独立系オートリース会社Diamond IGB Inc.(マニラ首都圏)と、子会社化を前提に業務提携するなど、2020年以降に10件のM&Aを適時開示している。
他の大手リース会社もM&Aには積極的で、最大手のオリックス<8591>は2025年5月に、グローバル金融サービスを手がける米国のHilco Trading, LLC(イリノイ州)を子会社すると発表した。
オリックスは、米国でアセットマネジメント事業を拡大しており、資産の価値評価や流動化、資産担保型融資などを手がけるHilco Tradingを傘下に収めることで融資機能を拡充するという。
三菱HCキャピタル<8593>も、2025年2月に岡山県内に物流施設を保有する岡山空港南開発特定目的会社(東京都中央区)の子会社化を発表したほか、芙蓉総合リース<8424>は2025年6月に、中古フォークリフトの販売、レンタルを展開するタイのマテハングループ3社の子会社化を発表した。
リース取引は資金調達に近いファイナンス・リースと、レンタルに近いオペレーティング・リースがあり、オフバランス処理が認められているオペレーティング・リースにもオンバランス化の動きがあり、実施されればファイナンス・リースのオンバランス化と同様に、リース取扱高が減少するなどの影響が考えられる。
海外展開や事業の多角化に向けたM&Aは、今後も重要な事業戦略の一つとなりそうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一
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