「東急不動産」10年目標を5年で達成へ 数値を引き上げ

不動産大手の東急不動産ホールディングス<3289>は、⻑期経営⽅針で2031年3月期の営業利益1500億円以上、当期純利益750億円以上としていた目標を、それぞれ2200億円以上、1200億円以上に引き上げた。

2026年3月期に5年前倒しで目標数値に達する見通しになったためで、今後は「GXビジネスモデルの確⽴」「グローカルビジネスの拡⼤」「広域渋⾕圏戦略の推進」の三つの重点テーマに取り組み、新たな目標の達成を目指す。

仲介事業やホテル事業などが牽引

同社は2021年5⽉に⻑期経営⽅針「GROUP VISION 2030」を策定し、2031年3月期に達成を目指す営業利益と当期純利益の目標を定めていた。

2026年3月期は好調に推移している不動産の仲介事業やホテル事業などが牽引し、売上高が1兆2700億円(前年度比10.4%増)と2ケタの増加となり、これに伴って営業利益は1530億円(同8.7%増)、当期純利益は850億円(同9.6%増)と、ともに目標を上回る見通しとなった。

このため2031年3月期を最終年とする新しい中期経営計画「中期経営計画2030」を策定し、この中で最終年の利益目標を、長期経営方針の当初の計画を大きく上回る数値に上方修正した。

「東急不動産」10年目標を5年で達成へ 数値を引き上げ

模倣が困難なビジネスモデルを確⽴

目標を達成するために今後取り組む重点テーマの一つである「GXビジネスモデルの確⽴」では、同社が再生可能エネルギーを発電するGX(グリーントランスフォーメーション=温室効果ガスを削減し、経済社会システム全体を変革する取り組み)事業者であるとともに、まちの開発などを手がけるデベロッパーでもある特徴を生かし、再⽣可能エネルギーの発電から電力の供給、利用までを一体的に行う、模倣が困難なビジネスモデルを確⽴する。

今後、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を利用せずに、再生可能エネルギーの発電や販売を行うNon-FIT事業を推進し、再生可能エネルギー事業の利益拡大と不動産事業との相乗効果を目指す。

2025年1月には、再生可能エネルギー事業を手がけるリニューアブル・ジャパン<9522>を子会社化しており、リニューアブル・ジャパンが持つ再生可能エネルギー施設の運転、保守、点検サービスや、老朽化した設備の新型設備への入れ替え技術などを活かして事業を加速する。

同社では、今後6年間(2026年3月期~2031年3月期)に、M&Aやスタートアップへの出資などに500億円を投じる計画を持っており、再生可能エネルギー分野でのM&Aや出資などの可能性は高そうだ。

また「グローカルビジネスの拡⼤」は、グローバルで起こる事業環境の変化を捉え、ローカルと共創した新たなビジネスを創出するもので、⽶国でネットワークを拡⼤し、安定した利益を⾒込む⻑期保有事業などを展開するほか、アジアでも各国の有⼒デベロッパーとの共同事業を進める。これら⻑期保有事業や共同事業の推進でもM&Aの出番がありそうだ。

「広域渋⾕圏戦略の推進」では、⾏政や地域社会と連携しながら、産業育成や都市観光、都市基盤構築などを推進し、渋谷の国際的な都市間競争⼒の強化に取り組むことにしている。

売り上げ、利益ともに過去最高を更新

東急不動産の事業は、それぞれ全売上高の30%ほどを占める都市開発事業(オフィスや商業施設の賃貸、住宅の分譲など)、管理運営事業(マンションやビル、ホテル、レジャー施設などの管理)、不動産流通事業(売買仲介や不動産販売など)と、同10%ほどの戦略投資事業(再生可能エネルギー発電施設や物流施設などへの投資)からなる。

2025年3月期は、堅調な不動産売買市場に支えられ、住宅分譲事業や売買仲介事業が好調に推移したほか、インバウンド(訪日観光客)需要を取り込んだホテル事業が好調だった。

この結果、同期の売上高は1兆1503億円(前年度比4.3%増)、営業利益1408億円(同17.1%増)、当期純利益776億円(同13.2%増)と増収増益となり、売り上げ、利益ともに過去最高を更新した。

文:M&A Online記者 松本亮一

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