2025年のM&A戦線は最高潮のうちに1年を終えようとしている。件数・金額は記録を大幅に更新し、M&A史に残る大型買収、破談劇、敵対的案件など話題にも事欠かなかった。
①最多件数を更新、金額は初の20兆円超え
「トランプ関税最多」とともに始まった2025年。国内産業に動揺が広がる中、M&Aへの影響も予想されたが、ふたを開けると、その懸念を払しょくする展開となった。日本企業関連のM&Aは後退するどころか、件数、金額とも過去最高をたたき出したのだ。
年内あと数日を残すが、12月26日時点の件数(上場企業の適時開示ベース)は1342件。前年の年間件数(1221件)を120件以上上回る。国内市場の成熟化や人手不足、DX(デジタルトランスフォーメーション)化といった経営上の課題に対処するため、M&Aの出番が一層増した形だ。
一方、金額は20兆8343億円で、前年の10兆円台からほぼ倍増。豊田自動織機に対するトヨタグループの4兆7000億円規模の買収・非公開化案件が金額を押し上げた結果、初の20兆円超えとなったが、これを含めて金額上位10の案件がすべて4000億円(前年4件)を超えるなど、大型化が際立った。
ここまでの全1342件の内訳をみると、国内M&A1112件、海外M&A230件。国内M&Aだけで1000件の大台に乗せるのは初めて。海外M&Aは3年連続で最多を更新した。
②TOBも空前のラッシュに沸く
空前のラッシュに沸いたといえば、何といってもTOB(株式公開買い付け)だ。
その件数は136件(届け出ベース、12月26日時点)。100件ちょうどだった前年を4割近く上回り、2007年(104件)以来18年ぶりに最多を更新した。2年連続で100件の大台に乗せるのも初めてだ。
TOBのうちMBO(経営陣による買収)も30件に上り、こちらも2011年(21件)を超える14年ぶりの新記録となった。アクティビスト(物言う株主)の存在感が増す中、自主的に上場企業の看板を下ろし、経営の独立性を確保する動きが広がりをみせた。
他方、TOBの不成立も前年4件から9件(うちMBO2件)に倍増し、2021年の8件を上回る最多となった。
TOBの対象企業は東証プライムが55社で最も多く、以下、東証スタンダード52、東証グロース18、地方取引所上場4、東京プロ1、その他6。目的は子会社化81件、MBO30件、親子上場解消14件、純投資・買い増し11件。
買付者が投資ファンドの案件は37件(前年27件)で、全体の4分の1を占めた。
③豊田織機、4.7兆円の巨費で非公開化
2025年最大のM&Aとなったのが豊田自動織機をめぐる一件だ。6月初め、トヨタグループによる4.7兆円規模の買収・非公開化を受け入れると発表した。豊田自動織機といえば、世界トップの自動車メーカーに成長したトヨタ自動車の源流企業(本家)だけに、一般にも大きな注目を集めた。
買収主体はトヨタグループの資産管理会社でもあるトヨタ不動産(非上場)を中心に、トヨタ自動車、同社の豊田章男会長の3者が出資して設立する新会社。
4.7兆円(TOB3.7兆円、トヨタ保有株の自己株取得1兆円)という買収額は国内企業がかかわるM&Aとして歴代2位のスケール。武田薬品工業によるアイルランド製薬大手シャイアーの6.2兆円買収(2018年発表)に次ぐ。
ただ、1株1万6300円のTOB価格に対しては不満がくすぶっている。2025年3月末の1株あたり純資産とほぼ同水準であるため、6月の株主総会でも「価格が低すぎる」とし、その点に質問が集中。
12月にはアクティビスト(物言う株主)として知られる米投資ファンドのエリオット・インベストメント・マネジメントが5%超の豊田織機株を新規保有したことが明らかになっており、この先、波乱含みの展開が予想される。
豊田織機は非公開化によって、トヨタグループ各社との事業連携の深化など、短期的な業績期待にとらわれない中長期的な成長を目指すことが可能になるとしている。
その同社をめぐってはトヨタ株(9.14%保有)をはじめグループの持ち株会社的役割を併せ持つことから、持ち合い株売却による株主還元などを求める海外ファンドの圧力がかねて高まっていた。
④日本製鉄、USスチール買収を成就
日米両国の政治問題に発展した日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収問題。計画発表から1年半を経た6月に、USスチールの普通株式のすべてを約2兆円で取得し、完全子会社化した。「黄金株」が有力な交渉カードとなったことも記憶に新しい。
日鉄がUSスチール買収を発表したのは2023年12月。当初は2024年7~9月期までの買収完了を見込んでいたが、米大統領選の争点の一つになったことで事態が暗転。
その際、切り札となったのが経営上の重要事項に拒否権を持つ特殊な株式「黄金株」。日鉄はUSスチールが発行する黄金株を米政府に付与した。これにより、米政府の影響力を保持できる仕組みとしたのだ。
日鉄はかつて粗鋼生産で世界トップに立っていたが、国内需要の減少や中国企業の台頭などで順位を下げ、現在4位。USスチール買収を足がかりに、首位への返り咲きへの道筋をつけたい考えだ。日鉄はインドでも鉄鋼一貫生産体制の構築に動いている。
⑤ホンダ・日産、1カ月半でスピード破談
ホンダと日産自動車の経営統合がとん挫した。実現すれば、世界第3位の自動車グループが誕生する見通しだったが、協議開始から1カ月半余りであえなく白紙に戻った。
ホンダと日産は2月半ば、経営統合の協議を打ち切ったと発表した。業績不振に陥っている日産の事業再生(ターンアラウンド)計画の進展や統合方式などをめぐって両社の意見の隔たりが大きく、溝が埋まらなかったのが主因だ。
両社が統合への協議開始で合意したのは2024年12月下旬。2026年8月に設立を目指すとした共同持ち株会社のトップと取締役の過半数はホンダが指名することが前提で、ホンダ主導が鮮明になっていた。その後、ホンダが日産を子会社化する案が浮上し、「対等の関係」を主張する日産が強く反発した経緯がある。
ただ、日産は単独成長が難しい状況にあるのが実情。2025年3月期は6708億円の最終赤字(前の期は4266億円の黒字)で、稼ぎ頭の北米や中国での販売不振が響き、業績が急降下した。国内外で7工場の閉鎖と2万人規模の削減を柱とするリストラ策を進めている最中だ。
現在、国内乗用車メーカーは8社ある。トヨタ自動車はダイハツ工業を子会社とし、スズキ、SUBARU、マツダとは資本関係を持ち、「トヨタ連合」を形成。日産ではフランス自動車大手ルノーが大株主として名を連ね、三菱自動車は日産を筆頭株主とする。
こうした中、唯一、資本面での独立を守ってきたのがホンダだが、戦略をどう練り直すことになるのか。
◎2025年M&A10大ニュース:M&A Online独自選定
1最多件数を更新、金額は初の20兆円超え 2 TOBも空前のラッシュに沸く 3 豊田自動織機、4.7兆円で非公開化へ(6月) 4 日本製鉄、USスチール買収を成就(6月) 5 ホンダ・日産、1カ月半でスピード破談(2月) 6 セブン&アイHD、カナダ社が買収提案を撤回(7月) 7 ドラッグストア再編、ウエルシア・ツルハ連合が始動(12月) 8 アクティビストが猛威を振るう 9 “M&A巧者”ニデック、連勝ストップ(5月) 10 東証、MBOルールを厳格化(7月) ※「2025年のM&A10大ニュースはこれだ!」㊦に続きます。文:M&A Online
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