デザイン雑貨の「トランザクション」M&A戦略を本格化 10年ぶりの実現となるか

販促商材やキャラクターグッズなどのデザイン雑貨を手がけるトランザクション<7818>が、M&A戦略を本格化させる。

今後5年間(2026年8月期~2030年8月期)で40億円を投じ、製造、物流、EC(電子商取引)、IP(知的財産)などの事業を強化する計画だ。

早期に実現すれば2015年に旅行用品の製造、卸のゴーウェルを子会社化して以来、10年ぶりとなる。

IP関連の企業などを対象に

同社では今後のM&Aで「新規カテゴリーの拡充」や、「既存事業基盤(製造、物流、販路)の充実と内製化」、さらに「バリューチェーン(価値を生み出すプロセス全体)の深化による付加価値の獲得」の三つを重点目標に掲げる。

新規カテゴリーでは、気候変動や災害対策などに関わる商品の生産をはじめ、企画、設計、販路などで新しい技術やノウハウを持つ企業を対象とする。

既存事業基盤では、海外を含め設備増強につながる企業や越境ビジネス、先進技術などに関わる企業を、バリューチェーンではキャラクター、デザインなどのIP関連の企業、直営店舗や自社物流などの事業でシナジーが見込める企業などを探索する。

同社は2023年8月期~2025年8月期の経営計画でも投資枠30億円を設けていたが、具体的なM&A戦略は示していなかった。

今回、対象領域などを明確したことで、今後5年間はM&Aを成長の中核に据える姿勢が鮮明になったといえる。

独自のビジネスモデルを構築

トランザクションは、1987年に東京都内で雑貨類の企画や製造、販売を手がけるトランス(現 トランザクション)を設立したのが始まり。

現在は、顧客企業の商品に関する企画からデザイン、製造、販売、マーケティング・セールスプロモーションに至るまで一貫したサービスを展開する。

エンタメ、出版、食品、飲料、自動車、化粧品などの企業や、コンビニ、スーパー、量販店、ドラッグストア、専門店などの小売店向けに、顧客の顕在・潜在ニーズを発掘、創造し、商品化するなど、他にはない独自のビジネスモデルを構築している。

これまでにバッグやTシャツ、タオル、タンブラー、ペット用品、トラベル用品、アクリル・缶バッジなどの幅広い販促商材やキャラクターグッズなどを手がけてきた。

創業時から蓄積してきた顧客の膨大な購買データを保有しており、これを活用したマーケティング力や企画開発力が最大の強みだ。

デザイン雑貨の「トランザクション」M&A戦略を本格化 10年ぶりの実現となるか
トランザクションの商品分類別売上

このほかにも、幅広い業種の顧客を持つ「営業力」、モノづくりのすべての工程をグループ会社や提携工場で完結させる「モノづくりプラットフォーム構築力」、イベントやライブ、セールスプロモーションなど幅広い用途に対応する「販売経路構築力」、そしてメーカーと商社の機能を併せ持つ「グループ経営力」を合わせた五つを自社の強みとしている。

現在の市場規模は約1兆円

同社は、現在注力している販促商材やキャラクタービジネス、ライブエンタメ物販などに関連する市場の規模は約1兆円と見る。

さらに今後、開拓する予定のアメニティや事務用品分野などを含めた市場の規模は2兆5000億円に達すると推計しており、これらの市場での同社の競争優位性は非常に高いと分析する。

2025年8月期は売上高274億5300万円(前年度比9.6%増)、営業利益57億600万円(同9.0%)と増収営業増益を達成。

2030年8月期には売上高450億円(2025年8月期比64%増)、営業利益95億円(同66%増)を目指すとしている。

M&Aに関しては、同社の沿革によるとゴーウェルの子会社化のほかには実績がない。

ゴーウェルは当時、オリジナルの旅行用品を大手小売や卸売企業向けに提供するほか、OEM(相手先ブランドによる生産)による商品の提供も手がけており、新製品の共同開発や仕入れ調達力の強化などで相乗効果が期待できることからM&Aに踏み切った。

これに次ぐM&Aが迫っているとみてよさそうだ。

デザイン雑貨の「トランザクション」M&A戦略を本格化 10年ぶりの実現となるか
トランザクションの業績推移

文:M&A Online記者 松本亮一

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