コンビニからシェア奪取 小売り大手の「トライアル」傘下に収めた西友を活用 

小売り大手のトライアルホールディングス<141A>は、2025年7月に子会社化したスーパー運営の西友の店舗や製造拠点などを活用して、コンビニからのシェア奪取に取り組む。

都心部に多い西友の店舗などから、小型店舗のTRIAL GOに高頻度で商品を供給することで、コンビニと戦える体制を整える。

都市型狭小物件への出店を推進

西友は、関東圏の駅前好立地を中心に店舗展開しており、郊外型店舗を中心とするトライアル店舗と立地にほぼ重複はなく、トライアルが持っていない都市型ビジネスのノウハウを豊富に保有する。

2025年9月末時点の店舗数は西友が244店、トライアルの主力である食品と非食品を取りそろえたワンストップショッピングを提供する郊外型のスーパーセンターが213店、大商圏を対象にしたメガセンターが28店、都市部の小商圏を対象にしたsmartが70店、同じく都市部の小商圏を対象にしたTRIAL GOが47店で、合計は602店となる。

西友のグループ化とスーパーセンターの出店で、2025年6月末の352店から一気に250店増加した。

さらに西友はセントラルキッチン(複数店舗向けの料理を一括調理する施設)5カ所、プロセスセンター(肉や魚、野菜などの下処理やパック詰めなどを行う施設)3カ所、物流センター8カ所を保有しており、トライアルが保有するセントラルキッチンなどの施設(55カ所)と合わせ、こうした施設は71カ所になった。

一方、TRIAL GOは既存店舗からの高頻度配送を前提としたサテライト型の小型店舗で、売り場監視システムや需要予測、自動発注、顔認証セルフレジなどを導入し、流通とリテールテック(小売業が抱える課題を解決するために先端技術を活用する取り組み)を融合させた店舗を目指している。

西友の子会社化を機に、西友の店舗や製造拠点を母店として手活用し、これら母店の周辺にTRIAL GOを出店することにした。

母店から頻繁に商品を配送することで、バックヤードを持たない、売り場面積を最大化した店舗の出店や、出店コストの低減、さらに新鮮な生鮮や総菜の提供などが可能になる。

同社では「コンビニ市場からシェアを奪取すべく、都市型狭小物件への出店を推進する」としている。

売上高が1兆円を突破

トライアルは1974年に福岡市で開業した古物商、リサイクルショップのあさひ屋が前身。M&Aについては2003年にフランチャイズ店舗の運営会社であるナカヤを子会社化したのを手始めに、これまでに10件ほどのM&Aを実施している。

近年では西友の子会社化前の2024年に、東急不動産(東京都渋⾕区)からゴルフ場運営会社2社を買収するなど、小売業の拡大とともにリゾート事業の規模拡⼤にも力を入れてきた。

2025年9月30日に公表した「事業計画及び成長可能性に関する事項」では、「事業規模や出店地域の拡大、事業の多角化のための手法の一つとして、M&Aなどを含む投融資活動を実施する可能性がある」としている。

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同社によると、野菜や米穀類などの食品をはじめ、ナショナルブランド商品の価格上昇などにより、消費者の生活防衛意識が加速度的に高まっているという。

そうした状況の中、食品と非食品を取りそろえたワンストップショッピングの提供や、メーカーや卸との強固な関係による幅広い品ぞろえ、店舗設計や物流の内製化による効率的な運営などのトライアルが持つ強みを活かして、2025年6月期は売上高8038億2900万円(前年度比12.0%増)、営業利益211億600万円(同10.2%増)と2ケタの増収営業増益を達成した。

さらに2026年6月期は西友が加わることで、売上高1兆3225億円(同64.5%増)、営業利益254億円(同20.3%増)と、売上高が1兆円を突破するなど大幅な増収営業増益を見込んでいる。

コンビニからシェア奪取 小売り大手の「トライアル」傘下に収めた西友を活用 
トライアルホールディングスの業績推移

文:M&A Online記者 松本亮一

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