動物病院運営の「WOLVES HAND」関東、関西、九州・沖縄で事業承継に注力

動物病院運営のWOLVES HAND<194A>は、関東、関西、九州・沖縄で事業承継を中心とした動物病院の増設に力を入れる。

動物病院のグループ化によって事業を拡大し、動物病院業界の発展に寄与するのが目的で、これら地域でM&Aを活用し時間を短縮することで、できるだけ早い時期に全国展開に乗り出す。

事業承継対象は幅広く、海外も検討

動物病院は全国に1万3000ほどあり、このうち8割ほどは獣医師が2人以下の個人経営の小規模な施設。これら施設の獣医師の平均年齢は56歳を超えており、潜在的な事業承継ニーズは大きいと判断した。

M&Aの対象は、1次診療(基本的な治療を行うかかりつけ診療)、2次診療(高度な専門的治療)、1.5次診療(1次と2次の両方の診療)、エキゾチックアニマル(犬や猫以外のペット)、夜間動物病院など幅広く、日本国内に限らず海外の動物病院も候補にする。

直近では2024年8月に、動物病院のそよかぜ(さいたま市)を子会社化したあと、2025年1月に安田動物病院(兵庫県西宮市、現 甲子園動物病院)の事業を譲り受け、同年2月には動物病院のバハティー(滋賀県守山市)を子会社化している。

動物病院運営の「WOLVES HAND」関東、関西、九州・沖縄で事業承継に注力
WOLVES HANDの主なM&A

強みは一社完結型の診療体制

WOLVES HANDは2000年に大阪市内で開業した、きたい動物病院が前身。2018年に動物病院のグループ化を推進していたJVCC株式会社(JVCC)と、JVCCに出資するファンドを運営するJ-STARと共同で、動物病院のグループ化を進めることを決定。

2019年にJ-STARが組成する投資ファンドが、WOLVES Hand (現 WOLVES HAND) を設立し、経営統合やM&Aを進めていった。

現在は売上高の90%弱を占める動物病院の運営をはじめ、ペットサロンの運営、動物病院向けソフトウエアの提供、 獣医療教育セミナーの配信、医療用機械器具の製造、販売などを手がけている。

WOLVES HANDによると、動物病院の市場規模は5000億円ほどで、ゆるやかに拡大している。

一方でペット数は減少しており、手厚い治療が行われることで、ペット1頭当たりの医療費は増加傾向にあるという。

WOLVES HANDの強みは、かかりつけ診療から高度専門診療まで幅広く対応している点で、同社では「一社完結型の動物病院は業界では少数派」としている。

上場後3期連続の増収営業増益に

業績は好調に推移しており、2025年6月期は既存病院の増収に加え、傘下に収めたそよかぜ、バハティーが寄与し、売上高は54億6300万円(前年度比9.5%増)と2ケタに近い増収を達成。

営業利益についても、M&A関連費用や上場に伴う費用などが発生したものの、増収効果で吸収し9億900万円(同9.9%増)とこちらも2ケタに迫る営業増益となった。

2026年6月期は、関東、関西、 九州・沖縄でのドミナント展開(特定の地域に集中的に拠点を設ける戦略)などで、5.3%の増収、9.5%の営業増益と、2024年6月20日の上場後、3期連続の増収営業増益を目指す。

動物病院運営の「WOLVES HAND」関東、関西、九州・沖縄で事業承継に注力
WOLVES HAND売上・利益の推移

業界にM&Aの動きも

動物病院の事業承継については、ペット保険最大手のアニコム ホールディングス<8715>が積極化しており、自社で動物病院を運営することで、グループのスケールメリットを活かし、動物病院事業を拡大する方針を打ち出している。

船井総研ホールディングス<9757>の子会社の船井総合研究所は、ホームページで「動物病院業界時流予想レポート2025」を公開しており、それによると、動物病院業界には競争の激化や獣医師不足、M&Aの増加などの動きが見られるという。

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文:M&A Online記者 松本亮一

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