猫好きな文学者『サミュエル・ジョンソン』の偉大な仕事を支え、大好物の牡蠣とともに銅像になった猫 英国
牡蠣の殻の臭いをかぐ猫

牡蠣が大好きだった猫

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英国人サミュエル・ジョンソン(1709-84年)は18世紀の偉大な文学者で、辞書の編さんを行ったことでも有名です。彼はまた「大の猫好き」でもありました。

彼の愛猫Hodgeは牡蠣が大好物だったといいます。

当時は牡蠣は贅沢品ではなく、安価で栄養のある食品とみなされていました。

ジョンソンはみずから猫のために魚市場へ出かけて牡蠣をたくさん買ってきたそうです。というのも、召使いに頼むと「猫を甘やかしている」と思われて、Hodgeがいじめられることを心配したからです。

ジョンソンの友人であり伝記作家でもあったジェームズ・ボズウェル(1740-95年)は、こう記しています。

「彼は猫を溺愛していました。ある日わたしが『Hodgeはすばらしい猫だね』というと、ジョンソンは『まさにその通り。でも前に飼っていた猫はもっとすばらしかったよ』と答えたのです。するとそばにいたHodgeが不機嫌になったので、あわてて『いずれにしてもHodgeは立派な猫だよ。本当にすばらしい』と付け加えました」

そういうわけで、のちにジョンソンの家の前にHodgeの銅像が建てられたとき、その言葉「But he is a very fine cat; a very fine cat indeed」がそのまま碑文になったのです。

後世の人々が猫の銅像を設置

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Hodgeの銅像

Hodgeの銅像(Wirestock - stock.adobe.com)

ジョンソンはロンドンのゴフ・スクエアにある家に11年間住みました。辞書の編さん作業は、ほとんどそこで行われたといいます。家の敷地は非常に狭く、余分なスペースはありません。

そこで彼の死後、偉大な業績を残したジョンソン自身の像ではなく、愛猫Hodgeの小さな像が家の前に置かれることになったのです。

銅像の猫は辞書と思われる大きな本の上に座っていて、そばには牡蠣の殻もいくつか散りばめられています。

この銅像を制作したのは彫刻家のJon Bickleyでした。彼は制作にあたり、Hodgeに似た自分の愛猫Thomas Henryをモデルにしました。除幕式は1997年9月に行われ、当時のロンドン市長も出席したといいます。

Hodgeがジョンソンに飼われ始めた時期は不明ですが、1760年代後半にこの猫について言及された文献があります。どうもこの猫は黒猫だったようです。

名前のHodgeは「Roger」の変形で、イギリスの田舎で多い名でした。当時ジョンソンは何度も地方へ旅行していたので、その際に子猫を連れ帰ってきたのかもしれません。

Hodgeが亡くなる直前「穏やかな気分になれるように」と、彼はわざわざハーブの一種であるバレリアン(セイヨウカノコソウ)を買ってきて枕元に置いてあげました。バレリアンはキャットニップに似た植物で、猫が好むものだからです。

200年後、同じ場所に黒猫が迎えられる

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こちらを見つめる黒猫

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ジョンソンが飼っていたほかの猫についてはほとんど知られていません。でも妻と暮らしたロンドンで数匹の猫を飼っていたことはわかっています。

1752年に妻が若くして亡くなったあと、勤勉な学者として孤独に暮らす彼を慰めたのは、こうした猫たちに違いありません。

1783年の手紙で、彼はLilyという名の子猫について「すっかり成長し、とても行儀がよい白猫だ」と書いています。

214年後の1997年9月、博物館となった彼の家に、いたずら好きな黒猫が迎えられました。保護施設Battersea Dogs and Cats Homeからやって来た猫で、当時5歳くらいでした。名前はジョンソンの飼っていた猫にちなんで、Lilyといいます。

Natasha McEnroe学芸員によると、2代目Lilyは2011年時点ではまだ生きていて、晩年は学芸員の住居で日光浴をしながら、静かに過ごしていたということです。

出典:Purr 'n' Fur「Hodge」

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