
1.ノミ・ダニを飼い主さんが持ち帰ってしまう
1つ目の理由は、飼い主さんが知らずにノミやダニを持ち帰ってしまうことです。
ノミやダニは非常に小さな生き物のため、飼い主さんの外出時、服や靴などに気づかないうちに付着している場合があります。怖いのは、そのまま帰宅して、思わぬ形でノミやダニが愛猫に広がっていくことです。
ノミに寄生されると、「ノミアレルギー」をはじめ、「瓜実条虫症(うりざねじょうちゅうしょう)」や「猫ヘモバルトネラ症」などの病気を引き起こす可能性があります。
特に、「瓜実条虫症」は、寄生虫を持ったノミが口に入ると、人間にも感染するので注意が必要です(人獣共通感染症)。帰宅時は、身につけた服や靴を払い落とし、手洗い・消毒する習慣を心がけましょう。
そしてダニの場合極めて危険なのが、マダニです。
昨今、話題にもなっているように、マダニは「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」を媒介する存在で、万が一感染すると、猫では致死率が約60%、人間では約10~30%と言われています。主な症状は、食欲不振、下痢・嘔吐、黄疸などです。
マダニは、森林や公園、河川敷、草むら、畑、庭先など、私たちのごく身近な場所にいます。
もしみなさんがマダニのいそうな場所に出かけるときは、愛猫の感染症リスクを避ける意味でも、マダニ忌避用の虫よけスプレーの使用、長袖・長ズボンの着用などの十分な対策を実践してみてください。
2. おうちにいても「フィラリア症」のリスクがある

2つ目の理由は、蚊の侵入です。
たとえば、飼い主さんが洗濯物を取り込むため、網戸を開けた瞬間、蚊は待ち構えたかのように室内へと入ってきます。
蚊が媒介する感染症としては、「フィラリア症」があります。
犬と違って、猫の場合では、フィラリアが体内に入っても、成虫になる前に死滅することが多く、犬で見られるような具体的な症状が出ることはほとんどありません。
ただ、成長過程で死んだフィラリア虫体が肺動脈に詰まり、「犬糸状虫随伴性呼吸器疾患(HARD)」が発生した結果、ごくまれに突然死することもあるので、楽観視は禁物です。
ちなみに、「フィラリア症」をもたらす蚊には、ヒトスジシマカやアカイエカ、チカイエカなどがいます。どれも私たちの生活になじみのある種類です。
おうちから一歩も出ない室内猫であっても、蚊による感染症の危険性は絶えずつきまといます。「フィラリア症」対策には、動物病院などで投与される駆虫剤が効果的です。
3.多頭飼育では一気に感染拡大する危険性も

これまで述べてきた2つの問題(ノミ・ダニ、蚊による感染症)が発生した場合、最も強く影響を受けるのが、多頭飼いのおうちです。
仮に、飼い主さんがキャンプを楽しんだ後、気づかずにマダニを持ち帰ったとします。服についたマダニが愛猫を吸血した後、同じように他の同居猫たちの血も吸うと、「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」が、おうちのなかで一気に拡大する可能性があります。
「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」は、マダニに直接咬まれるほかに、感染した猫の血液や体液、排泄物などでも感染すると言われています。人獣共通感染症であるため、飼い主さんにとっても命に関わる状況です。
いったん愛猫が感染すると、ドミノ倒し的に他の猫たちも病に倒れ、平穏で楽しい暮らしがあっという間に崩壊してしまう恐れもあります。
最後に、改めて強調しておきたいことですが、マダニを含めた感染症予防には、年間を通じた駆虫剤投与が重要な役割を果たします。愛猫の健康と安全を守るためにも、飼い主さんは忘れずに対応するように努めてみてください。
まとめ

「寄生虫予防」は、愛猫の命を預かる飼い主さんにとっては大切なプロセスです。
今回は、室内猫に「寄生虫予防」が必要な理由として、「飼い主さんによるノミ・ダニの持ち帰り」、「蚊が媒介するフィラリア症の危険性」、「多頭飼いでの感染拡大」を挙げました。
定期的なノミ・ダニの駆虫剤の投与はもちろん、日常的な手洗い消毒、マダニの生息場所に入る際の虫よけスプレー、長袖、長ズボンの着用など、飼い主さんは「寄生虫予防」を日頃から意識的に心がけてみてください。
愛猫の健康と安全を守るのは、飼い主さんの重要な役割です。共に末永く快適に暮らせるように、「寄生虫予防」としっかり向き合うようにしましょう。