米軍キャンプに現れた野良猫
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米陸軍の二等軍曹Jesse Knottさんは2010年6月、アフガニスタン南部マイワンド地区のフタルにあるキャンプに派遣されました。そこで若い野良猫に出会ったのです。
どうもこの猫は人間から虐待を受けていたようで、毛皮にペンキが付いていたり、背中の毛が剃られて皮膚に切り傷ができていることがありました。
兵士はペットを飼うことを許されていませんが、今回の派遣は歩兵任務ではなく基地勤務だったので、彼には小さなオフィスが割り当てられていました。JesseさんはKoshkaをここにひっそりと住まわせたのです。幸いにも軍当局も黙認してくれました。
彼にとって、すぐにこの猫は故郷オレゴンシティでの普通の生活を思い出させてくれる大事な存在になりました。
「いろいろあって自信を失ってしまうこともありますが、猫とふれあうことで立ち直れることもあるんだとわかりました」というJesseさんです。
打ちのめされた心を支えた猫
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彼とKoshkaの絆がさらに強くなったのは、2010年12月に自爆テロでJesseさんの小隊メンバー2人が亡くなり、他にも負傷者が出たときでした。
「希望や信念を失い、打ちのめされました。仲間が暴力的に殺されたのですから」
オフィスで泣いていた彼の膝の上に、Koshkaが乗ってきました。
「目を見つめ、前足をぼくの唇に押し当ててから膝の上で丸くなり、じっと悲しみを分かち合ってくれました。この猫はぼくに『君は君だ。大丈夫だよ』と伝えてくれたんです」
その瞬間、彼はこの大切な猫をアフガニスタンの戦場から救い出すことを決意しました。
危険を冒して、カブールの施設へ猫を輸送
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何度も電話やメールでやり取りした後、彼はついにKoshkaを引き取って米国へ輸送してくれるという「Afghan Stray Animals League(アフガン野良動物連盟)」(略称ASAL)を見つけることができました。
でもその前に首都カブールにある保護施設へ猫を運ばなければなりません。軍の護送車に乗せることは到底無理でした。あと1週間で任務が終了するJesseさんは、非常にあせりました。
しかし幸いなことに、地元の通訳の男性が家族を訪ねるために休暇を取って、カブールまで猫を運んでくれることになったのです。もしタリバンが米軍に協力したこのアフガニスタン人を検問所で捕まえてしまったら、猫も彼も殺されてしまうでしょう。
「通訳の彼にとって相当危険なことでした。本当に勇敢な人です。猫は鮮やかな紫色のハーネスを着け、米国製のキャリーバッグに入っていて、目立つ存在でしたからね」と振り返るJesseさんです。
長い旅路を経て、米国の家族の元へ
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数日後にKoshkaはカブールに到着し、さらに1ヵ月後に米国へ輸送されました。
2013年2月、JesseさんとKoshkaにオレゴン動物愛護協会から「ダイヤモンドカラー・ヒーロー賞」が贈られました。この賞はペットと人のすばらしい功績を表彰するもので、その「無私無欲と勇気」が評価されました。このときJesseさんは「わたしたちが動物を救うこともありますが、逆に動物が私たちを救ってくれることもあるのです」とコメントしています。
さらに2013年11月、KoshkaはASPCA(米国動物虐待防止協会)のキャット・オブ・ザ・イヤー賞を受賞しました。同年末、Jesseさんは8年間の兵役を終えて米軍を退役しました。その当時、彼は「今後は介助犬の訓練士をめざします」と語っていました。