TVアニメ『メダリスト』結束いのり役・春瀬なつみ&明浦路 司役・大塚剛央対談インタビュー
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 第2期制作が決定したTVアニメ『メダリスト』。まだ熱冷めやまぬ本作より、結束いのり役・春瀬なつみさんと明浦路 司役・大塚剛央さんの対談インタビューをお届けします。



※本インタビューは第1期放送期間中の3月10日発売PASH!2025年4月号に掲載したものです。



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 氷上を駆ける少女・いのりと、彼女をコーチとして導く司、ふたりの思いが重なる熱く美しいストーリーが多くの人々を虜にし、毎話大きな話題を呼んだ『メダリスト』。第2期放送が待ち遠しい本作の魅力を、インタビューを通して振り返りましょう!



春瀬「実際にいのりちゃんを演じることになったときには、とてつもないプレッシャーを感じました」


――原作マンガ『メダリスト』に対するおふたりの第一印象をお教えください。



春瀬 私は元々フィギュアスケートが大好きなので、連載が始まる前から楽しみにしていました。フィギュアスケートが題材のマンガってシニアで活躍している状態とか、大人だけどすぐにジャンプが跳べちゃった、みたいな展開が多いんですよ。



 でも、『メダリスト』は子供が一からコツコツと積み上げていく地道なドラマが描かれていて、とても驚いたことを覚えています。つるま(いかだ)先生がめちゃくちゃ取材をされているからこそ、こちらが教えていただく場面もあって、その描き込みの細やかさには驚かされましたね。



大塚 僕は冬季オリンピックがあるときはテレビで観る、くらいのライトな知識しかなかったんですよ。なので、オーディションの際に『メダリスト』のことを知っても、フィギュアスケートを知らない僕は楽しめるのかな?と思ったくらいで。



 ただ、実際に読みはじめてみると、何よりもキャラクターの人生が濃密に描かれていて、これは純粋に面白い!とすぐに引き込まれてしまいました。



――春瀬さんは原作マンガのCMでナレーションを務められていましたし、大塚さんは本作のオーディション時に読まれたということは、おふたりとも初読時からいのりや司に感情移入されていたのでしょうか?



春瀬 私はもう完全にいのりちゃんに感情移入をしていました。でも、それは実際に演じるとなったときにはかなりプレッシャーで……。いのりちゃんがものすごい女の子になっていく過程を身に沁みるほど実感しているので、どうやって演じようか頭の中でぐるぐるぐるぐる考えすぎちゃったんですよ。



 音響監督さんからも「もう少し肩の力を抜いて」とアドバイスいただくほどで、そこからどんどん調整をして、今のいのりちゃんの芝居にしていきました。



大塚 僕は司目線というよりも、彼を演じるのであればどうするか、周囲の反応含め分析しながら読んでいましたね。なんでこの言葉が司から出るんだろう、とふと思ったら、彼だけではなく他のキャラクターのセリフまで遡って理由を突き止めていくんです。なので、シンプルに感情移入したとは言い切れないかも。



 オーディションでは司以外に夜鷹 純も受けさせていただけたんですが、ふたりともアニメで描けない先の物語まで読んだ上で作り込んでいったんですよ。ただただ情熱的になるだけじゃない、過去に複雑な事情を抱えている青年。司役に決まってからも、その印象を意識して演じていくことにしていました。



――本作の収録を進めるなかで、おふたりはどのように役作りをされていきましたか?



春瀬 まず、いのりちゃんはスケートへの愛を絶対に無くさない子なので、どれだけ迷ってもそこは欠かさないようにしようと思いました。



 あと、いのりちゃんはマイナスな感情でも武器にして、冷静に分析できる性格です。浮かれるときもあるけれど、すぐ冷静になって今自分がやるべきことを見据える。そんなポイントは彼女の内面が少し大人に感じられるよう演じました。



大塚 司はアウトプットがとにかく大きい人なので、メリハリを付けながら演じることを意識しました。

例えば第1話の後半のようにいのりの言葉で突き動かされていくところと、持ち前の明るさを発揮しているところ、どちらも大声は出していますけどその差異を付けなくてはいけません。



 加えて、司=ポジティブだと思われている視聴者も多いかと思いますが、彼自身は自己肯定感がとても低いんですよね。そんな彼が自分の胸の内に秘めていた過去を踏まえつつ、この先の物語に繋がるように丁寧に台本から情報を拾い集めて演じていきました。



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掛け合いをしたからこそ生まれたその瞬間


――第10話までで、本作における渾身の演技を挙げるとすると……?



大塚 選べない……! この作品に限ったことではないんですが、このシーンだけに力を込める、なんてことはしていなくて。印象的なシーンがあっても、それは積み重ねのうえでそこが印象的に見えているわけですからね。



 でも、個人的に苦労した記憶があるのは、第1話のいのりさんとの出会いのシーンです。最初は子供に寄り添う姿勢を見せすぎたなと反省していて……。ルールを破ってスケートリンクに入っていたいのりさんにスケートをやっていた司だからこその厳しさを出してほしいと、音響監督さんからディレクションを受けたんですよね。



 そこからは「ダメだよ」というセリフのイントネーションを上げていた状態から下げてみて、大人としてのちゃんとした対応に聞こえるように調整しました。ここは先の展開を知っていたからこそ、どういう風にいのりさんに目線を合わすのか苦労したポイントだった気がしますね。



春瀬 私も選ぶのが難しいのですが、しいてあげるとするなら第8話のスケート靴を司先生が取りに行ってくれているなか、ひとりでウォーミングアップをしにいくシーンの収録をとても覚えています。



 いのりは子供なりに、司先生が人生を懸けて自分を金メダルに導こうとしてくれていることを感じとっているんです。

今も自分のために司先生がスケート靴を取りに行ってくれている。誰よりもそのことをわかっているからこそ、ひとりで考え自分と対話し勝つ覚悟を自分で持つという選択ができた。司先生が信じてくれた自分を信じられる私でいたい。中途半端な気持ちで試合に出たくない。試合に出るのであれば絶対に一位を獲りたい! その気持ちが私も演じていて自然と湧いてきたのをよく覚えています。



 でも、実はその気持ちがより湧いてきたのはこのシーンを後日録り直したときだったんです。



――録り直したんですか?



春瀬 収録時はコンテ撮だったこともあって、監督が思い浮かべていた画とコンテの画に起こしたときのイメージに差異があったようなんです。



 第8話のアフレコ終わりに監督含めスタッフの皆さんで相談された結果、ここのカットはこういう風に画を修正するのでそれに合わせて演じてほしいとご提案をいただきました。私もそのご提案いただいたイメージがとてもいのりの勝ちたい気持ち、こういう自分になりたいという気持ちが伝わりやすいと感じ、録り直したバージョンのほうが「勝ちたい」気持ちが私もより湧いてきましたし、より視聴者の皆さんに伝わるようになったのではと思っています。



――春瀬さんは大塚さんの、大塚さんは春瀬さんのお芝居を間近で聴かれた印象はいかがでしたか?



春瀬 大塚さんのお芝居を聴いた瞬間「あ、司先生だ」と自然にお声が心に入ってきて、大塚さんのお芝居のおかげで私も自然にいのりになることができたと思っています。



 たくさん素敵なお芝居のシーンがあるんですけどそのなかでも、個人的に大好きなのは……(台本をめくりながら)第11話以降のお話だ……! あるシーンのお芝居が素晴らしくて、収録が終わった後、(理凰役の)小市(眞琴)ちゃんとふたりで「あそこ凄かったよね!」「どうやってやったんだろう」と話をするほどでした。ぜひそのシーンを皆さんには楽しみにしていただきたいです!



大塚 春瀬さんのお芝居は、結束いのりという人物のともすれば達観しているように聞こえてしまうセリフを、子供だからこその言葉に落とし込まれている素晴らしいものだなという印象があって。

彼女の複雑な内面も感じられて、全編通して掛け合いで助けられていた覚えがあります。



 春瀬さんとは常時一緒に収録をすることができ、芝居ができてとても嬉しかったです。



――ちなみに、おふたりが演じるいのり、司以外で好きなキャラクターは誰ですか?



春瀬 理凰くんですかね。原作でももちろん大好きでしたけど、声をお聞きしてから、より好きになりました。今では理凰くんのことが春瀬は可愛くて可愛くて仕方ありません。



 理凰くんはとても特殊な環境で選手として育っていますしその影響でツンツンしていたりしますけど、中身はしっかり子供なところが魅力的です。褒められたら嬉しいけど、自信を無くしているので素直になれない。でも本当は自分を認めてくれる人の側にいたい……という等身大な子供らしさが詰まっていてたまりません。その機微を小市さんが瑞々しく演じられているのが流石です!



大塚 僕は蛇崩先生と絵馬ちゃんかな。特に絵馬ちゃんはとても落ち着いた子なんだけど、胸の内に秘める熱い想いは誰にも負けていないと思うんです。選手としてやっていくうえでの辛いことを全て飲み込んだからこそ、自分だけじゃなく周りの人のことまで見て頑張れる。そんな彼女を勝たせてあげたいと願う蛇崩先生の気持ちが素晴らしいなと思っていて、収録現場でも思わず感動してしまいました。



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――完成した映像をご覧になって、特に印象的だったのはどこですか?



大塚 収録時はまだ3Dの素体が滑っているだけだったフィギュアスケートシーンが、こんなに素晴らしいものになるとは! 音がしっかり付いたからこそ得られる臨場感もあって、圧倒されました。



春瀬 試合よりリアルに聞こえるほどですよね。モーションキャプチャーの方にマイクを付けて録っているそうなので、本当にリアルなフィギュアスケートシーンになっていると思います。



大塚 あと、オープニング主題歌もすごく良くて……。米津玄師さんが何重に意味を感じられるくらい歌詞に想いを込めてくださっていて、先行上映会の前に初めてオープニングアニメーションを観たときには本当に感動しました。



春瀬 フィギュアスケートって特殊なスポーツで、大勢の観客の前でたったひとりシニアの選手であれば4分間、何があっても滑り切らなくちゃいけないんです。その瞬間のためにコーチも人生を懸けているけれど、試合の前に手を離したらもう助けることはできない。



 そのもどかしさも感じられつつ、逆に手を離れてから今まで練習で見たことのないような演技をするときもある希望ももちろん含まれていると思っていて、「手を放す」という歌詞にはそんな『メダリスト』やフィギュアスケートらしさが詰まっていると私は感じています。今頃はフルサイズも配信されているので、歌詞の考察が盛り上がっているんじゃないかな?と楽しみにしています(笑)。



――さて、理凰との衝突もありつつ、物語は光たちと同じ舞台に立てるのか、運命を決める試験に向かっていきます。おふたりがここからのエピソードで特に推したいポイントはなんですか?



春瀬 第1話を振り返ると、とてもいのりちゃんが成長してきたと思うんです。だからこそ、その成長を踏まえてここからのエピソードを観ていただきたいです! そうすると、より心にくるものがあるはずですし、彼女の変化を楽しめるのではないかなと思います。

あと、林(ゆうき)さんが手掛けられたプログラム用の曲も堪能してください!



大塚 司目線でいえば、理凰さんとのやり取りですよね。彼の過去も明かされつつ、どうやって理凰さんと距離を詰めていくのか、そこに注目していただきたいです。あと、どんどんいのりさんにのめり込んでいく様子も(笑)。アドリブもたくさんやらせていただいたので、原作ファンの方にも楽しんでいただけるのかなと思います。



 ……とはいえ、まずは何よりもいのりさんを最終回に向けて応援していただけたら嬉しいです。



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【Text=太田祥暉】



■DATA

【配信情報】

各種配信サイトにて好評配信中

【スタッフ】

原作=つるまいかだ(講談社「アフタヌーン」連載)

監督=山本靖貴

シリーズ構成・脚本=花田十輝

キャラクターデザイン=亀山千夏

総作画監督=亀山千夏、伊藤陽祐

フィギュアスケート振付=鈴木明子

フィギュアスケート監督・3DCGディレクター=こうじ

3DCGビジュアルディレクター=戸田貴之

3DCGアニメーションスーパーバイザー=堀正太郎

3DCGプロデューサー=飯島 哲

色彩設計=山上愛子

美術監督=中尾陽子

美術設定=比留間崇、小野寺里恵

撮影監督=米屋真一

編集=長坂智樹

音楽=林ゆうき

音響監督=今泉雄一

音響効果=小山健二

アニメーションプロデューサー=神戸幸輝

アニメーション制作=ENGI

オープニング主題歌=米津玄師『BOW AND ARROW』

エンディング主題歌=ねぐせ。『アタシのドレス』



【キャスト】

結束いのり=春瀬なつみ

明浦路司=大塚剛央

狼嵜 光=市ノ瀬加那

夜鷹 純=内田雄馬

鴗鳥理凰=小市眞琴

鴗鳥慎一郎=坂 泰斗

三家田涼佳=木野日菜 那智鞠緒=戸田めぐみ

大和絵馬=小岩井ことり

蛇崩遊大=三宅貴大

鹿本すず=伊藤彩沙

高峰 瞳=加藤英美里



TVアニメ『メダリスト』公式サイト

TVアニメ『メダリスト』公式X(旧Twitter)

TVアニメ『メダリスト』公式YouTube

(C)つるまいかだ・講談社/メダリスト製作委員会

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