『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』が、3月27日(金)から公開になる。本作は、2020年に公開された『映画 えんとつ町のプペル』に続くシリーズ最新作で、引き続きSTUDIO4℃所属の廣田裕介が監督を務めた。
同社で長年に渡ってCG部門に所属してきた廣田監督は、長編第2作目となる本作で、シリーズの魅力をさらに拡大させつつ、日本が長年にわたって培ってきた2Dアニメーションの技術や魅力を見事に継承する作品を作り上げた。
前作は、廣田監督らSTUDIO4℃のメンバーと製作総指揮・原作・脚本を務めた西野亮廣が最初期からチームを組んで制作にあたった作品で、大ヒットを記録した。
「コロナ禍という特殊な状況で公開されたのが大きかったと思います。当時は窮屈な生活を強いられている方や、苦しい状況に立たされている方がたくさんいらっしゃる中で、『えんとつ町のプペル』が持っている“挑戦”と“解放”の物語やメッセージが観てくださる方に強くと届いたんだと思います。映画にとって結果的に良かったのか、悪かったのかはわからないですけど、あの状況下で公開されたことで、我々が想像していたものとは違う大きな反響をいただけた、という感じがありました」
本作のチームの絆は強く、廣田監督が本シリーズに寄せる想いも大きい。
「前作が完成したあたりで、西野さんが繰り返し『えんとつ町のプペル』の物語はさらに広がっていく、ということをおっしゃっていたんですね。前作は私にとっては初めての長編監督作でしたから、特別な思い入れがありましたし、続編を作るなら他の人には任せたくないという気持ちが、正直ありました。もちろん、映画がヒットしなければ続編はないと思っていましたし、仮に続編の制作が決定したとしても、私やSTUDIO4℃にオファーが来るとも限らない。なので、正式に続編制作が決まってお声がけいただくまでの1年ぐらいは、他の仕事をしながらソワソワしている期間でした(笑)。正式に続編のオファーをいただいた時は、“うれしい”というよりも”安心した”という気持ちでした。前作を共につくったことで、信頼関係がちゃんと出来ていたんだと改めて思うことができた。それは本当に光栄なことでした」
彼らは映画制作の初期の段階から何度も顔を合わせ、意見を出し合い、時間をかけて脚本を練り上げていった。
「本作でも依頼をいただいた段階から、一緒に打ち合わせをしていましたし、脚本づくりは前作以上に時間をかけて西野さん、私、プロデューサーのみなさんが集まって意見を出し合いました。それを西野さんがまとめて、脚本を書かれて、出来上がった脚本を読んで、さらに打ち合わせを重ねて叩いていく。本当に何回、打ち合わせしたかわからないぐらい(笑)脚本を仕上げることに時間をかけました。最終的に誰がどのアイデアを出したかというのは覚えていなくて、みんなでアイデアを出し合って、最後は西野さんが脚本にまとめる。そういう現場でした」
本作で制作チームが目指したのは、前作のテイストをキープしながら、前作とは違った魅力を持つ作品だ。
「前作のラストでプペルがいなくなり、今回の映画は、ルビッチがプペルと再会する物語ですから、前作とは違う映画の終わり方になることは分かっていましたし、ある意味、ふたつでひとつのような関係となる、前作とは対になるような映画になるだろうと。なので、本作も作品のベースにある根源的なもの、つまり、原作者の西野さんの中から湧き出てくる想いがとても重要でした。今回の映画が持っているメッセージを大切にしつつも、単純に前作のような構成を繰り返すことや、パターン化させて“外側”だけを付け替えたような映画にはならないようにしたいと考えて作りました。
結果として作品の世界をさらに広げて、新しいキャラクターと世界が登場する作品になりましたし、映画の中にふたつの時間軸があることで“時間”をテーマにした見ごたえのあるドラマティックな展開が描けるのではないかと思いました」
「あえて“記憶の断片”のように見せる」
最新作で主人公のルビッチは、えんとつ町を飛び出して、新たな舞台“千年砦”で冒険を繰り広げる。千年砦は時を支配する異世界で、ルビッチと新たな相棒・異世界ネコのモフの物語と、この街で暮らす時計師のガスと人に化けた植物・ナギの物語が並行して描かれ、ふたつの時間軸で進む物語はやがて映画の重要なテーマになっている“時間”、そして“信じて待ち続けること”に結実していく。
「ふたつの時間軸を扱う上で、わかりやすく“こちらはこの時間ですよ”という風に、説明と段取りをきれいに踏んでいく作り方もあったと思うのですが、ここはあえて“記憶の断片”のように見せることを考えました。
これは物語の後半でルビッチが時計台の記憶を見るシーンにつなげるためのギミック的な意味があったのと、もうひとつ理由があります。自分が子どもの頃に好きだった映画のことを思い返すと、ストーリーのつじつまにあまり興味を持って観ていなくて、それよりも、登場する場面のひとつひとつが面白くて、“このあとが気になる”の連続で、いつの間にか見終わったら心に響く何かがあった。
ですから、今回の映画でも、ふたつの時間軸があることについて、あえて説明することはせずに、ドラマティックでエキサイティングな場面が続いて、アニメーションの魅力を存分に発揮して、ずっと観ていたくなるものが次々にやってきて、結果としてふたつの時間軸が合わさった時に、ある種の気持ちよさを感じられるものを作れないだろうかと」
監督が語る通り、本作はとにかく楽しい場面、魅力的なアニメーションの連続だ。その瞬間は目の前のシーンに夢中になるが、物語が進むにつれて、それらのシーンが考え抜かれた上で構成されていることがわかる。
「前作で初めて長編映画を手がけたことで、本作では前作以上に映画全体を俯瞰して見ることができるようになった実感があります。今回の映画では、前作以上に絵コンテを描くことに時間をかけました。その段階で、シーンの入れ替えやセリフの整理もしっかりと行ってから、実際のプロダクションに進むことができた。これも大きかったと思います」
「“手描きのテイスト”はとても意識した部分です」
その上でSTUDIO4℃のメンバーは、他のプロダクションの協力を得ながら、時間と手間のかかるアニメーション制作に挑んだ。本作は全編がデジタルでつくられているが、手描きアニメーションの感触や、枚数を減らした動画から生まれる独自のテイストを追求してきた日本独自のリミテッドアニメーションの魅力が追求されている。本作はキャラクターやストーリーだけでなく、映像表現、アニメーション表現でも見どころ満載の作品なのだ。
「CGアニメーションのメリットのひとつに、一度つくったデータを何度も使えるということがあります。
“手描きのテイスト”はとても意識した部分です。私は作画のアニメーションの中にどうやって違和感なくCGを取り入れていくのか? を追及し続ける仕事をしてきました。その過程で作画のアニメーションの魅力、特徴を学び、吸収して、CGの制作へ取り入れてきました。だから、手描きの良さのあるCG作品をつくることが自分の中では当たり前というか“これしかない!”という想いなんです。
本作もCG作品なんですけど、作り方は作画のアニメーションにならっていて、ワークフローだったり、最終的なルック(見た目)の完成のさせ方は、手描きの2Dのアニメーションにかなり近い方法をとっています。日本独自のリミテッドアニメーションの手法は海外では実現するのは難しいと思います。だからこそ、この手法でつくることを個人的にも突き詰めていきたいと思っていますし、今回の作品はその最先端と言いますか、これまでの中で一番やりきれた部分だと思っています。
リミテッドアニメーションを生かす重要な要素はは“ライン”です。線とシルエットを重視したルックですね。
私自身は、STUDIO4℃で作品をつくる上で手描きかCGかの境界線はないんです。そのシーンに最も適切かどうかだけをまず考えていますし、そうして選べる環境がSTUDIO4℃にはあります。ですから、観てくださる方にも手描きかCGかは関係なく、ひとつのアニメーションとして最後まで楽しんでもらいたいと思っています」
『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』
3月27日(金)公開
(C)西野亮廣/「映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~」製作委員会

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