
9月19日(金)に公開されるウェス・アンダーソン監督の最新作『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』より、アンダーソン監督と主演のベニチオ・デル・トロのインタビューが公開された。
本作は、架空の国フェニキアを舞台に、ヨーロッパの富豪ザ・ザ・コルダが様々な事件に巻き込まれていく姿を描くクライムコメディ。
アンダーソン監督とデル・トロという組み合わせで思い出されるのは、『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(2021年)。レア・セドゥとともに、同作の1話となる「確固たる名作」に出演したデル・トロ。本作はまさに、『フレンチ・ディスパッチ…』のカンヌ国際映画祭での上映がきっかけで生まれたとアンダーソン監督は語る。

「カンヌでベニチオに、“とあるアイデアがある”と話しました。ベニチオが、アントニオーニの映画に出てきそうなヨーロッパの大富豪を演じるというイメージが頭の中にあったんです。それも、何らかの身体的な傷を負っているような。高価な腕時計をつけた“不死身の男”というイメージでした」。
カルースト・グルベンキアン、アリストテレス・オナシス、ウィリアム・ハーストといった名だたる大富豪たちがインスピレーション源となっているザ・ザ・コルダ。しかし、その人物像を固めていくうちに、アンダーソン監督のパートナー、ジュマン・マルーフの父である建設技師フアード・マルーフと重なっていったと話す。「彼は世界中でプロジェクトを展開するエンジニア兼実業家で、親切で温かい人でしたが、同時にどこか威圧感もありました。仕事の資料をいくつもの靴箱に入れて管理していて、“自分に何かあったときのために”と、事業について娘にいろいろと説明したことがあったらしいのです。

そんなザ・ザ・コルダを任せられるのは、「デル・トロしかいなかった」とアンダーソン監督は語る。「彼しか候補に挙がらなかった。もしアンソニー・クインが出演可能なら、彼を代替案として検討したかもしれない。はたまたオーソン・ウェルズならこの役をこなせたかもしれません。三船敏郎もそうですが、私の知る限り、彼は英語が話せないし、いま挙げた役者は全員もう亡くなっているね」。
アンダーソン監督はデル・トロに20ページほどの脚本を送った。デル・トロは、読んですぐに心を掴まれたと話す。「ザ・ザと娘が初めて出会うシーンでした。細部まで丁寧に描かれた、豊かでオリジナリティにあふれたもの。ユーモアと哀しさが同居していて、とても多層的で、まさに役者が追い求めるような役です。だからこそ、こんなチャンスは絶対に逃したくなかった。
デル・トロはザ・ザ・コルダについて、「本当の望みは“セカンドチャンス”を得ること」だと話す。長年疎遠だった娘、リーズルとの関係を再構築するチャンスだ。「“娘との壊れた関係を修復したい、もう一度チャンスがほしい”という想いがあります。そのためには自分が変わらなければならないことに気づき、実際に変わっていくんです。僕は“人は変われる”と信じたい。もちろん誰もが変われるわけではないけれど、変われる人もいます。ザ・ザは、娘との関係を通じて変化していく人物です」。

アンダーソン監督もデル・トロに同意を示す。「ザ・ザは何度も死を逃れてきたから、いつも“死”を意識している。だからこそ、事業計画をきちんとまとめておきたいと思っている。でも本当の目的は“娘との関係を修復すること”。
アンダーソン監督とデル・トロの視点から見るザ・ザ・コルダは、ビジネス第一の大富豪という仮面の奥に、娘との修復を望む父の姿が潜んでいる。ザ・ザ・コルダは本当の目的を果たせるのか? アンダーソン監督が提示する物語の結末に期待が高まる。
<作品情報>
『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』
9月19日(金)公開
公式サイト:
https://zsazsakorda-film.jp/
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