
25歳の若さで世を去りながらも、オスカー・ワイルドの『サロメ』の挿画など、精緻な線描による耽美的な作品を数多く生み出し、19世紀末の欧米の美術界を席巻した英国の画家オーブリー・ビアズリーの芸術を紹介する大回顧展が、昨年11月に再開館を果たした東京・丸の内の三菱一号館美術館で、2月15日(土)から5月11日(日) まで開催される。
1872年に英国の南部の町ブライトンで生まれたビアズリーは、ロンドンに出て保険会社などで働くかたわら、夜間に独学で絵を描き、新進気鋭の挿絵画家として彗星のごとくデビューした。

オーブリー・ビアズリー《アーサー王は、唸る怪獣に出会う》1893年、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館 Photo: Victoria and Albert Museum, London
同展は、その作風ゆえに「異端の画家」とも呼ばれるビアズリーの代表作を中心に、短い生涯のなかで精力的に描かれた挿絵や稀少な直筆の素描、彩色されたポスターなど、約220点の多彩な作品を通じ、病に冒されながらも決して制作を諦めなかったビアズリーの歩みをたどるものだ。世界有数のビアズリー・コレクションを有するロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の全面協力によって、同館から150点が一挙に来日し、充実した回顧展が実現した。約50点に及ぶ直筆作品が並ぶのも、見どころのひとつとなっている。
頽廃的な世紀末の体現者といったイメージが強いが、ビアズリーは成功を収めたのちも、公的な画壇や特定の流派に属すことはなく、自室にこもって厚いカーテンで外光を遮断し、蠟燭の光のもとで制作に打ち込んだという。同展は、そうした人物像に迫る試みも行われる。彼が影響を受けた画家の絵本や絵画作品などの紹介や、制作を支えた仕事部屋の再現展示などもあり、新たなビアズリー像に出会える機会となりそうだ。

オーブリー・ビアズリー《アヴェニュー劇場公演の宣伝ポスター》1894年、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館 Photo: Victoria and Albert Museum, London
<開催概要>
『異端の奇才――ビアズリー』展
会期:2025年2月15日(土)~5月11日(日)
会場:三菱一号館美術館
時間:10:00~18:00、祝日を除く金曜日と会期最終週平日、第2水曜日、4月5日は20:00まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜(2月24日、3月31日、4月28日、5月5日は開館)
料金:一般 2,300円、大学1,300円、高校1,000円
公式サイト:
https://mimt.jp/ex/beardsley/