第2次世界大戦中からグラフ雑誌『ライフ』の特派員を務め、戦後も人々の生活に密着した作品を次々に発表して、20世紀のドキュメンタリー写真を代表する存在となったアメリカの写真家W. ユージン・スミス(1918–1978)。その彼の、報道写真家としてだけでなく芸術家としての姿にも光をあてる個展が、3月17日(火)から6月7日(日)まで、恵比寿の東京都写真美術館で開催される。
W. ユージン・スミス〈私の窓から時々見ると…〉より 1957-59年頃 東京都写真美術館蔵 (C)2026 The Heirs of W. Eugene Smith
1940年代から本格的に報道写真に取り組んだスミスはまた、複数の写真と短い解説文を組み合わせて物語を紡ぐ「フォト・エッセイ」の第一人者としても確固たる地位を築いた。1954年に『ライフ』誌を退くと、ニューヨーク・マンハッタンのアパート、通称「ロフト」に移り住む。マイルス・デイヴィスをはじめとするジャズ・ミュージシャンから、サルバドール・ダリや抽象表現主義の画家たち、ダイアン・アーバスなどの写真家まで、時代を担う多彩な芸術家が集う場となったロフトでの交流の様子を実験的手法で写真に収めたスミスはまた、取材先に赴くのではなく、ロフトの窓の外に広がる光景を見つめ、日々を写し取る取り組みも行っている。
W. ユージン・スミス《無題(ジミー・スティーブンソン)》〈ジャズとフォークのミュージシャンたち〉より 1958-65年頃 東京都写真美術館蔵 (C)2026 The Heirs of W. Eugene Smith
こうしたロフトでの生活と制作は、スミスの写真観を大きく変え、報道的な出来事の「記録」から、時間を超えて本質を浮かび上がらせる芸術的な「表現」へと視点を押し広げていった。従来のジャーナリズムの枠を超え、新たな表現や写真の芸術的可能性を探る試みに向かったのである。
W. ユージン・スミス《無題(認定患者の遺影を持つ親族たち) 》〈水俣〉より 1972年 東京都写真美術館蔵 (C)Aileen Mioko Smith
同展は、この「ロフトの時代」に焦点をあてた日本初の展覧会となる。また今回は、その前後の作品群も体系的に提示される。とりわけ、10年以上に及ぶロフトでの制作を経て、ジャーナリズムへと回帰したスミスが自ら企画・構成した回顧展『Let Truth Be the Prejudice』の一部再現展示や、その回顧展を通じて「報道と芸術表現は本来切り離せない」という写真観を改めて確信した彼が取り組んだ〈水俣〉シリーズの紹介など、スミスが「ロフトの時代」を経て、自身の写真表現をいかに拡張したのか、その全体像に迫る試みとなっている。
<開催情報>
『W. ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代』
会期:2026年3月17日(火)~ 6月7日(日)
会場:東京都写真美術館 2階展示室
時間:10:00 ~ 18:00(※木・金は~20:00)
休館日:月曜、5月7日(木)(※ただし5月4日(月)は開館)
料金:一般700円、学生560円、高校生・65歳以上350円
※第3水曜日は65歳以上無料
※3月17日(火)~4月5日(日)は、「ウェルカムユース2026」キャンペーンで18歳以下無料
公式サイト:
https://topmuseum.jp/

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