転生しても、また自分でいたい――堂本光一が選び続ける“嘘のない在り方”
(撮影/梁瀬玉実)

人気アニメ『転生したらスライムだった件』の劇場版第2弾『劇場版 転生したらスライムだった件 蒼海の涙編』が待望の公開を果たす。今作の舞台となるのは、水竜を守り神と崇める海底の国・カイエン国。

リムルとおなじみの仲間たちに加え、劇場版のオリジナルキャラクターで物語の重要なカギを握る人物ゾドンを演じるのが堂本光一だ。壮大なアクションファンタジーで今までに演じたことがないヒール役に挑んだという作品の魅力とは? 久しぶりの声優の挑戦で、これまで舞台で積み重ねてきた表現力を発揮する機会に恵まれたと笑顔でインタビューに答える堂本。転生するならまた自分自身になりたいと語るその真意に触れた。



正義とは何か、人の心とはどういうものなのかが描かれている作品

転生しても、また自分でいたい――堂本光一が選び続ける“嘘のない在り方”

原作はシリーズ累計発行部数5600万部を突破している『転生したらスライムだった件』(通称『転スラ』)。テレビアニメ化も人気で、2022年に劇場版第1弾となる『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』が公開され大ヒットを記録した。その劇場版第2弾となる『蒼海の涙編』のオリジナルキャラクター声優として堂本光一が出演する。



「本当に偶然というか、何の巡り合わせかっていう感じなんですけど……、地上波でやっていたアニメの第1話を偶然、観ていたんですよ。題材が面白いアニメだなぁと思った記憶があったんですよね。僕は普段、あまりテレビを観ないので、偶然にも観たことのあるアニメへの出演が決まってビックリしましたし、嬉しかったですね。改めてアニメを見直して思ったのは、見方によっては現実に照らし合わせことができる深い話だなということ。正義とは何ぞや、人の心ってどういうものなんだろうとか、描かれていて面白い作品だと思いました。ファンの方も多い『転スラ』に参加することができて、大変光栄に思っています」



声優に挑むのは、約20年ぶりという堂本。2006年にテレビアニメ「獣王星」、2008年に「クレヨンしんちゃん 銀幕版スシ王子!~ニューヨークへ行く~」で本人役でアフレコにチャレンジして以来。

アニメの劇場版でキャラクターを演じるのは、初めてとなる。



「役を演じたのは2006年以来になりますが、アフレコのやり方は当時ととくに変わらなかったですね。違ったのは今回、1人でブースに入って収録したことくらい。前回は、1人の時もあれば、大勢でアフレコする時もあったし、様々でしたけど」



久しぶりの声優オファーを快諾した理由については、「いや~、基本的に仕事を断らないんで(笑)」と回答して、インタビュアーを笑わせつつ、「やっぱりアニメは、今や日本が誇るカルチャーですからね。広がっていく世界観がそれこそ本当に無限大なところが素敵だと思います。以前、声優に挑戦した時も楽しくやらせていただきましたし、機会があればまたやりたいっていう思いはあったので。」



「転スラ」は、世界でも愛される作品。劇場版の第1弾は、初週末の興行収入158万ドルを記録し、全米ランキング8位にランクインしたほど。数々の国外イベントにも招待されるなど、その人気は国内にとどまらず世界中で注目されている。



「『転スラ』は、個性豊かな種族、いろんなキャラクターが出てくるところが魅力だと思います。魔国連邦(テンペスト)でリムルが1つの幸せな世界を作ろうと働きかけるんですよね。それは人間側の正義の物差しでみると、果たして正義なのかどうか分からない。そういったことってある意味、現実世界でもいっぱいあるわけですよね。

そんなところがアニメを通して考えることができる、学ぶことができる部分かなとも思ったりはします。でも、そこまで難しく考えなくても、単純に世界観が面白い作品です。劇場版はテンポも良くてたくさんの人に愛してもらえる作品になっていると思います」



僕は髭が似合わないんですよ

転生しても、また自分でいたい――堂本光一が選び続ける“嘘のない在り方”

今作で堂本が声をあてたのが、カイエン国の大臣・ゾドン。カイエン国の宰相でリート王からの信頼を得ているジースの命令を受けて、水竜の笛「竜の牙」を持ち出した巫女・ユラを追って地上へ向かうことになる重要なキャラクターだ。



「ゾドンは、間違いなくヒールなキャラクター。国では大臣という役割を果たしている、デキる男なんですよね。そんな中で彼の考え方がなぜ歪んでいったのか、深く描かれていない部分があるので、そういった背景を想像できるような声ののせ方ができたらいいなと思ってアフレコをしました。ヒール役はこれまで舞台の劇中劇でリチャード三世をやることもあって。自分のそのときの経験をどうやってこの役に乗せていけばいいか考えさせてもらいながら演じました」



深い群青色の髪に鋭い眼差し、髭を生やしたゾドン。このキャラクターについて、「髭のキャラクターを演じることになっていかがですか?」という問いかけには、「髭が似合う人物に若干の憧れはありますけどね。僕、似合わないんですよ! 髭をはやすと泥棒みたいになっちゃうんで(笑)。そういった意味でも、実写版だと髭のキャラクターがハマらなくても、アニメという形だったら関係ないじゃないですか。髭のダンディーな人物を、リアルだったら自分はちょっと演じられないかもしれないですけど、アニメの世界でなら演じられるのがアニメーションの良さですよね」



カイエン国の平和を揺るがす事件が起こる中、ゾドンは一体どう立ち振る舞うのか気になるところだが、ヒール役の声をあてるにあたって他にも大切にしたことがあるという。



「大臣ということで威厳のある声をイメージして、普段の自分の声よりは少し低めのトーンでセリフを言っています。テンション感に関しては、やっぱり台本だけでは読み取れない部分もあったりもするので、それは音響監督と相談させていただきながら、監督からの指示でアフレコしました。久しぶりのアフレコは楽しかったです」



自分の持っているものを捧げることができたら

転生しても、また自分でいたい――堂本光一が選び続ける“嘘のない在り方”

数多くの舞台に出演し、舞台演出も手掛けている堂本。舞台では生身の人間が演じることで表現が難しい部分もあるが、アニメーションでは幅広い表現方法が可能。アニメならではのエンターテイメント作品の良さをどんなところで感じているのだろうか。



「アニメのいいところって、何か自分に投影できる部分だと思うんですよね。ちょっとセンシティブな題材であったとしても、それを違った形で投影することによって、迂回して届けられるメッセージがあるというか。アニメだからこそ表現できるもあると思います」



今回久しぶりにアニメ声優に挑戦してみて、改めて感じたことはという質問には、自分自身のこれまで舞台で培ってきた表現力を試す機会にもなったと話す。



「例えば、すごくアニメが好きな方たちには、もしかしたら、声のお芝居が本業でないタレントに声をあてられたくないなって思う方もいらっしゃるかもしれないですよね。でも、自分に今回お声がけいただいて、『じゃあ、自分に何ができるんだろう』って考えた時に、自分の経験値みたいなもの……、舞台でやってきたことを活かして作品に何が還元できるのかなって。それは自分なりのやり方でしかできないので、自分の持っているものを捧げることができたらなという思いでやらせていただきましたね」。



今作には魅力的なオリジナルキャラクターもたくさん登場。堂本演じるカイエン国の大臣・ゾドンのほかに、宰相のジース(遊佐浩二)、水竜に祈りを捧げる巫女・ユラ(大西沙織)や、ユラに付き従う侍女のミオ(小坂菜緒)とヨリ(藤嶌果歩)が、リムル達と共に劇場版を盛り上げる。

堂本が今作で最も感情移入できたキャラクターや好きなキャラクターは誰なのか、気になるところだ。



「えー、誰でしょうね。自分はやっぱりゾドンと向き合っていたので、ゾドンですかね。ヒールなので、なかなか共通項はないですし、正直共感できないキャラクターですけど、それでもしっかり役と向き合って、役の心情を表現しました。まぁ、ゾドンに共感できる人ってあまりいないんじゃないかな(笑)。あと、ゾドンと対峙することが多いユラは、気になるキャラクターですね。ゾドンはユラのことを利用しているだけなのか、何か特別な感情があったのかどうなのかとか気になりますね。そういった部分は、明確に表現している場面はないですけど。そういう部分も、アニメーションだからこそ、見ている側に委ねられる部分もあったりもすると思うので、その辺も見どころのひとつかなと思います」



仲間を信頼してこそ、いい作品を作り上げられる

転生しても、また自分でいたい――堂本光一が選び続ける“嘘のない在り方”

堂本が声を務めることで普段はアニメを観ない層が劇場に足を運ぶこともあるだろう。これまでアニメ作品にあまり触れたことのない人にはどんな楽しみ方があるのだろうか。



「アニメーションは何かに投影できる世界なので。ある意味、人間が演じているものを観るより、観ている人が自分の気持ちを乗せやすい部分もあると思うんですよね、それがアニメの魅力の1つかなとも思います。今作は、『転スラ』ファンの方はもちろん『転スラ』シリーズを御覧になったことがない方も楽しめる作品になっていますので、ぜひ多くの方にワクワクしながら、ご覧になっていただければと思います」



主人公のリムルは、リムルが作った国・魔国連邦(テンペスト)のリーダー

堂本は舞台をはじめ、作品を作り上げる時に中心となってリードしてきた存在だ。堂本自身が一緒にチームとして戦う共演者をまとめる時に大切にしていることは?



「作品ごとに環境も違えばやり方が変わってくるし部分もありますけど。やっぱり共に何か作品を作るには、それに携わっている人たちのことを1番信用することっていうのはすごく大事だと思います。信用することによって、自らも信頼される…結果的にそこに繋がっていくのかしれないですよね。チーム間の絆がなければ、いいものはできないですし。あ、信用っていうよりも信頼っていう言葉がしっくりくるかもしれない。仲間を信頼してこそ、いい作品を作り上げられると思いますから」。



タイトルにかけて、堂本がもし転生するなら、何に転生したいかというユーモア溢れる質問には、ちょっと笑いながら、こう回答してくれた。



「全ての記憶を持ったまま自分にまた転生して、これが自分だって言える人生を今、生きていきたいですよね。…そうやって言っとくとね、そう言っちゃったから、ちゃんと生きようって、自分自身に言い聞かせることができるので(笑)」。



嘘偽りない、というのがぶれない自分の芯

転生しても、また自分でいたい――堂本光一が選び続ける“嘘のない在り方”

長年にわたってF1好きで知られる堂本だが、「車のタイヤなど、もしも人間以外ものに転生するなら何になりたいか」という質問には、「自分が飼っていた犬に転生するのもいいですよね。本当にあの子は自分の元にいて幸せだったのかどうかっていうのを知れますから(笑)」と愛犬への愛情をさらっと語る場面もあった。



また声優にチャレンジする機会があったらどんな作品をやってみたいかという問いには、「ぜひどんな作品でもオファーがあれば」と前向き。「子供の頃は『ドラゴンボール』のアニメが大好きでずっと夢中で観ていたんです。子供の頃は自分もカメハメ波を出せると信じていましたからね(笑)。未だに『カメハメハが出るはずなのに出ねえ』っていう夢を見ますもんね(笑)」と、大好きだったアニメについて笑顔で話してくれた。



今回演じたゾドンは目的を遂行するためなら、どんな手も使う貪欲な男。堂本がぶれずに自分の芯として持っているものとは――? そんな問いには不器用ながら誠実に作品と向き合う姿勢が伝わってきた。



「なんでしょうね。僕に芯なんてあるのかな。基本的にはそんな器用なタイプではないので。
器用なタイプではないからこそ、何事にも誠実に向き合おうとは思います。だけど、それが時には誤解を生むこともあるし、例えばこういう取材においても、リップサービスが上手ければもっとうまく話せると思うんですけど、そういうものもあまり上手くないのでね(笑)。でも、嘘偽りないというのがぶれない芯ですかね。言葉もそうだし、作品に対して向き合う気持ちもそうですし。誠実に向き合っていきたいなっていう想いはあるかもしれないです」




<作品情報>
『劇場版 転生したらスライムだった件 蒼海の涙編』



2026年2月27日(金) 全国公開



転生しても、また自分でいたい――堂本光一が選び続ける“嘘のない在り方”

©川上泰樹・伏瀬・講談社/転スラ製作委員会
配給:バンダイナムコフィルムワークス

【STORY】
水竜を守り神と崇める、海の底にある国【カイエン国】。
その地は、かつて他の種族と地上で暮らしていた人々が平和な地を求めて世界を彷徨い、安寧を求めた末に水竜から与えられた、争いの無い王国。しかし、その平和が永遠に続くことはなかった──。
長き眠りについた水竜に祈りを捧げる巫女・ユラは、水竜を目覚めさせ地上に攻め込もうと目論む者がいることを知り、一族に伝わる“笛”を手に、救いを求めて地上へ向かう。ユラがたどり着いた先は【魔導王朝サリオン】の天帝エルメシアが治めるリゾート島。そこには【魔国連邦(テンペスト)】の開国祭を終えて、束の間のバカンスを満喫しているリムルたちの姿があった。
エルメシアからの依頼を受けたリムルたちは、ユラを救うため【カイエン国】へ向かうが、海底では既にある陰謀が渦巻いていて……。水竜の目覚め、そして笛を巡る騒乱の果てに明らかになるユラの秘めた“力”。リムルたちは、迫る脅威から蒼海を守り、平和を取り戻すことができるのか──。

【キャスト】
リムル:岡咲美保 / 智慧之王:豊口めぐみ / ヴェルドラ:前野智昭 / ベニマル:古川 慎 / シュナ:千本木彩花 /
シオン:M・A・O / ソウエイ:江口拓也 / ハクロウ:大塚芳忠 / ゴブタ:泊 明日菜 / ランガ:小林親弘 / ディアブロ:櫻井孝宏 /
ヒナタ:沼倉愛美 / ルミナス:Lynn / ミリム:日高里菜 / ラミリス:春野 杏 / エルメシア:金元寿子 / フレイ:大原さやか /
ベレッタ:川澄綾子 / トレイニー:田中理恵 / エレン:熊田茜音 / カバル:高梨謙吾 / ギド:木島隆一/
ユラ:大西沙織 / ジース:遊佐浩二 / ミオ:小坂菜緒 / ヨリ:藤嶌果歩 / ゾドン:堂本光一




撮影/梁瀬玉実、取材・文/福田恵子



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