明日海りおが鮮やかに演じる“女性作家の解放劇” 新作オリジナルミュージカル『コレット』上演中
©ミュージカル『コレット』製作委員会/岡本隆史

G2が脚本・作詞・演出を手がけた新作オリジナルミュージカル『コレット』が、8月6日に開幕。東京の日本青年館ホールで上演中だ。



この作品は、「ジジ」や「青い麦」などで知られるフランスの人気女流作家シドニー=ガブリエル・コレットの波瀾万丈の半生を描いたもので、愛を求め、自由奔放に生きたタイトルロールを明日海りおが演じている。



明日海りおが鮮やかに演じる“女性作家の解放劇” 新作オリジナルミュージカル『コレット』上演中

©ミュージカル『コレット』製作委員会/岡本隆史

19世紀末のフランスの田舎町。都会への憧れを抱きつつも、自然の中で読書をするのが大好きだった少女コレットは、やがて自由のない田舎暮らしから自分を救い出してくれる “白馬の王子”との出会いを夢見るようになる。そこへ現れたのが14歳年上の作家ウィリー(今井朋彦)。コレットは彼に夢中になり、母親のシド(前田美波里)の反対を押し切って結婚し、憧れのパリに住むことになった。



明日海りおが鮮やかに演じる“女性作家の解放劇” 新作オリジナルミュージカル『コレット』上演中

©ミュージカル『コレット』製作委員会/岡本隆史

アンサンブルによるコーラスがテンポよくストーリーを運び、登場人物のひとりながら、この時点ではまだどんな役か明かされないベルトラン(大東立樹)が狂言回しの役割を担う。幸せいっぱいに見えたコレットの結婚生活は、しかしベルトランが語るある言葉で暗雲が立ち込める。この言葉は、終幕でもまた違う状況で繰り返されるが、コレットが自ら切り開いていった険しい道が軽妙に表現されていて、印象的だ。



明日海りおが鮮やかに演じる“女性作家の解放劇” 新作オリジナルミュージカル『コレット』上演中

©ミュージカル『コレット』製作委員会/岡本隆史

ほどなく暴君で女たらし、金に汚いウィリーの化けの皮がはがれる。彼は無名の作家たちをこき使って書かれた小説を、自分の名前で出版し、人気作家として富と名声を手にしていたのだ。さらには浮気も発覚し、初めは夫を信じ、影で支えようとしていたコレットも目が覚めていく。そしてウィリーの許しを得て、以前から温めていた題材を使い、処女小説「学校のクロディーヌ」を書き上げた。



コレットが小説を書く喜びを知って生き生きと歌う「真っ白なノート」が、明日海の透き通る声とよく合って心に残る。ウィリーが抱えていた無名の作家たちのひとりで、コレットの才能を最初に認め、後に彼女にとって特別な存在となるアンリ(吉野圭吾)とのデュエットも美しい。明日海は、髪を三つ編みにした文学少女が、夫の不貞、女性蔑視、世間の無理解、古い因習など、立ちはだかる高い壁を一つひとつ乗り越えるたびにしたたかになり、強い意志を貫いて前に進んでいく姿を、声や演技はもちろん、鋭い眼光でも表現し、この類まれな女性を鮮やかに演じている。



「学校のクロディーヌ」もこれまで通りウィリーの名前で発表されるが、これが大ベストセラーとなり、調子に乗った夫は勝手に続編の舞台化を決めてしまう。今井は、妻を食い物にする卑劣な男だが、女性と次々浮名を流し、時には弱さもさらけ出すウィリーを、魅力的な人物として造形している。



明日海りおが鮮やかに演じる“女性作家の解放劇” 新作オリジナルミュージカル『コレット』上演中

©ミュージカル『コレット』製作委員会/岡本隆史
明日海りおが鮮やかに演じる“女性作家の解放劇” 新作オリジナルミュージカル『コレット』上演中

©ミュージカル『コレット』製作委員会/岡本隆史

2幕は前のシーンから3年後、コレットを取り巻く環境は一変している。彼女は女優としてミュージック・ホールの舞台に立ち、歌い踊っていた。ウィリーとは別居し、社交界のサロンで知り合ったナポレオン3世の姪で男装の麗人、ミッシー(七海ひろき)と同居している。母親のシドは、思いのままに生きる娘を案じるが、その心配は現実になり、コレットは、ウィリーとその愛人メグ(花乃まりあ)の策略で、ミッシーとの関係を世間に暴かれ、スキャンダルにさらされてしまう。七海は、宝塚の男役時代と変わらぬカッコよさで軍服を着こなし、コレットを優しく包み込む。同期の明日海との共演も、ファンにとっては嬉しいだろう。



明日海りおが鮮やかに演じる“女性作家の解放劇” 新作オリジナルミュージカル『コレット』上演中

©ミュージカル『コレット』製作委員会/岡本隆史

また、弦楽器を効果的に使い、パリの香りがするような荻野清子の音楽が、コレットをはじめ登場人物の心の動きを丁寧に描いていて秀逸。

G2による歌詞も、翻訳ミュージカルでは表現できないような繊細な思いを、オリジナルミュージカルの強みで、うまく歌に乗せることに成功している。



日本青年館ホールでの東京公演は8月17日まで。このあと21日から24日までは、大阪・梅田芸術劇場メインホールでも公演が行われる予定だ。



取材・文:原田順子




<公演情報>
ミュージカル『コレット』



脚本・作詞・演出:G2
音楽:荻野清子
出演:
明日海りお
今井朋彦 大東立樹(CLASS SEVEN) 七海ひろき
吉野圭吾 花乃まりあ
前田美波里

大月さゆ 可知寛子 中西勝之
辰巳智秋 小林遼介 コイタ奈央美 りんたろう 伊宮理恵 ユーリック武蔵 蛭薙ありさ
奥田奏太/中井理人

【東京公演】
日程:2025年8月6日(水)~8月17日(日)
会場:日本青年館ホール

【大阪公演】
日程:2025年8月21日(木)~8月24日(日)
会場:梅田芸術劇場メインホール



チケット情報:
https://w.pia.jp/t/musical-collet/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2557963&afid=P66)



公式サイト:
https://musical-collet.com/

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