Laura day romance、ジャンルと世代を超える音楽体験 ソールドアウトのファイナル東京公演で魅せたローラズの圧倒的なアンサンブルと無二の音楽性をレポート

Text:石角友香 Photo:小杉歩

Laura day romanceが全国6カ所を巡ったワンマンツアー『Laura day romance tour 2025 a perfect review』が11月23日東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)でファイナルを迎えた。今回は今年2月にリリースされたアルバム『合歓る -walls』からの楽曲を軸に、本作と連作となる12月24日(水)リリースのアルバム『合歓る -bridges』からの先行配信曲「ライター」や「プラトニック」、「ランニング・イン・ザ・ダーク」に加え、バンドの世界観を作り出してきた代表曲を丹念に織り込んだ、まさに“perfect review”なセットリストで無二の音楽性を表現するライブとなった。



Laura day romance、ジャンルと世代を超える音楽体験 ソールドアウトのファイナル東京公演で魅せたローラズの圧倒的なアンサンブルと無二の音楽性をレポート

ソールドアウトしたフロアは去年の同会場よりも高い空気の密度に満たされている。暗転したステージに井上花月(vo)、鈴木迅(g)、礒本雄太(ds)とサポートメンバーの内山祥太(b)、小林広樹(g)、西山心(key)が登場するとファンが送る拍手と歓声の大きさは、それまで内側に秘めていた静謐とは裏腹な熱を感じた。舞台の幕開きを思わせるブザーとSEで瞬時にLaura day romance(以下、ローラズ)の物語に深くダイブする心地になった。オープナーはちょっと意外な「happyend」だ。井上が体を斜めにしてタンバリンを打つ姿も堂々たるもので、素直で伸びやかなアンサンブルは1曲目にして早くもクライマックスのような充実を見せる。リラックスしつつ集中力を感じる演奏に気が早いがライブの成功を予感した。「sweet vertigo」ではイントロで歓声が上がり、ツアーの充実を会場全体で祝福するようなムードが横溢する。さらに鈴木と小林のユニゾンフレーズが琴線に触れる「透明」。純粋さや幼さの失効や諦観を描く歌詞がこの後の流れに効いていく。



Laura day romance、ジャンルと世代を超える音楽体験 ソールドアウトのファイナル東京公演で魅せたローラズの圧倒的なアンサンブルと無二の音楽性をレポート

Laura day romance、ジャンルと世代を超える音楽体験 ソールドアウトのファイナル東京公演で魅せたローラズの圧倒的なアンサンブルと無二の音楽性をレポート

Laura day romance、ジャンルと世代を超える音楽体験 ソールドアウトのファイナル東京公演で魅せたローラズの圧倒的なアンサンブルと無二の音楽性をレポート

「この日を楽しみにしてきました。最後まで楽しんでいってください」と一言発した井上はまるで道先案内人のよう。ここからアルバム『合歓る -walls』の世界が展開していく。

プロローグの「5-10-15 I swallowed |夢みる⼿前」に始まり、「Sleeping pills |眠り薬」、「Amber blue |アンバーブルー」というアルバム同様の流れがライブで待望されていたことがフロアの集中度からも手に取るように分かる。音源と同じく環境音で始まる「5-10-15 I swallowed |夢みる⼿前」で一気に舞台を観ている感覚に陥り、「Sleeping pills |眠り薬」ではベースの長い音などが音源以上にオーケストレーション的な効果を上げ、豊かな音像に包まれる。かと思えば、童話的なAメロとチョーキングギターを軸にグランジ色を強める間奏の落差で沸かせる「Amber blue |アンバーブルー」。礒本の独自のタイム感でのフィニッシュに大きな歓声が上がった。そう、聴きたかった演奏とアンサンブルの高い完成度が実現していることに、声を上げずにいられないのだ。そして緊張を解すように素朴で柔らかな質感の「heart」が場面転換に一役買った印象も。



Laura day romance、ジャンルと世代を超える音楽体験 ソールドアウトのファイナル東京公演で魅せたローラズの圧倒的なアンサンブルと無二の音楽性をレポート

どのセクションもどの曲も山場続きなのだが、中でも白眉だったのは複雑な構成とリズムの変化を持つ「転校⽣ | a new life!」からの中盤の流れだ。まず「転校⽣ | a new life!」は優しいアコギの音色に乗る井上の柔らかなボーカルがどこか郷愁を誘う。すべての楽器が同じリフを連続して刻むセクションから、厚みを増し揺蕩うインスト部分を経てオールディーズの名曲めいた最後のセクションに至るまで、そのすべてが濃縮された映画のようだ。しかもステージ上を照らす照明はまるで日が暮れていく放課後の教室にも見えて学生時代の記憶を猛烈に揺さぶられた。感動という言葉で済まない想いが大きな拍手に込められていたと思う。すかさず「waltz | ワルツ」の3連のギターリフで名曲の連続に沸き立つフロア。

ファンの熱量を正面から受け止めてメランコリックなメロディに明確に歌を乗せていく井上の歌姫然とした貫禄が素晴らしい。この日、楽器のバランスの良さもあるだろうが、井上が歌う歌詞一つひとつの機微がこれまで以上にはっきり受け取れたことも、曲を味わい尽くせた理由だろう。



メランコリーに浸かった体を「Young life」のイントロのSEが目覚めさせ、ツボを押さえたギターリフも相まって躍動させる。「明日死んだとしても別に構わないけれど、死んでもいいような今夜を探して歩くんだ」という、若さのひとつのあり方は『合歓る』の物語とは別なようでいて、ローラズの曲の中で生きる人物像として繋がって聴こえてくる。ライブで聴かせたい曲を選んで効果的に並べたと言われたらそれまでだが、「Young life」、そして次の「brighter brighter」という、少なからず生き方が現れた一人称の楽曲、しかも現体制のローラズの認知が広がった楽曲である意味は大きいと思う。そしてそこで終わることなく「灯火管制の夜」まで中盤のセクションに盛り込んだことで、『合歓る』という映画の登場人物がどんな人物像なのかまでを飲み込めたように感じた。これは曲順が起こすマジックではないだろうか。



そこから大きなグルーヴを持つ「プラットフォーム | platform」へ。生で地声のメロディを歌い、ファルセットを同期で重ねるスタイルだが、淡々と進みつつ熱量を増していく声が胸に迫る。10代の頃、自分だけが知っているあの子の秘密とか、ふたりだけが共有していることとか、そうした瑞々しく無敵な感情が去来する。



ロックナンバーのあとは来たるニュー・アルバム『合歓る -bridges』での新しいアプローチを象徴する「ライター | lighter」が披露された。イントロからしてカラフルでトライバルというユニークさだが、転調して景色が変わるAメロにゾクッとする。

低い音程が生み出す井上の新しい歌の魅力、礒本のパッド使いなどでも瞬間瞬間に新鮮さが更新されていくのだが、リズムも一定ではなく、ギターもベースも情景を作るようなアレンジが生バンドで展開されていく醍醐味は、ライブでの凄みも増していた。またしてもフィニッシュと同時に自ずと上がる歓声。「ライター | lighter」で受けた感銘に引っ張られているこちらを軽やかに「mr.ambulance driver |ミスターアンビュランスドライバー」のビートがさらっていく。フロアの天井のライトの点滅がサイレンの光を思わせたのも気が利いている。それはフロアが自然と躍動し始めたタイミングにもハマっていて、久々に鳴らされた「sad number」にストレートなリアクションが生まれた。もはやインディロックが何と定義できない時代になった感もあるが、ここの2曲の煌めきはほかのジャンルにはないものだ。



Laura day romance、ジャンルと世代を超える音楽体験 ソールドアウトのファイナル東京公演で魅せたローラズの圧倒的なアンサンブルと無二の音楽性をレポート

Laura day romance、ジャンルと世代を超える音楽体験 ソールドアウトのファイナル東京公演で魅せたローラズの圧倒的なアンサンブルと無二の音楽性をレポート

Laura day romance、ジャンルと世代を超える音楽体験 ソールドアウトのファイナル東京公演で魅せたローラズの圧倒的なアンサンブルと無二の音楽性をレポート

次回のホールツアーについて井上が述べたあと、『合歓る -walls』の先行配信曲でもあり、この1年のモードの端緒になった「渚で会いましょう| on the beach」が本編ラストにセットされた。印象的なギターリフのイントロも、簡単ではないリズムの構成も、バンドもファンもすっかり体に馴染んだ感もあり、エンディングに向かって大きな渦を巻くように広がるアンサンブルはそれぞれにとっての海を残すようだった。随所にフックを挟みつつも、ソロプレイが目立つことなく6人全員でトータルな作品を立ち上げるLaura day romanceの哲学に圧倒された本編だった。



アンコールではニュー・アルバムから「プラトニック| platonic」と、配信リリースされた最新曲「ランニング・イン・ザ・ダーク | running in the dark」も初披露。「ランニング~」の言葉数の多いメロディに新鮮さを覚えたが、歌詞の内容も含め『合歓る -bridges』の全容は果たしてどんなものになるのだろう?と思いを馳せたファンもきっと多かっただろう。リスナーが自然体でいてくれることで、自分たちも自然体で活動できていると感謝を伝えた井上。

高い完成度を貫いてきたこの日ラストの「リグレットベイビーズ」はまるで温かなリビングに帰ってきたような安堵を伴って聴こえたのだった。



Laura day romance、ジャンルと世代を超える音楽体験 ソールドアウトのファイナル東京公演で魅せたローラズの圧倒的なアンサンブルと無二の音楽性をレポート

冬フェスなども経て、2026年3月から4月にかけて巡る初のホールツアー『Laura day romance hall tour 2026 “Fixing a hall“』ではどんなステージを見せてくれるのか。ジャンルや世代を超えてイマジネーションを揺さぶるローラズの音楽が広がる今、楽しみでならない。



<公演概要>
『Laura day romance tour 2025 a perfect review』
2025年11月23日東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)

【Set list】

1. happyend
2. sweet vertigo
3. 透明
4. 5-10-15 I swallowed | 夢みる⼿前
5. Sleeping pills | 眠り薬
6. Amber blue | アンバーブルー
7. heart
8. 転校⽣ | a new life!
9. waltz | ワルツ
10. Young life
11. brighter brighter
12. 灯⽕管制の夜
13. プラットフォーム | platform
14. ライター | lighter
15. mr.ambulance driver | ミスターアンビュランスドライバー
16. Sad number
17. 渚で会いましょう | on the beach
EN1. プラトニック | platonic
EN2. ランニング・イン・ザ・ダーク | running in the dark
EN3. リグレットベイビーズ



<リリース情報>
後編アルバム
『合歓る - bridges』

2025年12月24日(水)発売
CDの予約はこちら: https://lnk.to/Ldr_wallsorbridges



<公演情報>
『Laura day romance hall tour 2026 "Fixing a hall"』

3月15日(日) 宮城 トークネットホール仙台 大ホール
3月28日(土) 福岡 福岡国際会議場 メインホール
4月4日(土) 北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
4月10日(金) 大阪 NHK大阪ホール
4月11日(土) 愛知 岡谷鋼機名古屋公会堂 大ホール
4月16日(木) 東京 LINE CUBE SHIBUYA

オフィシャル2次先行(抽選)
受付期間:12月20日(土) 12:00~1月7日(水)23:59
https://w.pia.jp/t/lauradayromance2026/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2563875&afid=P66)



Laura day romance オフィシャルサイト

https://lauradayromance.com/



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