『千代田の大奥―時代へのまなざし―』日比谷図書文化館で 楊洲周延が手掛けた浮世絵の大ヒットシリーズ全40点を公開
楊洲周延画《千代田の大奥 観菊》(千代田区所蔵)

明治の浮世絵師、楊洲周延(ようしゅう・ちかのぶ)の代表作のひとつ《千代田の大奥》を全点公開する『千代田の大奥―時代へのまなざし―』が2025年10月1日(水)~11月9日(日)、千代田区立日比谷図書文化館で開催される。

明治20年代になり、江戸期には禁じられていた、江戸城大奥の暮らしや風習、将軍家に関わることなどが絵画の中で描かれるようになった。

明治20年代頃から江戸を懐古するムーブメントが起き、楊洲周延もその担い手のひとりとして、作品の中で江戸時代を表現する。なかでも大奥の女性たちを華やかに描いた《千代田の大奥》は、人々の大奥のイメージの醸成に影響を与えたといわれている。四季の風物詩とともに女性たちの日常が色鮮やかに描かれ、発売当初より人気を博す大ヒット作となった。この展覧会は、千代田区内在住のコレクターから寄贈された《千代田の大奥》40点組を全点公開するという貴重な機会となる。

楊洲周延は、若い頃から歌川国芳ら歌川派の絵師に師事しながらも、幕末の戊辰戦争では旧幕府軍に加わり、榎本武揚らとともに箱館戦争に参戦した経験を持つ異色の絵師だ。40歳となる明治10年頃、刀を絵筆に持ち替えて、絵師として本格的に活動を開始。優美な美人画を得意とし、ほかにも役者絵、戦争絵、歴史画など、「明治」という時代をさまざまに表現した。

ほかにも「時代を振り返る」というテーマに合わせ、明治22(1989)年8月に行われた「東京開市三百年祭」に関する記録や、かつて江戸幕府に仕え、明治維新後、それぞれの道を歩んできた旧幕臣に関する資料も公開する。明治の人々が過ぎ去った江戸という時代をどのように捉え、そこに何を見ていたのか、まなざしを想像しながら楽しみたい。

『千代田の大奥―時代へのまなざし―』日比谷図書文化館で 楊洲周延が手掛けた浮世絵の大ヒットシリーズ全40点を公開

《江戸開府三百年祭上野東照宮社前之図》(『風俗画報』第9号、千代田区所蔵)
『千代田の大奥―時代へのまなざし―』日比谷図書文化館で 楊洲周延が手掛けた浮世絵の大ヒットシリーズ全40点を公開

《(御対面所向地絵図)》(千代田区指定文化財「江戸城本丸・西丸御殿建築図面」、千代田区所蔵)
『千代田の大奥―時代へのまなざし―』日比谷図書文化館で 楊洲周延が手掛けた浮世絵の大ヒットシリーズ全40点を公開

市岡正一著『徳川盛世録』(千代田区所蔵)



<開催情報>
企画展『千代田の大奥ー時代へのまなざしー』



会期:2025年10月1日(水)~11月9日(日)
会場:千代田区立日比谷図書文化館 1階 特別展示室
時間:10:00~19:00、金曜は20:00まで、日祝は17:00まで(入室は閉室30分前まで)
休館日:10月20日(月)
料金:一般500円、大高300円 ※千代田区民は無料
公式サイト: https://www.edo-chiyoda.jp/tenji_koza_kodomotaikenkyoshitsu/tenji/1/589.html

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