大人になりきれない大人たちへ。岩田剛典の”心の老化“を止める方法
(撮影/梁瀬玉実)

岩田剛典が映画『金髪』で初めての教師役に挑んだ。彼がこれまで演じてきた中でも「ダントツにダサい主人公」という市川健太は、自分が“おじさん”になっていることに気が付いていない30歳の中学校教師。劇中に出てくる金髪の生徒たちに負けないくらい個性的で独特なキャラクターだ。毒づき、うろたえ、爽やかぶる姿は、普段の岩田とのギャップが満載。タイトルは『金髪』だが、金髪の生徒が主人公ではなく、金髪にしてきた生徒たちの問題に立ち向かう担任教師が主役の物語になっている。



市川は、視聴者の目線で心の声を代弁してくれている

大人になりきれない大人たちへ。岩田剛典の”心の老化“を止める方法

大人になりきれない教師が生徒たちに振り回されながらも成長していく姿を描く『金髪』。アジア最大の企画マーケットのひとつ「香港アジア・フィルム・ファイナンシング・フォーラム」IDP部門で、非香港映画の企画大賞を受賞した作品。奇抜なストーリー展開と個性豊かなキャラクターが絡み合うブラックユーモアに岩田剛典が奮闘した。



「インタビューで皆さんから『新境地開拓の役ですね』みたいなことを言っていただくんですけど、自分の中では、結構今までも攻めてやってきているので、そう感じてなかったんで嬉しいですね。コメディはポジティブな感情でいられる時間が多いから、楽しい撮影でした。演じたのは、今まで演じた中で、ダントツでみっともなくてダサい主人公です。日本特有の社会問題や固定観念を今までになかったような切り口で皮肉と愚痴と笑いを交えて描く、新感覚の映画になったと思いますね」



大人になりきれない大人たちへ。岩田剛典の”心の老化“を止める方法

今作は岩田にとって初めての教師役。爽やかで生徒から愛される教師かと思いきや、演じるのは、若手でも中年でもない年頃で自分を客観視できないちょっと痛い中学校教師の市川健太だ。監督は、「岩田さんは笑顔が素敵じゃないですか。でも、もしあの笑顔の向こう側が空っぽだったら面白いなと思ったんですよね。岩田さんが演じることでユニークなキャラクターになるし、作品の面白さがより深まると思いました」とオファーの理由を語っている。岩田自身は、どんな役どころと捉えて演じたのだろうか。



「市川は、どこにでもいる面倒臭がり屋な若者だと思いますね。だからこそ、共感の対象になるというか。映画全編を通して、視聴者の目線で心の声を代弁してくれている、そういう存在かなと思ってます。痛い教師ではありますが、僕も感情移入できたんですよね。何かこの役のために役作りしたみたいなことは、じつはなくて。意外と役にすんなり入れたんです。坂下監督が手掛けられた脚本が秀逸だったんで、本当に脚本のままに演じました」



思っていることと言っていることが違うのは、生きてく上で必要なスキルでもあるのかな

大人になりきれない大人たちへ。岩田剛典の”心の老化“を止める方法

人当たりはいいが、普段から意識していないと自覚しないような、発言や行動がちょっと残念な市川。確かに他人から言われてみたら、ちょっと大人げなくてダサいと思う人の言動のオンパレード。岩田が市川をちょっとみっともないなと思ったのは、どんなポイントか気になるところだ。



「市川は、金髪デモを計画していた張本人の板緑と手を組んで、窮地から脱出しようとするんですが、板緑とのやりとりが多い後半になるにつれて、生徒より市川の方が子供みたいになっていく印象を受けましたね。自分の面目を取り繕うとすればするほど、幼児性を感じましたし、そこは正直あまり共感できないですけど、人間らしくて面白いなって思いました。絶妙に共感できる、若中年あるある描写が多くて、その世代の方や予備軍の方には刺さると思います。共感しすぎて、自分が嫌になっちゃうかも(笑)」



市川は担任を受け持つ生徒十数人が髪を金髪に染めて登校してくるという、教師人生を揺るがす事件に巻き込まれる。騒動が起きた夜、彼女からは『結婚ってどう考えている?』と、切り出され、仕事の問題と人生の決断が一挙に押し寄せ、慌てふためく。その時の心情は、非常に人間らしく映ったが……。



「本音と建前みたいなのは、誰でもあるじゃないですか。もちろん僕にもありますが、市川の心の声のモノローグでは、人間の腹黒さが描かれています。思っていることと言っていることが違うっていうのは、本当に生きてく上で必要なスキルでもあるのかな。市川の場合、要領がいいようで、じつは周囲に見透かされてるんですけど、その感じが人間っぽくて、自分にも少なからずあるなって共感できました。僕も何か不満があると、心の中で自分との対話をすることがあるので……(笑)」



コメディタッチなシーンは、監督のセンスが光っています

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市川には恋人の赤坂美咲(門脇麦)がいるが、彼女に愚痴をこぼすシーンが多々ある。そのシーンでは、早口でまくし立てるように話すのが印象的だ。ドラマ『DOCTOR PRICE』(日本テレビ系)で長台詞と格闘していたのが記憶に新しいが、『金髪』も怒涛の長台詞のシーンが……。



「時系列でいくと『DOCTOR PRICE』の方が『金髪』より最近に撮影していたんですよ。こんなにセリフ量が多い作品は、もうこの先出会うことはないだろうと思ったんですけど、意外とすぐ出会いましたね(笑)。『金髪』は、確かに長台詞が大変でしたけど、お芝居に集中できる環境下でもあったので、楽しかったです。市川がしゃべるテンションは、めっちゃ好きな漫画を語る時の口調のスピードですよね。あれはもはやね、オタク口調。普通は、あのスピードで喋んないですから。僕だったら、『ONE PIECE』を語る時の口調ですね(笑)。市川はちょっと変わった人間なんだろうなと思いながらも、会話劇でもあるんで、コメディのテンポ感を意識して、門脇さんや板緑役の白鳥玉季ちゃんと話し合いながらどんどんテンポアップをしていった感じでしたね」



坂下組の現場は、俳優たちが持ち寄ったものを尊重し、最適に導いていくスタイル。俳優たちは的確に監督のオーダーに応えていったという。岩田は、市川が金髪デモを起こした板緑と口論するシーンでは、とくに白鳥とテンポ感を合わせることを意識したそう。



「もうね、お互いに台詞がとにかく大変で。どんなに頭に叩き込んでいても、あんな早口で喋るのは、口の筋肉もそうなんだけど、大変な作業ではあるので。お互いに『噛んだら、ごめんね』って言いながらバトンを繋ぐ感じでしたね。台詞を言い終わったと思ったら、すぐ自分の番で、ブレイクがなく…。すぐに次のセリフ始めないといけない。あの会話劇は、自然に見えるかもしれないですけど、人の話をお互いに聞いてない人の間の詰め方なんで、その難しさはやっぱありました」



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その市川と板緑の会話劇は、とくに世代ごとの価値観の違いが浮き彫りになるシーンが面白いところだ。そこでは、どのようにして面白い状況を生み出すかにフォーカスをあてており、決してコメディチックな演技をしているわけではないのに笑ってしまう。



「市川と板緑のシーンは、ちょっと自堕落した社会人と、正論を言ってくる中学生という構図で。それだけでも結構面白いんですけど、プラス、市川が言い返すんです。でも言いたいことがあまりまとまらなくて不発っていう(笑)。よく新人社員のにありがちな話だなと思いました。コメディタッチなシーンは、監督の落としどころ、センスが本当に光ってると思います。普通に考えたら、論破して終わるか、論破されて終わるところなんですけど、中途半端になったことでそれがより面白くなるっていう感じが、監督の色なんでしょうね」



学生時代の校則は?

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金髪にして登校してくるという生徒による金髪デモは、校則に反発することから始まる物語。事態は教育委員会まで動き出す始末だが、髪の色が明るいと校則違反など、岩田が学生時代、反発したくなる校則はあったのだろうか。



「中学までは、結構校則が厳しかったけどもう従うのが当たり前だったので、あまり疑問に思うこともなかったんですよね。他校との接点もなかったので、『うちの学校の校則は厳しすぎておかしい』とか、そんな思いを抱くこともなく、大人しくしてました。高校生になってからは男子校で、もう校則があってないようなもの……みたいにめちゃめちゃ緩くなったんで。逆に言うと、本当に高校デビューという感じで(笑)。髪の色を変えたり、ピアスを開けたり、制服も着崩したり。革靴を履かずにスニーカーでしたし。めちゃめちゃ自由でした」



校則は守るべきルールだが、プライベートでのマイルールを尋ねると。「なんだろうなぁ」と一瞬考えてから、回答してくれた。



「疲れていても、シャワーですまさずにちゃんと湯舟に入ることですかね。30分くらいは入っていると思います。汗を流すことでスッキリできるので。入浴剤は毎回入れないですけど、たまに発汗作用のある入浴剤を入れることもありますね。結構、ひと汗かけますから」



大人になりきれない大人たちへ。岩田剛典の”心の老化“を止める方法

本作ではちょっぴりイケてない先生を演じた岩田が学生時代に出会った先生で印象に残っているのはどんな先生なのだろうか。



「男子校だったんで、先生に皆、あだ名をつけるんですよ。体育教師で“ランボー”って呼ばれている先生がいたり、数学教師で“チャリオ”って呼ばれている先生もいましたね。本人もそう呼ばれていることは、気づいていたんじゃないかな。僕が高校に入学した頃からもうそのあだ名が浸透していたので、先輩方から受け継がれた呼び方でした。あだ名があるとちょっと親しみがわく感じがしますよね。いまでも交流のある先生はいないんですが、記憶に残っています」



心を老化させないために心がけていること

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岩田が演じたのは、いつまでも若者で何事も順風満帆だと思っているイタい大人。大学の友人と話す中で自分がもうおじさんであることを自覚し始めるが、本作にはおじさん予備軍のあるあるが詰まっている。岩田自身、おじさん予備軍にならないために心がけていることとは?



「劇中では、市川が『まだまだ若いから』って自覚なく言うシーンもありますが、年齢で言い訳するのは、おじさんですよね。『もう、俺おじさんだから』って言いだしたら、駄目ですよね。気を付けて、言わないようにはしています。見た目については、悩みますよね。大人にシフトするか、しないのか……。例えばですけど、分かりやすく髭生やして大人っぽい路線に行くこともできるし、いろんな選択肢があるじゃないですか。ただ今のところは、見た目を変えるつもりはないんですよね」



劇中で中学生たちは、現実を見つめ、若者たちなりに変化していく。大人たちにはそう簡単に分からない姿が描かれる。年齢を経ていくことを受け入れることは大切で大人になりきれない大人はイタいけれど、心の老化は、もっと残念。心が枯れないように心がけていることはあるのだろうか。



「好奇心を持っていろんなことに挑むことですかね。いろいろな経験値が増えると、どうしても好奇心って失っていきがちだと思うんです。やってもないのに結果がなんとなく見えてしまったり、現実が分かってるからこそ、“どうせ”って自信をなくしたりしがち。やっていることに飽きてきちゃったり、こんなもんだろうと予想がついてきちゃうと、どうしても枯れてっちゃうんですよね。でも、意外とやってみたら良かったなっていうことはあると思うので、自分の場合、知らない世界をたくさん見てみたいと思っています。やってないことや知らないことがあったら、それはどんなものなのか知りたいという欲求は枯れないですね。なので、幸い飽きずにすんでいるんですけどね(笑)」



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国民的スターであり、無敵の人生を歩んでいそうな岩田だが、自信をなくす瞬間なんてあるのか気になるところだ。



「いやいや全然ありますよ。もう去勢を張りまくりですよ(笑)。やっぱり人前に立つ仕事をしているので、自信を持つことは大切。自分に自信のある、そういう人物像に憧れがあるんで、自信を持つための努力はしたいですよね。表舞台に出る時は、ガンちゃんを演じる(笑)。プロフェッショナルはどうあるべきか理想の姿を演じるのが自分の美学ですね」



11月からは自身初となるアジアツアーの開催が決定しており、ソロアーティストとしても活躍の幅を広げている。今年も残り1ヶ月ちょっと。やり残したとことや、年内中にやっておきたいことはあるのか聞いてみると……。



「どこか国内旅行へ行きたいですね。時間があったら、友達とどこか小旅行に行きたいです。年に数回、葉山に行くんですが、葉山もいいですね。まだここへ行きたいという場所も決まってないですけど、温泉でゆっくりして、美味しいものを食べてリフレッシュできたらいいなと思っています」



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<作品情報>
『金髪』



2025年11月21日(金)、全国公開



大人になりきれない大人たちへ。岩田剛典の”心の老化“を止める方法

<キャスト&スタッフ>
主演:岩田剛典
白鳥玉季、門脇⻨、山田真歩田村健太郎、内田慈
監督・脚本:坂下雄一郎 音楽:世武裕子
配給:クロックワークス
©2025『金髪』製作委員会
2025年/日本/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/103 分/G

公式 HP: kinpatsumovie.com
公式 X :@kinpatsumovie #映画金髪




撮影/梁瀬玉実、取材・文/福田恵子



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