
マーベル・スタジオの新作映画『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』が全世界で大ヒットを記録している。本作は“ヒーローチームの原点”といってもいい4人の活躍を描いた作品で、タイトルの通り、主人公の“ファースト・ステップ=最初の一歩”が楽しめる作品だ。
本作の主人公は宇宙飛行中に未知の宇宙線を浴びて、驚異的な特殊能力を持った4人のメンバー。リーダーのリード・リチャーズ/ミスター・ファンタスティックは天才科学者で、身体をゴムのように自由自在に伸縮させることができる。スー・ストーム/インビジブル・ウーマンは自身の身体を透明化させ、目には見えないエネルギーを操り、フォース・フィールドを作り出す。
スーの弟ジョニーはチーム最年少のメンバー。全身を高熱の炎で包み込み、高速で空を飛ぶことができることから、ヒューマン・トーチ(たいまつの灯り)の異名を持つ。全身が岩のような物質に変化したベン・グリムは“ザ・シング”の名で知られており驚異的なパワーを発揮する。

彼らはヒーローになる前からチームなのが特徴。リードとスーは夫婦で、スーとジョニーは姉弟、リードとベンは大親友だ。そもそもが家族的な関係の4人が揃ってヒーロー活動しているのがファンタスティック4だ。映画は先ごろ公開され、全世界のオープニング興収が2億1800万ドル(約322億6400万円)を記録。観客からの評価、評論家のレビューともに好調だ。
正直、ここ数年のマーベル・スタジオ作品は良作もありながらも作品数が多く、劇場公開作だけでなく配信作品もあり、それらが入り混じって一部の観客からは“楽しむには長い予習が必要”と思われていた。
つまり、本作はスタジオが意図したか、していないかは不明だが、巡り巡ってマーベル・スタジオ映画の最初期、つまり、2008年の『アイアンマン』や2011年の『マイティ・ソー』、ファンの方に伝わる言い方だと“フェーズ1”のようなテイストがある。手ぶらで映画館に出かけていって、新しいキャラクターに出会える。この2時間だけで楽しめて、以降にも期待が持てる予感がする。

そして本作はヒーロー映画の”定番”と思いきや、ここにしかない妙に明るい世界観と痛快な楽しさがある。世の中にはシリアスなヒーロー映画もあるし、現実的な格闘が見せ場のヒーロー映画もある。それも楽しい。しかし、本作は明るくてレトロな都市で、青くて目立つカッコいいスーツのヒーローが、無駄に豪華なビルから揃って出動し、手足がビローンと伸び、炎に包まれながら空を飛び、敵は怪獣クラスにデカくて“ドシンドシン”と音を立ててやってくる! 楽しい! アイアンマンやスパイダーマンにはない、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの楽しさとも違う、ファンタスティック4でしか描けない楽しさがここにはある。
本作は新たな観客を迎え入れる懐の広さと、シリーズを観てきた観客が「この楽しさ、実は新鮮」と思える内容を備えている。この”ありそうでなかった楽しさ”が『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』の最大の魅力かもしれない。
『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』
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