urema、9年の沈黙を破った東名阪ツアー初日新代田FEVER公演をレポート  止まっていたマシンを通電させ満員のフロアを沸かせた奇跡の夜
urema tour 2026 『遠くにおいてきた光』 Photo:シンマチダ

Text:石角友香 Photo:シンマチダ

2017年、惜しまれつつ解散したスリーピース・オルタナティヴロックバンド、urema。昨年11月の再結成の発表には驚きも混ざった歓喜の声が上がったが、程なく今年1月28日には新曲「暈けた脳」もリリース。

約9年間のメンバーそれぞれの経験と不変の価値観が昇華されたこの楽曲も加わった再結成後初のツアー『urema tour 2026“遠くにおいてきた光”』は東名阪すべての公演がソールドアウト。その初日公演が、2月1日東京・新代田FEVERで開催された。



このバンドでなければ気づくことのない自分の感情や、何かが壊されて新生する感覚。解散前の活動期にライブを経験してこなかった自分のような人間ですらそう思うのだから、やはりuremaは唯一無二だ。今回の再結成に際してのインタビューでドラマーの芦原崇大がごく淡々と再結成を「やるんやったらやる」と話していた理由がライブを体験することですんなり飲み込めた。止まっていたマシンに通電したのはギター&ボーカルでソングライターの長江慧一郎ではあるが、止まっているように見えていただけなのでは? と思えるほど、マシンの内部の尋常ではない強さがそこにはあった。ソールドアウトした満員のフロアは久々の邂逅に緊張感が否応なく滲む。9年もの間、各々の中で大切に堅持されてきた記憶は単に再結成を喜ぶだけでなく、uremaの音楽から受けた衝撃の記憶を起動させるからだ。



悲劇的なトーンのオペラ音楽からメランコリックなダークコアへとSEが移り変わる中、暗がりのステージに3人が現れる。ステージ下手から長江、髙橋涼馬(ベース)、芦原と横一列のセッティングだ。最初の一音に集中していると、その心構えすら揺るがす髙橋の重く鋭い5弦ベースの響きを発端に凄まじい轟音。顔も服も、持っているペンもノートも、すべてが吹き飛ばされそうに振動しているのが分かる。

これをやるために彼らはここにいる、そう直感した。



urema、9年の沈黙を破った東名阪ツアー初日新代田FEVER公演をレポート  止まっていたマシンを通電させ満員のフロアを沸かせた奇跡の夜

9年ぶりのライブ1曲目は2012年リリースのEP『carpe somnium』の1曲目であり、最も聴かれている「さむいさむいこおりのなか」だ。轟音かつどこまでも冷たいその音像は曲が示唆する身動きが取れない怖さを実際の体感に転換し、長江の絶叫もリアルに響く。エンディングと同時に長江が「こんばんは、uremaです。お久しぶりです。初めまして。」と、今ここで対面するすべてのオーディエンスに挨拶。1曲目、いや正しくは最初に3人の音が重なった瞬間、すでにこの間のブランクが信じられなかった。続く「重力と意識」では長江のファルセットに髙橋も影のようにコーラスを重ねる。この声の重なりはこの後の演奏でも度々際立つ。さらに芦原のテクノ的なビートのタイトさがメランコリックに終始しないフィジカルの強さを付与する。また、照明も曲のストーリーと演奏を繊細に際立たせることを「チルクラブ」の狂気的な赤一色の演出で体感。彼らの世界観への理解が深い面々もまた、全力でこの再始動の場にいることが感じられた。



urema、9年の沈黙を破った東名阪ツアー初日新代田FEVER公演をレポート  止まっていたマシンを通電させ満員のフロアを沸かせた奇跡の夜

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urema、9年の沈黙を破った東名阪ツアー初日新代田FEVER公演をレポート  止まっていたマシンを通電させ満員のフロアを沸かせた奇跡の夜

4曲目の「永遠の森」から10曲目の「笑う」まで、バンド初の試みとして、ソロで活動するギタリスト/作曲家の宇都宮 航がサポートギターで加わったのだが、そのアプローチもバンドが全体の音像で何を聴かせたいのかが明快だ。まず「永遠の森」では宇都宮のオブリガートや空間系のサウンドと芦原の連続した小刻みな打音がサスペンスフルなイメージを増幅。続く「夏」は今では甘い夢のような長江の歌と、背後にある恐れを表すような髙橋の高音のベースラインとルーパーによって敷かれたトーンが、文字通り鳥肌モノ。間奏で低く蠢くベースはまるで身体を食い破るような体感だ。架空の子ども時代の記憶をたどるような流れだが、次の「ナイチンゲールとばらの花」は速い8ビートならではの愚直な疾走感が刺さる。どの曲もそうなのだが、演奏が終わるたびに深く息を吐いてしまう。大げさじゃなく、自然な呼吸をちょっと忘れているのだ。



共に全力で走ったような感覚のあと、巨大な怪物の足音のようにビートが響き「ピアノのある部屋」へ。相反するようなディレイ、さらに空間を塗り込めるシューゲイザー的なサウンドが音の壁を作る。だが、一つひとつの音は澄んでいて濁らない。それはライブ中ずっと驚かされた部分で、長江が作る曲をいかに個人の解釈で立体化するのか? をリアルタイムで実現するのだ。髙橋のアルペジオ、ビート、歌メロがそれぞれ違うベクトルからサビ前で出会うような「剥がれた日」の構成も美しい。

序盤の自然災害めいた衝撃とはまったく違う場所にいる感じだ。因みに彼らのライブでは長江が「ありがとう」と言葉を発するまで誰も拍手しない。空気を読むと言うより、曲間の残響もイントロの一音も演奏として捉えているからではないだろうか。



urema、9年の沈黙を破った東名阪ツアー初日新代田FEVER公演をレポート  止まっていたマシンを通電させ満員のフロアを沸かせた奇跡の夜

長江がライブ自体は9年ぶりで新代田FEVERのステージに立つのは12年ぶりだと話し、「新曲を作ったんでやります」と告げ、歌始まりの「暈けた脳」に突入するはずが、長江が入りをミスしたようで、空気が若干和む。そこからむしろおおらかに厚い轟音が放たれた印象で、ここまでの緊張感とはまた違う生々しさ。抽象的な夢想ではなく、現実に起こる離脱状態での心身の置きどころのなさが振り下ろされる斧のようなザックリしたアンサンブルで鳴らされる。歌詞も現実と地続きの内容に変化したと長江が語っていたように“ただ終わりたい、何も生まれない日を”など、彼とまったく同じ状況でなくても自然に耳に入り、自分の焦燥と重なっていった。そしてサポートが存在することの最も顕著な意味合いが現れたのが、宇都宮が鳴らすパッドも含めすべての楽器が変拍子のリフを展開した「笑う」だ。リズムに乗ろうとしてもつっかえるニュアンスはアブストラクトなダンスミュージック的で、ライブアレンジはさらにそのことを体感できた。



再び3人だけの演奏を始める前にメンバー紹介を挟み、復活とここまでの熱演に心からの拍手が送られる。「2011年に結成した頃はいろいろなことを思っていて。その頃の曲をやります」と紹介されたのは1st EP『死の家の記録』から「夢みる機械」。

初期の曲らしいギターロックバンド然としたシンプルさだが、幼さが残るオリジナルから時を経た分、長江の変化と不変が窺える曲でもあった。比較的ストレートな激情から、絶望が諦観に移り変わるように淡いトーンの「月がいない」へ移行する流れはとてつもなく悲しい。髙橋がルーパーで作る深い湖のような背景音、メロディアスなベースフレーズと硬質なギターとテクノ的なリムショット。曲に奉仕しながら自分の色を出す。普通のことではないかもしれないが、3人の演奏を見ていると奇をてらった部分は皆無だ。



urema、9年の沈黙を破った東名阪ツアー初日新代田FEVER公演をレポート  止まっていたマシンを通電させ満員のフロアを沸かせた奇跡の夜

歌の素朴さと断ち切るようなクランチなリフの対比にゾクゾクする「神戸市立海老公園」。届くことのなかった思いも後悔も浸ることが許せない、そんな効果を生むアレンジに戦慄してしまう。そして後半にアンサンブルが豊かに動くことで救いを感じたのも事実。歌詞が前向きに変化するのでも、まして熱いMCがあるわけでもなく、ただ出ている音と声にオーディエンスの感情が乗っていくのだ。長江の「ありがとうございました。最後の曲です」の一言から、重いビートと低くアタックの強いベースが無機的なファンクとでも称したい「鏡」へ。長江の歌メロも重なる髙橋のコーラスはどちらも不安定で探るような不思議な音階だ。

少ない音数から次第に空間を塗り込めるようにギターが鳴らされ始めると、激情とはまた違う長江の感情がエフェクターにもアンプにも直結しているような感覚に陥るのだ。こうして外に音を発することのなかった期間をどうやり過ごしていたのだろう? と思うぐらいに。長江はギターをフロアに差し出し、そして高く掲げフィードバックノイズを放ったままステージを後にした。1時間強をこれほど集中して過ごしたのはいつぶりだろう?それぐらいほかのことが考えられないまま本編が終了した。



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体力的なものより、その集中力で消耗しているのでは?と勝手に想像したが、アンコールは再び宇都宮も加えた4人でことさら告知をするでもなく音が鳴らされ、初期ナンバー「羊の死体」がザラついた感触の演奏で届けられた。渾身の力を振り絞った長江が袖に去る様子はどんな言葉より雄弁だったと思う。



また、4月12日(日)にサーキットイベント『SYNCHRONICITY’26』、6月7日(日)には所属レーベルOaikoのオムニバスイベント『Oaiko FES 2026』への出演も決定している。

<公演概要>
urema tour 2026 『遠くにおいてきた光』
2026年2月1日 東京・新代田FEVER

【Set list】

01. さむいさむいこおりのなか
02. 重力と意識
03. チルクラブ
04. 永遠の森
05. 夏
06. ナイチンゲールとばらの花
07. ピアノのある部屋
08. 剥がれた日
09. 暈けた脳
10. 笑う
11. 夢みる機械
12. 月がいない
13. 神戸市立海老公園
14. 鏡
EN.羊の死体



<リリース情報>
「暈けた脳」

配信リンク: https://friendship.lnk.to/brainfog_urema



<ライブ情報>
urema自主企画『自動描写Ⅰ』

5月2日(土) 大阪・南堀江SOCORE FACTORY
開場 18:00 / 開演 18:30
出演:urema、ピアノガール

【チケット情報】
前売一般:4,000円(税込/ドリンク代別)
当日一般:4,500円(税込/ドリンク代別)

▼オフィシャル2次先行:3月11日(水)23:59まで
http://w.pia.jp/t/urema-zb1/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2665843&afid=P66)



<イベント出演情報>
『SYNCHRONICITY’26』

4月11日(土)・12日(日) ※uremaは4月12日に出演
Spotify O-EAST/Spotify O-WEST/Spotify O-nest/duo MUSIC EXCHANGE/clubasia/LOFT9 Shibuya/SHIBUYA CLUB QUATTRO/Veats Shibuya/WWW/WWWX/TOKIO TOKYO/ほか 
https://w.pia.jp/t/synchronicity26/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2563183&afid=P66)



『Oaiko FES 2026』

6月7日(日) 渋谷周辺5会場
▼オフィシャル2次先行:3月15日(日) 23:59まで
w.pia.jp/t/oaiko-fes/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2562821&afid=P66)



urema オフィシャルサイト

https://urema.fc2.page/





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