「人生は有限だから大丈夫」俳優・坂東龍汰が感じる逆境や嫉妬との向き合い方
坂東龍汰 (撮影/稲澤朝博)

もしも自分がマイノリティな立場に置かれたら? ――俳優・坂東龍汰に質問すると躊躇うことなく「乗り越える」と答えた。「僕はそういう状況や、そこから生まれる嫉妬に対して、むしろありがとう、と思うタイプです」と。彼のこのポジティブな考えの根源は、いったいどこにあるのだろう。坂東が初の日本語版吹替に挑戦した作品、9月5日公開の映画『ヒックとドラゴン』の話と合わせて聞いた。



「プロの声優さんがやるに越したことはない」それでも初挑戦を選んだ理由

「人生は有限だから大丈夫」俳優・坂東龍汰が感じる逆境や嫉妬との向き合い方

2017年にデビューし、2024年公開のアニメーション映画『ふれる。』では声優に初挑戦した坂東。今作『ヒックとドラゴン』では、そこから1年経たないうちに、自身初となるハリウッドの洋画吹替にチャレンジすることになった。



ヒック役はオーディションで決まったというが、本人的には「マジか」というのが本音だったそう。



「もちろん吹き替えのお仕事をやってみたいっていう気持ちがあったので、嬉しくはあったんですけどね。ただ、なにしろ、吹き替えのお仕事はやったことがなかったので…」といつになく控えめ。さらに「僕の個人的な考えですけど、作品って選ぶべきだと思うんです。吹き替えは特に。声が合ってる方が良いし、プロの声優さんがやるに越したことはないので。だから、その中で、僕がやる意味、というのは、改めて考えましたね」とリスペクトを込めて続けた。



その中で、自分がやる意味を考えたときに、決め手となったのは、日本語版吹替の制作監督から言われた主人公・ヒックと坂東自身のリンク具合だという。



「骨格や自分の声、性格みたいな部分でヒックと僕のリンクする部分が多かった、と。そういうこともあって、お願いしたいです、と制作監督におっしゃっていただいたのが大きかったですね」



「人生は有限だから大丈夫」俳優・坂東龍汰が感じる逆境や嫉妬との向き合い方

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慣れないことだらけの現場、それでも「楽しかった」理由とは?

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そうして、挑んだ初の吹き替え。現場は兎にも角にも新しいことだらけだったよう。「洋画の声を当てるときって、実際に俳優さんが英語で話しているものを聞きながら日本語で当てて行くんです。なので、日本語が急に英語っぽくなったりして……。ってセリフもに釣られてしまいました」と茶目っ気たっぷりに回答。



特に初日は“尺”の部分にかなり苦戦したのだそうだ。



「アニメーション映画の場合は、時と場合によっては、まだ絵が完成していないパターンもあるので、僕がやった芝居の声に絵をつけてくれるというのもできなくないんです。でも、洋画の吹き替えの場合は声のトーンや、スピードが決められていて、そこの尺がちょっとでもオーバーするとダメ。すごくシビアなんです。プロの声優さんからしたら、なんてことないんでしょうけど、初挑戦の僕にとってはシンプルに難しかったですね。メイソン・テムズさんの声が聞こえてきて“あ、聞こえた!”と思って台本を見た瞬間には、もう二言ぐらい過ぎていて……。初日はそこの感覚に慣れるのにとにかく苦戦しました」



しかし、これまでに多くの場を経験してきた坂東。何度も繰り返すうちに徐々に慣れていき、最終的には感覚を身につけられたのだそう。「大事なのは焦らないことですね!遅れて出ていっても焦らないで、自分のペースでちゃんとセリフを言い切れば、ぴったり合う可能性もある」と笑顔を見せた。



「人生は有限だから大丈夫」俳優・坂東龍汰が感じる逆境や嫉妬との向き合い方

このようなエピソードを聞くと、慣れないことが多く、苦しかったのではないかと想像してしまうが、そう本人に聞いてみると「苦戦はしましたけど、すごく楽しんでできました!」と前向き。その理由について、次のように話してくれた。



「最初に日本語版吹替の制作監督とスタッフさんに“ヒックは坂東くんにぴったりだから”って言ってもらったのが、自信に繋がりました。変に“ヒックっぽくしなきゃ”とか思わず、“ぴったりだから”って言葉を信じよう、と。それで、自分のありのままにやればいけるかなって思えたんです。なので、ガイドから聞こえてくるメイソン・テムズさんのテンション感や、声のニュアンス、呼吸に合わせながら、伸び伸びと楽しめたなと思えます」



ヒックを演じたメイソン・テムズに思った初めての感覚

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物語の舞台は、バイキングの一族が暮らすバーク島。長年にわたり人間とドラゴンが戦いを繰り広げていた島である。そこに住む主人公のヒックは、族長ストイックの息子であり、将来は父のようになりたいと思っているが、ひ弱で失敗ばかり。発明好きでユーモアや優しさをもちあわせているというキャラクターだ。



そんなヒックとの共感ポイントについて「最初は自信がないけど、どんどん自信をつけていって、成長していく姿が描かれていて。そこがすごくこの仕事を始めた時のこととかとリンクして、感情移入できる部分が多かったです」と坂東。



さらにヒックを演じた俳優メイソン・テムズの演技については「彼のアプローチや表情、動きを見て、もしも自分がヒックを演じるなら、きっと僕もこうするかもしれないと思うところが多くありました。すごく不思議な感覚でしたね」と明かす。



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そんなヒックと坂東、さきほどから繰り返し“似てる”というワードが出てくるが、具体的には、どこが似ているのかと本人に質問。すると「僕が似てるなって思うというよりは、他人から見た坂東龍汰とヒックが似てるようで。嬉しいような……なんとも言えないような(笑)」と苦笑い。



ただ「人の見えている部分って、ごくわずかじゃないですか。この仕事をやっている以上、普通の人よりは知られているし、バラエティでの顔があったり、メイキングで見せる顔があったり、お芝居をしてる時の顔があったり……。結局のところ、いろんな顔を見せている中で出来上がって行った、僕のパブリックイメージが、きっとヒックに合うんじゃないかって思いました。根明だし、挙動がちょっと変で、人との距離が近くて……」と自身を分析。そう答えた上で「でもな、僕的にはヒックと僕って全然近くないんだよね。僕は自信はあるタイプだし……」と似ていないポイントについても明言した。



マイノリティな状況も動じない、嫉妬はしない

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この映画の冒頭でのヒックは、島の仲間にも家族にも馴染み切れず、分かり合える人が少ない、言ってしまえばマイノリティな状況に置かれている。



このような経験、誰もが一度はあることだろう。しかし、いつも明るい坂東なら、もしもヒックと同じような状況に置かれたとしても、どんどん味方を増やしていき、マイノリティではなくなっていきそうだなと感じた。



そのことを坂東に伝えると、彼は「疎外感を感じたこととかはありますよ。特に役者をやりたてのときとかは、嫉妬されることもありましたし。普通に生きてれば、誰だってありますよね」と意外な回答。



しかし、これに対して坂東は「人生は有限だから大丈夫。もちろん、その瞬間は辛いですけど、なんでも一時的なものだと思っちゃうタイプですね。」と彼のパブリックイメージそのもののような回答をしてくれた。



さらに「なんだかんだで続けていれば、ヒックがトゥースと出会ったように、いろんなことからヒントを得られて、いろんな人たちから信用されていって、支持を得ることってあると思うんです。だから、現実世界でも腐らないことが大切だよなって、思っちゃいます」と笑顔。



「人生は有限だから大丈夫」俳優・坂東龍汰が感じる逆境や嫉妬との向き合い方

そんな坂東自身は、他人から嫉妬されることについて受け入れられているようだが、誰かに嫉妬することはあるのかと聞くと、



仕事における嫉妬については「昔はしていましたけど、しなくなりました」とのこと。その理由を「仕事での嫉妬は、そういう感情になったときに、体力とか気持ちが振り回されるのがもったいないって思っちゃうようになって。ポジティブな方に変換される嫉妬だったら、ガンガンに受け入れればいいと思うんですけどね。ネガティブな方にいく嫉妬はもう考えてもしょうがないんで“もうやーめよ!”ってすぐ思います」



坂東龍汰は噓をつかないまっすぐな人だ。



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<作品情報>
『ヒックとドラゴン』



9月5日(金)全国公開



「人生は有限だから大丈夫」俳優・坂東龍汰が感じる逆境や嫉妬との向き合い方

©2025 UNIVERSAL PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

配給:東宝東和
監督:ディーン・デュボア 製作:マーク・プラット、アダム・シーゲル 
出演:メイソン・テムズ、ニコ・パーカー、ジェラルド・バトラー、ニック・フロストほか
日本語吹替:坂東龍汰 ほか
配給:東宝東和
映画公式サイト: https://hic-dragon-movie.jp/




撮影/稲澤朝博、取材・文/於ありさ



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