MYTH & ROID、オーイシマサヨシを迎えたツアーファイナルZepp Shinjuku公演「Zeppに立ってひとつの節目。大成功です!」
『MYTH & ROID One Man Live 2025 Summer Tour“Loved all long”』2025年7月27日 東京・Zepp Shinjyuku (Photo:大川晋児)

Text:斉藤貴志 Photo:大川晋児



アニメ『オーバーロード』のEDテーマ「L.L.L.」でデビューしてから10周年を迎えるMYTH & ROID。夏のツアー『Loved all long』のファイナル公演がZepp Shinjukuで行われた。

過去最多の12カ所を巡る締めに、初のZeppにして過去最大規模。世界でステージを重ねてきた風格も漂わせながら、さらに加速する風圧が会場を揺さぶった。



過去最大を謳ったZepp公演だが、そもそも昨年の秋ツアーの渋谷のライブハウスではギューギューレベルの満員。もうこの規模では無理だろう……というのが、率直に思ったところだった。



開演前のBGMが流れるキャパ1500人のZepp Shinjuku。2階席から目を落とすと、フロアはしっかり埋め尽くされていた。いつものことだが、外国人客も見受けられた。



暗転したステージにバンドメンバーが入ったのに続き、上手から現れた白いハットのTom-H@ckは一礼して、ギターのストラップを肩に掛ける。



MYTH & ROID、オーイシマサヨシを迎えたツアーファイナルZepp Shinjuku公演「Zeppに立ってひとつの節目。大成功です!」

下手から登場のKIHOWは宮廷を思わす衣装に、赤い布を結い合わせて腰まで伸びた髪飾り。静かに左手を上げてスタンドマイクの前に立ち、「Cracked Black」を荘厳に歌い出した。ゆかりの『オーバーロード』のスマホゲームの主題歌。



重低音が響くサウンドに、ハイトーンを駆使して淡々と歌いながらも、重みを醸し出す。

静寂が迫ってくる感じ、とでも言うべきか。そして、Tom-H@ckは泣きのギターを奏でた。



MYTH & ROID、オーイシマサヨシを迎えたツアーファイナルZepp Shinjuku公演「Zeppに立ってひとつの節目。大成功です!」

照明が赤くなり、バックコーラスからKIHOWが「今夜は楽しんでください」と告げて、「Paradisus-Paradoxum」へ。スピード感の中で絡みつくようなボーカル。2番では青いシャワーのような光が注ぎ、Tom-H@ckは足を開いた低い姿勢でストローク。



ラスサビからのたたみ込みをキメると、拍手の中、そのまま混沌とした「theater D」に雪崩込んだ。民族楽器ふうのシンセ音が耳につき、KIHOWが「オーッ!」と右手を上げて煽ると、フロアが「オイ! オイ!」と呼応していく。緑の照明がレーザーのように飛び交うのが、伸びやかな歌声とシンクロしていた。前に出て台に乗ったTom-H@ckの速弾きでさらにアゲて、鼓動が速くなるのを感じた。



「私がMYTH & ROIDに入った頃、自分の心を支えてくれた大切な曲です」



そう言って歌ったのは、8年前の加入後にリリースした1stアルバム収録の「Tough & Alone」だった。「Don’t look back. Keep moving forward」と歌始まりからスタッカートを利かせ、孤独を振り切って突き進む姿を描いたナンバー。そこにフロアの天井でミラーボールが回り、光が差し込むようだった。



MYTH & ROID、オーイシマサヨシを迎えたツアーファイナルZepp Shinjuku公演「Zeppに立ってひとつの節目。大成功です!」

MCに入ると、KIHOWが「初めてのZepp。当日券でソールドアウトしました!」と報告し、大きな拍手が起こった。「みんなありがとう」と両手でハートマークを作る。Tom-H@ckも「アーティストとして単独でZeppに立つのは初めて。ここから見える景色、最高です!」と感激の面持ちに。



そして、『Loved all long』という今回のツアータイトルについて、KIHOWが語る。



「簡単に言うと“ずっと愛されてきた”という意味があります。アーティストが10周年を迎えるには、今日みたいにみんなが一人ひとり集まってくれないと難しい。めでたい10周年はみんなが支えてくれたから、ライブで感謝を返したくて」



さらに「そんな気持ちも乗せながら、次の曲を歌います」と告げる。「巡り巡る時の向こうで何度でも出会おう」と流麗に歌い出したのは「追想輪廻」。ピアノの旋律に彩られたミディアムチューンだ。



MYTH & ROID、オーイシマサヨシを迎えたツアーファイナルZepp Shinjuku公演「Zeppに立ってひとつの節目。大成功です!」

スタンドマイクを両手で掴みながら歌うKIHOW。

1曲の中で声のトーンを変えて、やさしさ、凛々しさ、瑞々しさを織り交ぜる。輪廻の中での時空を超えた絆を描き出して浸らせた。



ピアノのフレーズから結んだ定番曲の「STYX HELIX」も、いつもより優雅なタッチに感じられ、浄化されていくような心地良さがあった。



「最前から後ろのほうまで、皆さんの顔がよく見える会場なんです。1曲目からすごく良い表情でライブに参加してくれて、声も出してくれたり一緒に動いてくれたり。おかげで楽しく歌えています」



そう語り掛けた次のMCでは、ツアータイトルに「もうひとつ、すごく大切な意味があります」とも。それは「ずっと愛していた」。KIHOWのリアルな経験から浮かんだ言葉だという。



MYTH & ROID、オーイシマサヨシを迎えたツアーファイナルZepp Shinjuku公演「Zeppに立ってひとつの節目。大成功です!」

学生時代からずっと仲の良かった友達が出産。子供とふたりの写真を見たときに受けた衝撃。長い時を共に過ごし、楽しいこともしんどいことも一緒に経験して、いろいろな顔を見てきた友達が、別人に見えるほど幸せそうで……。



「どうしてそこまで変わって見えるんだろうと考えていて、愛している人に出会う日をずっと待っていたんじゃないかと思いました。

それが、ここ数年のツアーでMyrror(ファン)と歩いてきたことと、リンクする部分があって。みんなが私たちと出会ったのは2年前かもしれないし、前のツアーかもしれないし、今日かもしれない。だけど、私たちはMyrrorのことをずっと愛していました」



MYTH & ROID、オーイシマサヨシを迎えたツアーファイナルZepp Shinjuku公演「Zeppに立ってひとつの節目。大成功です!」

「せわしない日々の中で、愛が心に染み入る時間を取るのは難しいと思います。今日はみんなとそんな時間を一緒に過ごしてもらいたくて、この曲を歌うことを決めました」



アカペラでマイクを通さず、「I Stay Alive 今は一人 闇をさまようだけ」と歌い出す。秋ツアーでも披露した『Re:ゼロから始める異世界生活』1期のEDテーマ「Stay Alive」のカバーだが、サビ頭にして生の歌声を響き渡らせた。



演奏が入ると、ボーカルもマイクに乗せる。孤独の中での祈りのようなバラードを、情感を込めながら歌い上げて、胸を震わせた。



MYTH & ROID、オーイシマサヨシを迎えたツアーファイナルZepp Shinjuku公演「Zeppに立ってひとつの節目。大成功です!」

さらに「Endless Embrace」に「HYDRA」と、寂寥感の漂うバラードを続けて引き込む。ゆらめくような異世界ムードの中、Tom-H@ckのギターが激しく絶叫した。



気づけばライブは終盤。Tom-H@ckが「前半は静かな曲。後半はナメないほうがいいぞ。

マジで俺が死ぬ(笑)。でも、ついてきてほしい」と話すと、シンセのフレーズが流れ出した。KIHOWが「この曲歌いたい。初めてライブで歌うんです。やりますか?」と受けて、演奏の始まりと共にゲストのオーイシマサヨシを呼び込んだ。



大歓声とお約束の「帰れ!」コールを浴びながら、「Clattanoia」を歌う。オーイシとTom-H@ckのユニットOxTが、10年前にリリースした『オーバーロード』のOPテーマ。MYTH & ROIDではバラードアレンジでカバーしているが、この日はアッパーなオリジナルで披露した。



センターにオーイシ、下手にKIHOW、上手にTom-H@ckとそれぞれ台の上に立つ。ボーカルは交互の掛け合いから、サビはふたりで「エイ、エイ、エイ」と声を合わせる。観客も「オイ! オイ!」と拳を振って、歓喜爆発の盛り上がりとなった。



「アニソン界のおしゃべりクソメガネこと、オーイシマサヨシです」と挨拶。

リハーサルでは「1トーン落とさないとMYTH & ROIDのライブに着地できない」と話していたそうだが、すっかり通常のおしゃべりモードになっていた。



MYTH & ROID、オーイシマサヨシを迎えたツアーファイナルZepp Shinjuku公演「Zeppに立ってひとつの節目。大成功です!」

OxTも今年で10周年。オーイシはKIHOWを「姉妹ユニットの親戚の子」と思っていると語り、MYTH & ROIDのライブについて「ファンの方とコミュニケーションがめっちゃ取れてる。オタクの練度、密度が高い」と評した。



この2組でOP&EDテーマを担った『オーバーロード』も放送10周年。4月には記念のデジタルアルバムがリリースされ、初のコラボ曲「GREATEST GLORIA」も収録されている。今回のツアーではKIHOWがソロで歌ってきたが、「オーイシさんをここに呼んで歌わないとおかしい」と、ツインボーカルの完成形で初披露された。



MYTH & ROID、オーイシマサヨシを迎えたツアーファイナルZepp Shinjuku公演「Zeppに立ってひとつの節目。大成功です!」

パワフルなハードロックでギターがうねり、オーイシがセンターで歌い出すと、KIHOWが煽る。立ち位置を変えてKIHOWが歌ったり、互いに向かって腕を差し出しながら声を合わせたり。そこにTom-H@ckの速弾きも重なる。



『オーバーロード』の主人公・アインズの勝ちどきと栄光を歌ったナンバーに、パンチ力が炸裂。会場をいっそうヒートアップさせた。



MYTH & ROID、オーイシマサヨシを迎えたツアーファイナルZepp Shinjuku公演「Zeppに立ってひとつの節目。大成功です!」

オーイシが拍手を浴びながらハケると、ドラムソロから勢いを落とさずに「VORACITY」、シャッフルビートで攻める「Crazy Scary Holy Fantasy」、ジャンプしながらの「L.L.L.」と『オーバーロード』の楽曲を続けていく。疾走感、激しさ、熱さ。意識が飛ぶほどシビれる。



「今夜、私たちの初めてのZeppに来てくれてありがとう! 最後まで盛り上げていけたら」と叫ぶKIHOW。センターの台に片脚を乗せてプレイするTom-H@ckと向き合って歌ったりもしながら、最後に怒涛のシャウトで嵐が通り過ぎていくようだった。



インスト曲を挟み、一度ハケたKIHOWがステージに戻る。「みんなの声を聞かせてください」と、恒例の「We’re shouting」「Oh Yeah、Oh Yeah、Oh Yeah」のコール&レスポンスから「TIT FOR TAT」へ。



耳に手を当てて会場の合唱を煽るKIHOWは、オーディエンスたちの歌声に曲中では珍しく笑顔を浮かべた。何度も繰り返されるコール&レスポンスに熱気が爆上がりしていた。



呪文のように「AH RA LA OH LA」と歌い出す「JINGO JUNGLE」では、ステージ上のKIHOWやバンドメンバーも観客たちも一斉にジャンプ。拳を振りかざしながら「oh-oh-oh」のコールが続いた。体を揺らし衣装を翻して歌うKIHOW、ギターを激しく振りながら奏でるTom-H@ck。フロアから天井まで高いZepp Shinjukuで、観客のボルテージはどこまでも高まっていくようだった。



MYTH & ROID、オーイシマサヨシを迎えたツアーファイナルZepp Shinjuku公演「Zeppに立ってひとつの節目。大成功です!」

「今夜最後の曲を聴いてください」と歌われたのは「NOX LUX」。『Re:ゼロ』3期のEDテーマとして昨年10月にリリースされ、ライブで早くも人気となったエモーショナルな1曲。光と闇が折り重なる起伏をKIHOWは歯切れ良く歌い、途中でマイクを抜いたスタンドを後ろに放り投げた。前かがみでさらに力を込めて、Tom-H@ckもギターのネックを立てて渾身のプレイを見せる。KIHOWはほぼノーブレスのたたみ込みで圧巻のスパート。最後は半身で右手を掲げたまま、しばらく静止してキメた。



拍手に包まれたステージで、Tom-H@ckは「マジで過去最大に死んだ(笑)。出し尽くした。Zeppに立ってひとつの節目。大成功です!」と高揚気味に語る。



KIHOWは「私はもともと歌手を夢だと思ったことがなくて、自分の思う方向に進めばいいと思っていたけれど、今振り返れば自分はただ運が良かっただけ。Myrrorのみんなとなら、Zeppの先の景色も夢見たいと思っています」と話し、ふたりで深々と頭を下げた。



MYTH & ROID、オーイシマサヨシを迎えたツアーファイナルZepp Shinjuku公演「Zeppに立ってひとつの節目。大成功です!」

ライブ中のMCでは、いくつかのお知らせもあった。8月のポーランドから来年に掛け、海外公演が続くこと。タイアップ曲の話がたくさんあること。Tom-H@ckは「締切を1カ月以上延ばしてもらっている」と苦笑いしながら、「アニソン業界に一石投じたい。こんな曲作れないだろうと」と意欲を見せていた。OxTとのツーマンライブもこの冬に開催される。



MYTH & ROIDの結成からの10年は、大いなる助走に過ぎなかったのかもしれない。この先には、まだまだ果てしない未来が広がっているのだろう。



MYTH & ROID、オーイシマサヨシを迎えたツアーファイナルZepp Shinjuku公演「Zeppに立ってひとつの節目。大成功です!」

<公演情報>
『MYTH & ROID One Man Live 2025 Summer Tour“Loved all long”』



2025年7月27日 東京・Zepp Shinjyuku



セットリスト

1. Cracked Black
2. Paradisus-Paradoxum
3. theater D
4. STRAIGHT BET
5. Tough & Alone
6. RAISON DʼETRE
7. ACHE in PULSE
8. 追想輪廻
9. STYX HELIX
10. Stay Alive
11. Endless Embrace
12. HYDRA
13. Clattanoia
14. GREATEST GLORIA
15. VORACITY
16. Crazy Scary Holy Fantasy
17. L.L.L
18. 〈インスト〉
19. TIT FOR TAT
20. JINGO JUNGLE
21. NOX LUX



公式サイト:
https://mythandroid.com/



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