松尾スズキ渾身の“真正面ミュージカル”が誕生 咲妃みゆ主演『クワイエットルームにようこそ The Musical』開幕
『クワイエットルームにようこそ The Musical』ゲネプロより、咲妃みゆ (撮影:岩村美佳)

2005年に発表された松尾スズキの小説『クワイエットルームにようこそ』を、松尾自らミュージカル化。『クワイエットルームにようこそ The Musical』として、1月12日(祝・月)、東京・THEATER MILANO-Zaで幕を開けた。

そこで前日に行われた、囲み取材と公開ゲネプロの模様をレポートする。



松尾スズキ渾身の“真正面ミュージカル”が誕生 咲妃みゆ主演『クワイエットルームにようこそ The Musical』開幕

28歳でフリーライターの佐倉明日香は、ある日、見知らぬ白い部屋で目を覚ます。そこは“クワイエットルーム”と呼ばれる、女子専用精神科病院の閉鎖病棟。仕事やプライベートのストレスから大量の睡眠薬を酒で流し込んだ明日香は、自殺未遂と判断され、ここに搬送されてしまったのだ。さまざまな事情を抱えた患者たちに囲まれながら、退院を目指すことになった明日香は……。



松尾スズキ渾身の“真正面ミュージカル”が誕生 咲妃みゆ主演『クワイエットルームにようこそ The Musical』開幕

松尾の代表作のひとつであり、小説、映画と多くのファンから高い評価を得てきた本作。しかしその舞台設定ゆえ、一観客としてミュージカル化に多少の不安があったことは否めない。が、その心配は開幕直後に吹き飛ぶことになる。最大の要因は、宮川彬良が手がける楽曲の魅力。松尾が「宮川さんの曲は台詞を歌に取り込んだ、物語を物語る歌になっている」と評するように、思わず口ずさみたくなるような耳馴染みのよさはあるものの、楽曲としてただそこに存在するわけではない。松尾にしか書けない台詞、歌詞のすべてを包み込み、その上で観客のもとへと届ける媒介の役割をしっかりと担う。物語と楽曲が常に手を繋いでいるような感覚だ。



松尾スズキ渾身の“真正面ミュージカル”が誕生 咲妃みゆ主演『クワイエットルームにようこそ The Musical』開幕

そしてミュージカルに欠かせないもうひとつの要素が、ショーアップされたステージ。「CHAiroiPLIN」のスズキ拓朗が振付を手がけ、大人数で魅せる迫力のダンスシーンから、クスっとさせるような可愛らしいひとコマまで、どのシーンも決して観客を飽きさせることがない。秋山菜津子が語っていた、「本当に松尾さんってミュージカルが好きなんだなと今回改めて思いました」という言葉にも強く納得。それほどミュージカルというものの楽しさが、この作品には随所に散りばめられている。



松尾スズキ渾身の“真正面ミュージカル”が誕生 咲妃みゆ主演『クワイエットルームにようこそ The Musical』開幕

松尾スズキ渾身の“真正面ミュージカル”が誕生 咲妃みゆ主演『クワイエットルームにようこそ The Musical』開幕

そして松尾のミュージカル化への熱い思いは、キャスティングにもよく表れている。主人公の明日香を演じる咲妃みゆは、松尾とは相思相愛。特に咲妃は松尾作品への参加を熱望していたこともあり、「松尾さんの台詞を発するだけで、自分の気持ちが日々変動していくのを感じます。あぁ、今自分は生きることを楽しんでいるんだなってことを、心から思わせていただけるというか。本当に毎日毎日、松尾さんへの尊敬が増す一方です!」と本作にかける並々ならぬ意気込みを明かした。



松尾スズキ渾身の“真正面ミュージカル”が誕生 咲妃みゆ主演『クワイエットルームにようこそ The Musical』開幕

咲妃以外にも、明日香の恋人・焼畑鉄雄役の松下優也、患者のミキ役の昆夏美、ナース山岸役の桜井玲香と、これからのミュージカル界を担うスターがずらり。抜群の歌唱力を披露しつつ、全員がしっかりと観客の笑いを引き出すなど、これまでにない一面を開花させている。



松尾スズキ渾身の“真正面ミュージカル”が誕生 咲妃みゆ主演『クワイエットルームにようこそ The Musical』開幕

松尾スズキ渾身の“真正面ミュージカル”が誕生 咲妃みゆ主演『クワイエットルームにようこそ The Musical』開幕

映画版に引き続きナース江口を演じるりょうは、本作が初のミュージカル。

独特のダンスと歌声で強い印象を残す。さらに患者の西野役の秋山、同じく患者の久米ジュンコ役の皆川猿時は、松尾作品常連ならではのお笑いモンスターぶりをいかんなく発揮。松尾ファンならずとも、この掛け合いはたまらないものを感じるはずだ。



松尾スズキ渾身の“真正面ミュージカル”が誕生 咲妃みゆ主演『クワイエットルームにようこそ The Musical』開幕

松尾スズキ渾身の“真正面ミュージカル”が誕生 咲妃みゆ主演『クワイエットルームにようこそ The Musical』開幕

全体を通して非常に明るく、楽しい作品ではあるが、ここが精神科病院だということをフッと思い出させる瞬間が度々おとずれる。それは台詞の片隅であったり、ふいに見せる切ない表情であったり。だからこそ観劇後の高揚感の中に、少しチクリとした棘が残る。それこそやはり、松尾作品ならではの痛みという名の味わいなのだろう。



その上で、幅広い客層が楽しめるミュージカルへと昇華させている松尾の手腕は、さすがのひと言。松尾も自信があるのだろう。こんな力強い言葉を最後に聞かせてくれた。「今までミュージカルと冠するお芝居をいろいろやってきましたが、わりと斜めに入ることが多く、ミュージカルファンの人たちには観に来ないで欲しいとずっと思っていました(笑)。でも今回は真っすぐ言います。

ミュージカルファン、待っています」。



松尾スズキ渾身の“真正面ミュージカル”が誕生 咲妃みゆ主演『クワイエットルームにようこそ The Musical』開幕

松尾スズキ渾身の“真正面ミュージカル”が誕生 咲妃みゆ主演『クワイエットルームにようこそ The Musical』開幕

『クワイエットルームにようこそ The Musical』会見より、前列左から)松尾スズキ、昆夏美、咲妃みゆ、松下優也、秋山菜津子 後列左から)桜井玲香、皆川猿時、りょう


取材・文:野上瑠美子 撮影:岩村美佳




<公演情報>
COCOON PRODUCTION 2026
『クワイエットルームにようこそ The Musical』



作・演出:松尾スズキ
音楽:宮川彬良
振付:スズキ拓朗

出演:
咲妃みゆ、松下優也、昆 夏美、皆川猿時、桜井玲香、
池津祥子、宍戸美和公、近藤公園、笠松はる、
りょう、秋山菜津子

香月彩里、田川景一、エリザベス・マリー、中根百合香、
永石千尋、原梓、藍 実成、感音、古賀雄大、
羽衣*、芹犬*、等々力静香*、中野亜美*、吉田ヤギ*(*コクーン アクターズ スタジオ第1期生)

<ミュージシャン>吉田 能、熊谷太輔、中條日菜子、福岡丈明、藤野“デジ”俊雄、山下綾香

【東京公演】
2026年1月12日(月・祝)~2月1日(日)
会場:THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)

【京都公演】
2026年2月7日(土)~11日(水・祝)
会場:ロームシアター京都 メインホール

【岡山公演】
2026年2月22日(日)・23日(月・祝)
会場:岡山芸術創造劇場 ハレノワ 大劇場



関連リンク

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/quietroom2026-milanoza/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2562567&afid=P66)



公式サイト:
https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/quietroom2026.html

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