『綾錦―近代西陣が認めた染織の美―』根津美術館で 知られざる根津嘉一郎の染織コレクションが一堂に
《縫箔 白地青海波に扇面散模様》 日本・江戸時代 17~18世紀 根津美術館蔵

青山の根津美術館では、12月20日(土)より『綾錦―近代西陣が認めた染織の美―』が開催される。同館の知られざる染織コレクションを紹介する展覧会だ。



京都市上京区にある京都市考古資料館は、かつて西陣織物館と言い、新しい西陣織物の展示即売会のほか、大正4年(1915)から10年にわたって、国内外に伝来した「織物に関係ある名品秘宝」の展覧会を行っており、出品作の中でも優れたものは、版画とコロタイプで意匠を再現され、豪華な染織図案集『綾錦』に収録された。



『綾錦―近代西陣が認めた染織の美―』根津美術館で 知られざる根津嘉一郎の染織コレクションが一堂に

『綾錦』第6巻 西陣織物館編 日本・大正8年(1919)根津美術館蔵

実はこの図案集に、出品者として頻繁に名前が出てくるのが、根津美術館の基礎を築いた初代根津嘉一郎(1860-1940)だ。根津美術館といえば《燕子花図屏風》などの江戸絵画や茶道具のコレクションが知られるが、『綾錦』が制作された大正期、嘉一郎は染織品のコレクターとしても著名だったのだ。同展では、『綾錦』に掲載された嘉一郎の所蔵品のうち、現在確認できる20点が展示される。



『綾錦―近代西陣が認めた染織の美―』根津美術館で 知られざる根津嘉一郎の染織コレクションが一堂に

《縫箔 紅浅葱段枝垂桜尾長鳥模様》日本・江戸時代 18世紀 根津美術館

たとえば植物模様をデザインした色とりどりの扇面を、青海波模様の上に散らした《縫箔 白地青海波に扇面散模様》は、『綾錦』第6巻で5ページにわたって特集された注目作。また古更紗の意匠を収めた『綾錦』第8巻には、貴重な古更紗の断片を貼り付けてまとめた折帖《古更紗帖》なども掲載された。



『綾錦―近代西陣が認めた染織の美―』根津美術館で 知られざる根津嘉一郎の染織コレクションが一堂に

《古更紗帖》 インド他 17~18世紀 根津美術館蔵

そのほか同展では、国立歴史民俗博物館より、色違いで2領一式の豪華な婚礼衣装なども紹介する。こちらは『綾錦』第2巻に掲載された、当時の有名な染色コレクター・野村正治郎旧蔵の作品だ。



西陣でも認められた知られざる根津嘉一郎の染織コレクションをじっくりと堪能したい。



なお、展示室5では、日本人がこよなく愛した中国・民窯の吉祥文様が描かれた磁器を紹介する「呉州手(ごすで)―吉祥の器―」、展示室6では、新年を迎えて、おめでたい道具やその年の干支にちなんだ道具を取り合わせた「初釜―新春を寿ぐ―」が同時開催される。



<開催情報>
『綾錦―近代西陣が認めた染織の美―』



会期:2025年12月20日(土)~2026年2月1日(日)
会場:根津美術館
時間:10:00~17:00(※最終入館は~16:30まで)
休館日:月曜、12月27日~2026年1月5日、1月13日 ※ただし1月12日(月・祝)は開館
料金:一般1,300円、学生1,000円 ※オンライン日時指定予約
公式サイト:
https://www.nezu-muse.or.jp/

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