Text:石角友香 Photo:シンマチダ
2017年に突然の解散を発表。ソングライターでギター&ボーカルの長江慧一郎は二度と歌うことはないと、uremaでの表現をその時点で達成したことを表明していた。
── Oaikoさんのノートにあったインタビューで拝見したんですけど、再結成の話を持ちかけたのは長江さんだったという。
長江 はい。
── 長江さんは解散後、かっちり仕事をされていたそうで、健康的な生活も獲得されたと話されていて、そんな中、uremaの存在が再び必要になった経緯を伺いたいです。
長江 「めっちゃ健康です!」と言い切れるほどではないんですけど(笑)。バンドをやってた頃は音楽しか頭の中になくて。で、解散後は逆に音楽がまったく頭の中にない状態というか、社会生活に全然慣れなくて、休日は酒飲んでくたばってるだけみたいな時期が長くて、その間音楽をまったく聴いていなかったんです。それが5年前に犬を飼って、犬と出かけるのに車がいるなというので車を買って、そこでようやく移動中に音楽を聴きだしたことから再燃したというか、「やっぱりこれをやりたいんだ」というふうに思って。最初はひとりで曲を作ってたんですけど、インストの曲を作ってもやっぱり歌を入れたくなってきて。
長江慧一郎(g/vo)
── 再燃のきっかけになった音楽が何なのか興味深いです。
長江 10代の頃からサニー・デイ・リアル・エステイトっていうバンドが好きで。最近ファーストアルバムの再録アルバムが出たんですが、それが自分の中では大きくて。エモゴッドと呼ばれているようなバンドなんですけど、ファーストアルバムは10代のむき出しの心のようなアルバムで、それを今50歳ぐらいになってから録り直していて、それがめっちゃ良くて。
── ファーストアルバムを聴くのとは意味が違いますよね。
長江 そうですね。もちろんどっちも好きなんですけど、進化しているし、新曲が一曲だけ追加されていてその曲にもいたく感動したし、アルバムの中で一番暗い曲をMVにしていて。そういうことに勇気づけられて、「できるんだな」「すごいな、やらないとな」と影響を受けて、「またuremaをやりたい」という話をしました。
── 長江さんが音楽をするときっていうのはuremaしかないんですね。
長江 そうですね。
── 髙橋さんと芦原さんは長江さんからの再結成の打診に対してどんな感触を持ったんですか?
髙橋 解散前はいろいろ挑戦した結果、「ここまでか」という感じで終わったんですけど、8年経って今の自分だったらもっとできることが増えていたり、そういうワクワクの方が気づけば大きくなっていたというところで「全然やりたいです」っていう話をしましたね。
── 髙橋さんは今えんどあ。も並行していて、最近まではmol-74もやっていらっしゃいました。そうした経験はどうuremaで活かされていると思いますか。
髙橋 新曲を作ったり、ライブに向けてリハーサルに入っているんですけど、活かされるかどうかはちょっと分からないですね。結構別物な感じがしていて。mol-74の中ではリードギターがいる分、高域のフレーズは遠慮していたり、自分の中で制御してた部分があったりして、そういうものの部分をuremaでは表現できるとは思います。
髙橋涼馬(b/cho)
── uremaは若いときに結成したバンドだと思うので、初期衝動があったと思うんですが、髙橋さんにとってはどういう存在ですか?
髙橋 全国流通盤であったり、レーベルに初めてお世話になったり、いわゆるバンド活動における初めての経験をたくさんしたのがuremaで。学生時代にオリジナルバンドを組んだことはあったんですけど、よりちゃんとした活動はuremaが初めてで、初期衝動に近い部分があると思いますね。あとはスリーピースの中でベースがどういう立ち振る舞いをしたら面白いのかを考えて活動していた部分はあるので、その気持ちや表現が独自なものになっているというのはありますね。
── 芦原さんはどうでしたか?
芦原 自分はそんなに考えもなく別にやるんやったらやるっていう感じで。
── uremaだからこそやりたい?
芦原 そうです。いろいろバンドはやってきたんですが正式に加入しているバンドっていうのがあんまりなくて。やっぱりやりたいメンバーは結構決まっているのかなと思うんです。そういう意味でuremaをやっていると自分が成長できる部分もあって、また成長できる機会を作ってくれたかなと思います。
── 新曲にはこの歳月の分だけ、奥行を増したように感じたんですが、曲作りという部分で変化はありますか?
長江 歌詞のテーマは明確に変わりました。これまでにはなかった生活や人生に寄り添うものになっているかなと感じています。サウンドメイクに関しては、髙橋君もアッシーさんもそれぞれ別のバンドをやっていて、昔みたいに頻繁にスタジオに入れるわけじゃないので、作り方の部分も変わってきていて。今はメンバーが演奏したテイクを1回DTMで再現した上で複数パターンを作ってどれがいいか話し合って、それをもとに一度ブラッシュアップしてから改めて各々にフレーズを考えてきてもらうような作り方に変わっていて、今の生活に合った、ある種密度の高い作り方に変わっているのかなと感じています。
── 制作方法を変えた話は納得です。立体感やダイナミズムが全然違ったので。
長江 結果的に今の3人の個性がぶつかり合ったような仕上がりになりました。
左から 長江慧一郎(g/vo)、髙橋涼馬(b/cho)、芦原崇大(ds)
── 歌詞については、例えば「枯れた脳」を書くときにきっかけになったのはどういうことでしたか?
長江 「枯れた脳」に関しては解散前に自分で作ったデモがあって、ただ当時はアレンジが難航して、その頃の3人では完成にたどり着けずに終わってしまった曲なんです。それが8年経って再結成して、制作に時間はかかったんですけどこれしかないなっていう正解が見えた手応えがあります。技術的なことはもちろん、今の3人の距離感だったり音楽への向き合い方が変わったり、経験を積んだからこそ、今まで取り入れてなかったインダストリアルな要素や、ジューク/フットワーク的な要素も無理なく自分たちの音楽の中で自然に鳴らせたのかなと思っています。もう1曲の「暈けた脳」は完全新曲です。この曲は再開を決めて初めて入ったスタジオで、特に何も用意せずに3人でジャーンと音を鳴らしたらサビの原型ができて、そのときにドラムの芦原が「初期衝動やな」ということをぼそっと言っていたのがすごく感慨深かったんですが、アッシーさん覚えてますか?
芦原 覚えてないです。
長江 やっぱそうか(笑)。最終的なギターのフレーズやコード感に関してはuremaの過去曲や、僕が10代の頃にやっていたrrashirramonigっていうバンドの曲を再解釈して、さっき言ったサニー・デイ・リアル・エステイトもそうなんですけど、これまでの人生で自分が好きだった音楽というテーマで形にしました。
──「暈けた脳」は完全新曲ということですが、生きていくうえでの不安などは変わらない気がしたんです、ただその中でも具体性を帯びてきたように思いました。
長江 そうですね。過去の自分だったら絶対に選ばなかった言葉が顕著に入っていて。そこに関しては本当にこれでいいのかという葛藤もありました。
── 以前の儚い感じから、今は歌詞の強度が増している気はしました。
長江 解散前は「夢と死」っていうバンドのテーマ以外のものは作っちゃだめみたいな縛りが自分の中にあって。今回はもうその縛りを解除して、自分の生活をテーマにして作ったので、そういった意味ではかなり心境の変化がありました。
── 2曲とも“脳”を修飾しているタイトルなのでテーマ性があるのかなと思ったのですが。
長江 テーマ性は特にないんですが、どっちも機能性疾患みたいなものをテーマにしています。タイトルに関しては8年前に「枯れた脳」が先にあって、解散してからずっと手付かずで放置されていたこの子に歳の離れた兄弟を作ってあげたいみたいな気持ちがあったのかなと思いました。
── では髙橋さんと芦原さんにそれぞれの楽曲のバンドアレンジの聴きどころをお聞きしてもいいですか?
髙橋 自分のベースに関して言うと、スリーピースが難しいのはリードギターがいなかったりするので、ギター&ボーカルでどこまでリードギター的なものも兼ねるかという制限があると思うんですけど、そこの範囲に結構ベースが立ち入っている部分が珍しいバンドだなと思っていて。ベーシストでアルペジオを頻繁にやっている人もほとんど知らないですし。
── それはライブでも駆使するんですか?
髙橋 ライブでももちろんやります。
── 芦原さんはいかがですか?
芦原 そうですね。「暈けた脳」はドラムのフィルインが続く曲なので毎回同じのが続かないように考えたり、でも後半になると大きめのフレーズで叩いたりそういう差があって、いろんなパターンのドラムが入っていて面白いんじゃないかなと。「枯れた脳」は人力ではあまり見ない打ち込みっぽいフレーズが続く曲なので、それがライブでどう鳴るのか、自分たちでも楽しみにしています。自分のプレイ以外では歌がうまくなったなというのがあって、昔の曲もサブスクで解禁したので、昔の曲と声の違いを楽しんでほしいですね。
芦原崇大(ds)
── そしてuremaのイメージに一貫性を持たせているアートワークは今回も山代エンナさんが描かれています。
長江 uremaの結成当初からエンナちゃんのアートワークはそばにあって、作品を形にする時点でもうエンナちゃんのことしか頭になかったです。
──「Oaiko」からのリリースについても聞かせてください。今の時代、自分たちでリリースしていく方法もある中でOaikoさんとタッグを組んだ理由はなんでしょう。
長江 Oaikoさんに関してはこれからuremaをやっていくぞというときにベースの髙橋君から紹介してもらって、親身に伴走してくれているので、本当に所属できてよかったなと思っています。今後の展望として、ワンマンツアー後は自主企画をやって、これまでのファンはもちろんこれから新しく知ってくれる人にもしっかりとアプローチしていけたらなと思っています。
── ツアータイトルは『遠くにおいてきた光』というもので、以前の作品との対比を感じました。ここには何か意味が?
長江 これは「枯れた脳」の歌詞から引用しました。解散前に『光の棺』というアルバムをリリースしたんですが、すごく大切な作品で。人生観が変わるような出来事があって。その作品を作った頃の心境を今見つめ直したときにこの「遠くにおいてきた光」という言葉が出てきました。あのとき見えていた「光」が時間が経ってどんなふうに変わっていったのか、単なる回顧ではなく、現実と折り合いをつけて生きていくという切実な祈りを込めて歌詞を書きました。いろんな捉え方ができる言葉だと思うので今回のツアータイトルに命名しました。
── ではツアーに向けて待っていた方々に対してメッセージも含めて意気込みを伺えれば。
長江 本当にもう感謝しかないです。待っていてくれている人がいなかったらこうしてuremaを再開することはできなかったと思うので、本当にありがとうございます。楽しんでもらえるよう精一杯やります。
芦原 いろんな方が見てくれる機会がちゃんと出来たのが良かったです。なので精一杯いいものを見せられるように頑張ります。
髙橋 8年前に東京でワンマンをしたことがあるんですけど、今回はワンマンツアーということで、解散前よりも大きな規模で、再開しているような形になっていて。よりたくさんの人に見てもらえるようなツアーを組んだという部分に、決意のようなものを感じていただけたらと思います。8年間の中で幻想がどんどん膨らんでいるような気もするので、そこは怖かったりもしますが、それを更新できるような演奏をしたり、新曲のリリースもしますので、ぜひいろいろな変化を楽しんでください。
<リリース情報>
「暈けた脳」
1月28日(水) 配信リリース
配信サイト: https://friendship.lnk.to/brainfog_urema
「枯れた脳」
3月4日(水) 配信リリース
自主制作盤 ミニ・アルバム『死の家の記録』
1st ミニ・アルバム『carpe somnium』
2nd ミニ・アルバム『光の棺』
配信中
配信サイト: https://bio.to/urema
<ツアー情報>
『urema tour 2026 "遠くにおいてきた光”』
2月1日(日) 東京・新代田FEVER
開場 18:00 / 開演 19:00
2月21日(土) 愛知・名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL
開場 18:00 / 開演 19:00
3月1日(日) 大阪・Live House Pangea
開場 18:00 / 開演 19:00
<ライブ情報>
urema自主企画『自動描写Ⅰ』
5月2日(土) 大阪・南堀江SOCORE FACTORY
開場 18:00 / 開演 18:30
出演:urema、ピアノガール
【チケット情報】
前売一般:4,000円(税込/ドリンク代別)
当日一般:4,500円(税込/ドリンク代別)
▼オフィシャル先行:2月23日(月・祝) 23:59まで
https://w.pia.jp/t/urema-zb1/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2604451&afid=P66)
urema オフィシャルサイト
https://urema.fc2.page/

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