
日本を代表するヴァイオリニスト、加藤知子による久々のリサイタルが目前だ。圧倒的な実力を誇る加藤が、コロナ禍によって縮小していた演奏活動に再び力を入れ始めることはまさに朗報。
なんといってもその経歴が物凄い。1982年に開催された第7回チャイコフスキー国際コンクール、ヴァイオリン部門第2位の実力は伊達ではない。その折の第1位がビクトリア・ムローヴァであったことからも、当時のコンクールのレベルの高さが伺える。ちなみにピアノ部門においては小山実稚恵が第3位に入賞し、チェロ部門の優勝者がアントニオ・メネセスであることからも、極めて実り多い大会であったことが想像できる。
その加藤知子が、わずか70席ほどの親密な空間が人気の霞町音楽堂に登場するとなればこれは聴き逃がせない。演奏者の吐息が感じられ、ピアニストとのアイキャッチなども間近に見られる空間こそは、ショパンやリストが活躍した当時のパリのサロンにも通じる雰囲気だ。まさにコンサートの原点がここにある。
プログラムには、ヘンデル(1685-1759)&ドヴォルザーク(1841-1904)のヴァイオリン・ソナタに、サラサーテ(1844-1908)の「ツィゴイネルワイゼン」などが用意され、世界を魅了した絶品のヴァイオリン演奏が楽しめる。深い絆で結ばれたピアニスト、広海滋子とともに紡ぎあげる圧倒的なパフォーマンスを楽しみたい。
加藤知子ヴァイオリンリサイタル in 霞町音楽堂
10月29日(水)
霞町音楽堂
加藤 知子 (ヴァイオリン)
第47回日本音楽コンクール・ヴァイオリン部門第1位、レウカディア賞受賞。翌年の海外派遣コンクールで特別賞受賞。